朝の雲
2023-11-25T10:41:57+09:00
asitanokumo
「横雲」のやまとうた
Excite Blog
「老いたる人のひそかなる恋心を詠める」(2023年題詠100のまとめ)
http://asitanokum.exblog.jp/29752595/
2023-11-25T10:41:00+09:00
2023-11-25T10:41:57+09:00
2023-11-25T10:41:57+09:00
asitanokumo
題詠まとめ
2023-参加表明(詠弛)
今年はこの企画をゆっくり詠んで楽しもうと、文語口語にとらわれず「詠弛」の名で週3首「火・木・土」の投稿をめざしたい。これは「燃えるものの回収日」でもある。よろしくお願いいたします。
月11首、10ヶ月で110首詠む計画。
《2023年》
2月
(寄り道コース)
2023-101:甲(詠弛)
ゆるゆると歌詠む春や鼈甲の小櫛に白き幾筋梳ける
2023-102:乙(詠弛)
花の宴長き黒髪誇りたる乙女も今は白く透くゆく
2023-103:丙(詠弛)
選別の丙種の味も捨てがたしへうへうとして生きたる証し
2023-104:丁(詠弛)
丁字路に別れし人の影消えて灯し寂しく街は暮れたり
2023-105:戊(詠弛)
あつさりと春は来にけりの句ありて文化甲戊の春偲ぶ
江戸時代の俳人・小林一茶の人生は、不幸の塊だったが、50歳の冬、「これがまあ終の栖か雪五尺」と詠む郷里柏原に帰った。文化11年甲戌(1814)52歳で初めて若い妻を迎えることになる、その歳旦の句が「あつさりと春は来にけり浅黄空」。
2023-106:己(詠弛)
花持てぬ己が身ひとつ歎きゐて逢へずに過ぐるひと日の長し
2023-107:庚(詠弛)
はるけくて眺むるばかり長庚の夕べの春の夢は朧に
2023-108:辛(詠弛)
あけぼのの木の芽起こしの雨に濡れ咲けるは辛き芥子菜の花
2023-109:壬(詠弛)
思い出が遠くになって京壬生菜浅漬け食めば梅まっ盛り
2023-110:癸(詠弛)
癸卯の賀状の返事おぼおぼし兎は猫か豚とも見えて
寄り道コース10首何とか詠みました。十干は他の使い方がないものがあり無理な形にならざるを得ないように思えました。
3月
さめやらぬこひのなごりをおしみつつ
《2023年》
2023-001:引(詠弛)
引き潮の七里ヶ浜の浅き瀬にふたり遊びし影の遥けし
2023-002:寝(詠弛)
春の夜の夢の浮橋行き損ね君の寝顔をそっと見つめる
2023-003:古(詠弛)
雛まつる古本市の稽古本薄いよごれに春の陽射して
2023-004:耳(詠弛)
空耳か君の声聞く春の空うつろひ嘆く老いの僻耳
2023-005:程度(詠弛)
魂極る老いの身なれば近頃は嫌という程度忘れひどい
2023-006:確(詠弛)
お互いに確め合ったことでさえ今ではすっかり忘れ去られた
2023-007:おにぎり(詠弛)
おにぎりをおむすびという人といた早春の野に陽が匂い立つ
2023-008:較(詠弛)
較べ合う老いの嘆きの極みとて互いの記憶にないランデヴー
2023-009:一時(詠弛)
どれにする? 料理の前の二者択一時には三者択一の贅
2023-010:愚(詠弛)
福茶飲み溢れる愚痴を聞き流す恙なく今生きて平穏
2023-011:イメージ(詠弛)
さりげなくイメージアップを図ろうと短歌を詠んで過ぎた年月
2023-012:娯(詠弛)
明日知れぬ命娯しむ老いの身に今舞ひあがる阿鼻機流の夢
4月
2023-013:講(詠弛)
春眠に誘われている講習所はるかに君の声が聞こえる
2023-014:ほんのり(詠弛)
ほんのりと桜吹雪の中にいた四月五日は記念日だった
2023-015:戸(詠弛)
古井戸の残る庭にも桜散るここでは泣いていいんですって
2023-016:険(詠弛)
仲隔つ天下の険のくれなづみ山辺にひそと片栗の花
2023-017:俳句(詠弛)
年毎に句会で作る俳句集凡句並ぶもそれなりの味
2023-018:就(詠弛)
老い就くや余命の延びてうららかの春のひとひに八十(やそぢ)祝へり
2023-019:賀(詠弛)
足裏の砂の冷たさ春の海浦廻 (うらみ)に寄せる志賀のさざ波
2023-020:みじめ(詠弛)
宴会のしめのラーメン辛みじめ涙で歌う旅立ちの歌
2023-021:雫(詠弛)
雨やみて香る若葉の雫落つ鳥になりたきおぼろ夕暮
2023-022:重(詠弛)
実らぬも黄の鮮ぐや思ひ出はしなやかに咲け八重の山吹
2023-023:毎日(詠弛)
逢いたくも約束のない日めくりを甲斐のないまま毎日めくる
5月
2023-024:禿(詠弛)
筆箱に禿び筆一本残りたり旧り行く身にも降る青葉雨
2023-025:混(詠弛)
春秋の思い拾えば悲喜混じる二人の歴史はや五十年
2023-026:子ども(詠弛)
菖蒲湯に浸かって過ごす子どもの日老いたる身にもやすらぎのあり
2023-027:著(詠弛)
樹の下に密かに咲ける著莪の花ひそかながらの思ひ重ぬる
2023-028:役所(詠弛)
汚れ役所謂主人を引き立てる名脇役として生きた君かな
2023-029:絶(詠弛)
苦しくも共に生きたきその道の思ひ絶たれし夏の思ひ出
2023-030:グラム(詠弛)
時々のインスタグラムに記される穏やかに経(ふ)る君の明け暮れ
2023-031:貿(詠弛)
世の変化陵谷遷貿(りょうこくせんぼう)激しかり一人静かに珈琲淹れる
2023-032:抜(詠弛)
骨抜きにされて腑抜けて腰が抜け鼻毛抜かれた間抜け面かな
2023-033:ひらひら(詠弛)
夏蝶がひらひら一羽二羽三羽今日の予定は決めかねている
2023-034:倣(詠弛)
彼の人に倣ひて詠めどわが思ひ通はぬままに雨ふりやまず
6月
2023-035:測(詠弛)
推し測る気持ちの丈は不確かでもつれもつれて鴨足草(ゆきのした)咲く
2023-036:削除(詠弛)
誕生日祝えないまま甘々の削除できない記憶が辛い
2023-037:荻(詠弛)
風立てる河原に萌ゆる荻若葉瞼閉づれば面影若し
2023-038:ゲーテ(詠弛)
真相は辿りきれずにゲーティングされて私の願いは消えた
2023-039:吊(詠弛)
思ひ出は逆吊りの花褪せし色してゆらゆらと風に吹かるる
2023-040:紺(詠弛)
朝顔に紺の滲める蕾在り紺の絞の浴衣なつかし
2023-041:覗(詠弛)
不確かな君の心を覗ふも闇深くして窺い知れず
2023-042:爽やか(詠弛)
高原の風爽やかに逝きたまふ人偲ばるや吹き渡りたる
2023-043:掻(詠弛)
湧き出づる思ひの丈を湯の花の如くに搔きて集めたりしも
2023-044:批(詠弛)
頬批(う)てる掌(て)の冷たさやしずまれる逢魔が時の花散る記憶
2023-045:筏(詠弛)
思い出は花筏の実哀しみを葉の上の乗せ色変えていく
7月
2023-046:憐れ(詠弛)
生類を憐れむの令の真の意図改め問へる弱者救済
2023-047:塀(詠弛)
塀沿ひに片陰拾ひ行く道の奥に現る庚申の塔
2023-048:伺(詠弛)
かの人は如何にと機嫌伺ふも七夕の絲虚しく揺れて
2023-049:水仙(詠弛)
清らかな音を聞かせて湧く清水仙石原の花園に流る
2023-050:範(詠弛)
若きとき模範となれる人たれと諭されし日はなほ懐かしき
2023-051:履(詠弛)
誤りの多い履歴を消したれど人生の垢虚しく残る
2023-052:全体(詠弛)
精神は至極健全体力は虚弱になれど明日を夢見る
2023-053:党(詠弛)
甘党という悪党を愛したり己は酒を手放せなくも
2023-054:いよいよ(詠弛)
雲白くいよいよ夏も盛りなり熟れしトマトをてのひらに盛る
2023-055:釘(詠弛)
秘密よと釘刺されたが酔い任せその後のことはあずかり知らず
2023-056:謙(詠弛)
わが友に謙虚に生きる人ありて恙なく過ぐ有難きかな
8月
2023-057:ライン(詠弛)
夏闌けて今朝はなほ濃きアイライン暑さにめげぬ心意気かな
2023-058:箇(詠弛)
風鈴の音も澄めるやいつくしく緑色濃き五箇山の夏
2023-059:診(詠弛)
取り澄まし脈とり終えた代診の女先生笑顔をこぼす
2023-060:醤油(詠弛)
醤油つけ香りよく焼く玉蜀黍キャンプ場には子らの歓声
2023-061:庇(詠弛)
夕立を避けて庇に駆け込めば店の奥にはお酒のコーナー
2023-062:魔(詠弛)
よしきりの啼き止み里は逢ふ魔時呼び合ふ声のひそけく響く
2023-063:こぶし(詠弛)
夏空に見上ぐこぶしはほんのりと実を色づかせ時を待ちけり
2023-064:閣(詠弛)
喧騒を逃れ登れる楼閣に涼風受けて街眺めゐる
2023-065:状(詠弛)
艶状をいくら書いても返事なく募る想いはただ秋の空
2023-066:二階(詠弛)
二階から下着のままに手を振れる若きひとゐし坂の花街
2023-067:乞(詠弛)
白露を硯に移し書きし歌乞巧奠の残り香ほのか
9月
2023-068:捕(詠弛)
火の山の麓の村に哀しきや透ける蜻蛉の翅を捕らふる
2023-069:トンネル(詠弛)
廃線のトンネル残る山の道夏の終わりの旅の哀しさ
2023-070:請(詠弛)
被災弛の色とりどりの仮普請空の高さは恨めしいほど
2023-071:感謝(詠弛)
忌憚なく感謝の言葉告げられず別れたままに時は去り行く
2023-072:惰(詠弛)
腰さすり惰夫めく歩む秋の夜の風のそよぎに死の話して
2023-073:からくり(詠弛)
からくりの止まるや夏の店仕舞ひ水の流れの響き虚しく
2023-074:腫(詠弛)
腫れ物にそっと触ってみるようにあなたの肩に手をやった夏
2023-075:案内(詠弛)
案内の指さす方は山深し親しき里をはるか見おろす
2023-076:灰(詠弛)
火の山の灰降る里の秋深む浸かる露天の湯に紅葉散る
2023-077:畳(詠弛)
秋冷の銀杏転がる石畳骨董市の準備終はれり
2023-078:スマート(詠弛)
遠つ人待つ秋の夜やはかなくもスマートフォンに届かぬ声音
10月
2023-079:僅(詠弛)
老いの身に僅かの望み恃みつつながらふ秋の実の付かずして
2023-080:載(詠弛)
千載に残す名なくもなが胸になほ残れるをたのむ夕暮
2023-081:手ごたえ(詠弛)
手ごたえの無きまま暮れる秋の空思ひの丈の色の深きも
2023-082:侮(詠弛)
去り際の侮蔑の言葉聞き流し涙隠せる秋遥かなり
2023-083:浄(詠弛)
触れ合はず浄き心を抱きつつ月より遥か遠きを嘆く
2023-084:授業(詠弛)
授業なき教室の闇引寄せて輝く明日を夢に見し秋
2023-085:潤(詠弛)
潤む目で見る月影に遥かなる想ひはいよよ霞みゆくかな
2023-086:派手(詠弛)
若き日の派手なショールを巻く君の肩に揚羽はせはしなく舞ふ
2023-087:汰(詠弛)
忍ぶれど音沙汰無しの秋の暮空血の色に染まり美し
2023-088:メンバー(詠弛)
秋深みさびしき夜をむせびつつ心で歌ふリメンバーミー
2023-089:癒(詠弛)
癒ゆる日を願ひて歩む秋の原すすきかるかやまた吾亦紅
11月
2023-090:諮(詠弛)
何事も家族に諮る方針も疼く心はままならぬまま
2023-091:ささやか(詠弛)
ささやかの想ひも今は枯れ果てて木瓜の実萎れ冬を待ちゐる
2023-092:房(詠弛)
山里の一人居の夜や暖房の効き確かなりビール冷たし
2023-093:預(詠弛)
預かりしものを返せず時途絶ゆ風の音のみ聴く冬の夕
2023-094:希望(詠弛)
老いしこそかつてありたる希望てふたゆたふ影を恃みにもせめ
2023-095:滴(詠弛)
一滴の涙に光る冬の海晩暉没して罪びととなる
2023-096:雌(詠弛)
夏ごとに摘みし山椒の雌の木の枯れて山荘ひとり寂しむ
2023-097:天気(詠弛)
結構な天気つゞきの冬の日を無為に過ごせりこれもまた良し
2023-098:辱(詠弛)
この世にて晴らせぬままか辱め受けし夜のことふと蘇る
2023-099:備(詠弛)
ささやかな備忘録にも記されぬこと重なりて年は更け行く
2023-100:掛(詠弛)
老いらくのひそかに掛ける想ひ文綴りし束の屑籠に満つ
2023-完走報告(詠弛)
老いらくのひそかな恋を詠み捨てて虚しく越えし八十路の峠
あつさりとまた来る春を恃みつつ呟く如き完走報告
今年の題詠100 は「老いたる人のひそかなる恋心を詠める」をテーマに季節に合わせて詠もうと試みたのですがうまく持続できませんでした。
]]>
「翌桧の夢」(題詠2022・・2022&2003の題を横雲と八重の掛け合いにして)
http://asitanokum.exblog.jp/29193102/
2022-05-20T07:16:00+09:00
2022-05-20T13:58:23+09:00
2022-05-20T07:16:11+09:00
asitanokumo
題詠まとめ
また春が来ました。ここに参加できることを嬉しく感じています。
「題を詠み込んだ歌を1首ずつ、番号順に投稿する」のがここのルールですが、 今年はこれを2003年と2020年の両方のお題を詠み込 んだ歌にしてアップしようと思っています。それぞれの題で同一の歌を再度アップするのも煩雑なので、ルールの上でいいのか悪いのか判りませんが、22年と03年の同一番号のお題を示して一首表記の型で詠ませて戴こうと思います。宜しくお願いします。これでは2年のお題で100首ですので、普通の2年分200首にするため、横雲と八慧の相聞にして200首を試みてみます。
さて、物語が紡げるでしょうか。
2022-001:来 &2003-001:月(横雲)
来る春を祝ひて月に祈りたり健やかにして逢ふ日の待てる(横雲)
2022-001:来 &2003-001:月(八慧)
廻り来る二十年(はたとせ)祝う月の宵梅がほのかに色づいている(八慧)
2022-002:扱 &2003-002:輪(横雲)
縮緬の紅の扱帯(しごき)の目にしるく酔ひを深むる花は大輪(横雲)
2022-002:扱 &2003-002:輪(八慧)
扱いに慣れた手つきが憎らしい帯解く宵に梅は三輪(八慧)
2022-003:巡 &2003-003:さよなら(八慧)
さよならを言わないままの人だから巡り合う日は笑顔でいたい(八慧)
2022-003:巡 &2003-003:さよなら(横雲)
二人して巡りし古都の愛しさよなら漬はみし旧時(とき)の懐かし(横雲)
2022-004:積 &2003-004:木曜(横雲)
この春の聖木曜日の再会を夢見稲積む布団のぬくし(横雲)
2022-004:積 &2003-004:木曜(八慧)
木曜に会いたい願い積み重ね今年こそはの初夢の夢(八慧)
2022-005:時期 &2003-005:音(横雲)
この春も歌詠む時期の廻り来ぬ遥かに山の音や聞かまし(横雲)
2022-005:時期 &2003-005:音(八慧)
音信の途絶えたままで時期過ぎて春来るたびの花にやきもち(八慧)
2022-006:瞳 &2003-006:脱ぐ(八慧)
春コート脱いでにっこり振り返る潤んだ瞳に映る影なく(八慧)
2022-006:瞳 &2003-006:脱ぐ(横雲)
脱ぎ捨つる人をうらみの恋衣潤む瞳や何映したる(横雲)
2022-007:数 &2003-007:ふと(八慧)
花陰にうふふと笑う時思い蕾の数を恃みとはする(八慧)
2022-007:数 &2003-007:ふと(横雲)
数へつつふと恃みたり咲ける日の見はてぬ夢に涙かきやる(横雲)
2022-008:ひたすら &2003-008:足りる(八慧)
ひたすらに遊び足りない思い出を数えてつづけて寂しさの極(八慧)
2022-008:ひたすら &2003-008:足りる(横雲)
寂しさの足らざる夜はひたすらに影を求めて生きて来たれり(横雲)
2022-009:炊 &2003-009:休み(八慧)
炊き立てのご飯を前に思案する休みの朝は老後のようで(八慧)
2022-009:炊 &2003-009:休み(横雲)
店先に休みの札の貼られたり一炊の夢見しも虚しや(横雲)
2022-010:景色 &2003-010:浮く(横雲)
寄せる波引く波ごとに浮く鳥のたゆたふ心景色に溶くる(横雲)
2022-010:景色 &2003-010:浮く(八慧)
桜貝拾う浜辺の夕景色浮いて沈んであなたは遠い(八慧)
2022-011:他 &2003-011:イオン(横雲)
きつかけはマイナスイオンに包まれて他生の縁を悟りたる夢(横雲)
2022-011:他 &2003-011:イオン(八慧)
きっかけに語ったことは他愛無いライオンキングのナラになる夢(八慧)
2022-012:軒 &2003-012:突破(横雲)
軒下の白き障子を突破る力萎えしも老いの枝に春(横雲)
2022-012:軒 &2003-012:突破(八慧)
青春は難関突破のお守りも効かず軒並失敗の山(八慧)
2022-013:いっそ &2003-013:愛(横雲)
愛(は)しきやし妹 (いも) を相見ず春嵐いつそ狂うて空にや舞はむ(横雲)
2022-013:いっそ &2003-013:愛(八慧)
山峡に愛を片寄せ春が吹くいっそ潰そか空缶カラカラ(八慧)
2022-014:近 &2003-014:段ボ-ル(八慧)
はなむけの日が近づいてあれこれと溜まった悔いを段ボール詰め(八慧)
2022-014:近 &2003-014:段ボ-ル(横雲)
山近き村の外れの道の駅段ボールには春野菜満つ(横雲)
2022-015:贈 &2003-015:葉(八慧)
贈りたい物を手にしてためらえば若草の葉に涙が光る(八慧)
2022-015:贈 &2003-015:葉(横雲)
やはらかき草の葉踏みて確かむは春の贈れるまことの光(横雲)
2022-016:若者 &2003-016:紅
梅日和京紅させば若者の恋に似ていて危険な香り(八慧)
2022-016:若者 &2003-016:紅
梅日和若者めきし髪結ひて無地の紬に紅型の帯(横雲)
2022-017:代 &2003-017:雲(横雲)
団塊の世代の孫の切り捨てる浮浪雲なり黙して生くる(横雲)
2022-017:代 &2003-017:雲(八慧)
雲と泥一世一代大勝負やっぱり泥は泥のまんまで(八慧)
2022-018:足 &2003-018:泣く
泣くときは泣くべし老いの足萎えて浮橋途絶ゆ春の夜の夢(横雲)
2022-018:足 &2003-018:泣く
憎らしく泣いて眠った春の夜の足る事を知るつまらない夢(八慧)
2022-019:諾 &2003-019:蒟蒻(横雲)
軽口の無理難題を諾なひて味噌蒟蒻の熱きを食めり(横雲)
2022-019:諾 &2003-019:蒟蒻(八慧)
我がままな願いを聞いて諾諾と作る糸蒟蒻入肉じゃが(八慧)
2022-020:段階 &2003-020:害(横雲)
段階を追はず急ぎて害へる心の傷に尾を引く哀歌(横雲)
2022-020:段階 &2003-020:害(八慧)
春の夜に三段階段踏み外し害う腰を撫でるエレジー(八慧)
2022-021:居 &2003-021:窓(八慧)
居鎮まり二人眺めた窓の月一人虚しい今日の春の香(八慧)
2022-021:居 &2003-021:窓(横雲)
隠居所の窓に居待の月出でて来る人なきも誘ふ花の香(横雲)
2022-022:挑 &2003-022:素(横雲)
挑発を知らぬふりしてやり過ごす鏡の奥の素顔憎らし(横雲)
2022-022:挑 &2003-022:素(八慧)
口惜しいと挑む眼差しやり過ごし素知らぬふりで笑って見せる(八慧)
2022-023:ロマン &2003-023:詩(横雲)
詩に託し語る男のロマンたれ春一番に揺るるブランコ(横雲)
2022-023:ロマン &2003-023:詩(八慧)
年を経てロマンスグレーの落ち着いた詩人になれと願ったけれど(八慧)
2022-024:彫 &2003-024:きらきら(横雲)
彫ふかき波きらきらと春の海かもめゆらりと飛びて声上ぐ(横雲)
2022-024:彫 &2003-024:きらきら(八慧)
春の風きらきらと吹き面影を偲んで飾る木彫の雛(ひいな)(八慧)
2022-025:乳 &2003-025:匿う(横雲)
授乳する君を匿ふ影ありて衣紋に春の風の香誘ふ(横雲)
2022-025:乳 &2003-025:匿う(八慧)
膝に置く四つ乳の胴を指で打ち胸に匿う魔を慰める(八慧)
2022-026:紹介 &2003-026:妻(八慧)
新妻と紹介された面影が記憶の中に歪んで残る(八慧)
2022-026:紹介 &2003-026:妻(横雲)
偽りの妻と紹介されし人面影もはや遠き思ひ出(横雲)
2022-027:託 &2003-027:忘れる(横雲)
忘れたるものは何処(いづこ)ぞ佇みてうきは我が身と託ち顔せる(横雲)
2022-027:託 &2003-027:忘れる(八慧)
屈託のない顔をしてひつそりと庭隅に咲き忘れられてる(八慧)
2022-028:中央 &2003-028:三回(横雲)
三回に分くる習はし煩はし卓中央に一日分盛る(横雲)
2022-028:中央 &2003-028:三回(八慧)
くるくると三回廻って春纏う中央通りの歩行者天国(八慧)
2022-029:秘 &2003-029:森(八慧)
思い出の春の息吹を秘めた森花を尋ねてひとり来ている(八慧)
2022-029:秘 &2003-029:森(横雲)
開帳の秘仏覗きし春陰の森の匂ひに魂洗はれき(横雲)
2022-030:以 &2003-030:表(八慧)
素っ気ない以下同文の表彰状笑顔でいても戸惑う嬉しさ(八慧)
2022-030:以 &2003-030:表(横雲)
その笑顔裏も表も無き証し握手に込めて以心伝心(横雲)
2022-031:あたふた &2003-031:猫(横雲)
あたふたと時過ぎゆくも老猫の背にある春の光のどけし(横雲)
2022-031:あたふた &2003-031:猫(八慧)
恋猫の声が途絶えてあたふたと立ち去る影にのどかな光(八慧)
2022-032:偏 &2003-032:星(横雲)
虹の字の虫偏もぞと持て余し眺める空に春の星あり(横雲)
2022-032:偏 &2003-032:星
日が生まれ星になるなら虹だって虫偏でいい蛇なのだから(八慧)
2022-033:粗 &2003-033:中ぐらい(横雲)
君が背にそそと粗塩投げかくや春の哀しみ中ぐらゐなる(横雲)
2022-033:粗 &2003-033:中ぐらい(八慧)
半額の粗で作った汁の味中ぐらいなら褒められたうち(八慧)
2022-034:惹 &2003-034:誘惑(横雲)
咲き満てる花に誘惑されし日の心惹かれし面影は今(横雲)
2022-034:惹 &2003-034:誘惑(八慧)
誘惑の匂いに耐えて離れるも惹かれる心今も変わらず(八慧)
2022-035:日常 &2003-035:駅(横雲)
日常の戻らぬままにこの駅に黙すマスクの人集まりぬ(横雲)
2022-035:日常 &2003-035:駅(八慧)
日常の些細なことが懐かしい別れる駅の片手振る影(八慧)
2022-036:醜 &2003-036:遺伝(八慧)
遺伝子に思い残して醜草の花言葉には「君を忘れず」(八慧)
2022-036:醜 &2003-036:遺伝(横雲)
遺伝てふ美醜も心に及ぶべし優しきことの感謝忘れず(横雲)
2022-037:述 &2003-037:とんかつ(横雲)
来し人に急ぎざぶとんかつぎだし思ふ心を述ばふ夕暮れ(横雲)
2022-037:述 &2003-037:とんかつ(八慧)
確かめて打つ音ことんかつおぶし心地よくして述べる後朝(きぬぎぬ)(八慧)
2022-038:襲 &2003-038:明日(横雲)
闇深し明日を恃めぬ侵襲に花守る人は髪白くせり(横雲)
2022-038:襲 &2003-038:明日(八慧)
理不尽に国境超えて襲い来るプーチンの狂明日が見えない(八慧)
2022-039:グループ &2003-039:贅肉(八慧)
たつぷりとついた贅肉削りたい決意新たのワークグループ(八慧)
2022-039:グループ &2003-039:贅肉(横雲)
贅肉のなきグループに誘はるも華奢なる身には嬉しからざり(横雲)
2022-040:探 &2003-040:走る(八慧)
闇の夜に影を探ってひた走る明けない夜はないと信じて(八慧)
2022-040:探 &2003-040:走る(横雲)
老いの手に探り当てたる幻を追ひてぞひたに走り惑へり(横雲)
2022-041:江 &2003-041:場(八慧)
毎日の犬の散歩は常夜灯旧江戸川の舟着場跡(八慧)
2022-041:江 &2003-041:場(横雲)
湊江(みなとえ)に葦の茂れる海苔干場ここにありしと媼語れり(横雲)
2022-042:懸 &2003-042:クセ(八慧)
行く先を懸念しながらユラユラとアクセサリーを揺らす夕暮れ(八慧)
2022-042:懸 &2003-042:クセ(横雲)
岨道を君に逢ふため懸命にアクセル踏める夢を見し朝(横雲)
2022-043:小説 &2003-043:鍋
小説のつづき見ている夢の中そこそこ楽し破れ鍋の蓋(横雲)
2022-043:小説 &2003-043:鍋
鍋焼を囲んだ二人夢の中そのまま書けば妖怪小説(八慧)
2022-044:把 &2003-044:殺す
薪何把積み並べたら一冬が息を殺して過ごせるのだろう(八慧)
2022-044:把 &2003-044:殺す
湧き来たる思ひをひそと噛み殺し固く手に把る別れの電話(横雲)
2022-045:辿 &2003-045:がらんどう(横雲)
がらんどうの心満たさむ時待てり桜舞ひ散る夢路辿りて(横雲)
2022-045:辿 &2003-045:がらんどう(八慧)
その夢の辿り着く果てがらんどう目覚めて山の春の音聞く(八慧)
2022-046:丹 &2003-046:南(八慧)
昔見た獅子に牡丹の背を偲ぶ槐の下の南柯の夢か(八慧)
2022-046:丹 &2003-046:南(横雲)
艶やかに袖翻し洛南の春に舞ひたり緋牡丹お竜(横雲)
2022-047:矢印 &2003-047:沿う(横雲)
矢印に導かれゆく花街道灯りに沿ふて添う影優し(横雲)
2022-047:矢印 &2003-047:沿う(八慧)
矢印が招き導く桜道神垣沿いに手をとりあって(八慧)
2022-048:陶 &2003-048:死(八慧)
彼の如く自己陶酔の果ての死と悟りて我も春に酔ひたし(八慧)
2022-048:陶 &2003-048:死(横雲)
生と死のあはひにありてたまきはる桜の下に受くる薫陶(横雲)
2022-049:綴 &2003-049:嫌い(横雲)
好き嫌ひ思ひのたけを書き綴り絶ちしも未練なほぞ残れる(横雲)
2022-049:綴 &2003-049:嫌い(八慧)
春菊に好き嫌いある卵綴じもてあます香をとじ込める朝(八慧)
2022-050:棒 &2003-050:南瓜(横雲)
呼ばるれば読書中断身を乗せてぶつきら棒に南瓜切りたり(横雲)
2022-050:棒 &2003-050:南瓜(八慧)
棒鱈を千切っただけのサラダには南瓜の花に似る金蓮花(八慧)
2022-051:かもめ &2003-051:敵(横雲)
春の海春の空へと飛ぶかもめ敵味方なく交々に舞ふ(横雲)
2022-051:かもめ &2003-051:敵(八慧)
この人が恋敵かもめくばりが油断できずに飛ぶに飛べない(八慧)
2022-052:茂 &2003-052:冷蔵庫(横雲)
聴きゐれば音や淋しき冷蔵庫夜の茂みに泣く虫に似る(横雲)
2022-052:茂 &2003-052:冷蔵庫(八慧)
草茂る春がことさら淋しいと冷蔵庫が泣いている夜(八慧)
2022-053:映 &2003-053:サナトリウム(横雲)
照映ゆるサナトリウムや風立ちて「いざ生きめやも」の声を聞きたり(横雲)
2022-053:映 &2003-053:サナトリウム(八慧)
語れない心の傷は癒やせるか夕映えに立つサナトリウムに(八慧)
2022-054:雰囲気 &2003-054:麦茶(八慧)
街並みに夜の雰囲気なくなって捨てられている麦茶のボトル(八慧)
2022-054:雰囲気 &2003-054:麦茶(横雲)
春寒に冷えた麦茶の出だされて醸し出される不仲の雰囲気(横雲)
2022-055:閑 &2003-055:置く(横雲)
掌に置くがごとくに花散りて居ぬ人偲ぶ昼の閑けさ(横雲)
2022-055:閑 &2003-055:置く(八慧)
閑けさにふれて散りくる花びらは椅子に掛け置くショールを零れ(八慧)
2022-056:亡 &2003-056:野(八慧)
荒れた野にひとり佇み亡き人をはるか偲んで聞くほととぎす(八慧)
2022-056:亡 &2003-056:野(横雲)
落日の野火の煙は遠かれど濃き山影に偲ぶ亡き魂(横雲)
2022-057:憧 &2003-057:蛇
とどかない星に憧れ蛇皮線を弾く春の夜に石楠花の風(八慧)
2022-057:憧 &2003-057:蛇
憧るる人の影追ふ春の宵蛇の目の傘に雨柔らかし(横雲)
2022-058:毒 &2003-058:たぶん(横雲)
キノコ狩りあまったぶんは毒のある色と見えてか捨てられてをり(横雲)
2022-058:毒 &2003-058:たぶん(八慧)
髪切るはたぶんあなたのつぶやいた言葉の毒にあてられたせい(八慧)
2022-059:出身 &2003-059:夢(八慧)
出身地聞かれて浮かぶ里の景今では夢の中にしかなく(八慧)
2022-059:出身 &2003-059:夢(横雲)
崩れゆく出身校の旧校舎夢の跡など友と辿れり(横雲)
2022-060:濡 &2003-060:奪う(八慧)
海棠の雨に濡れてる花びらに心奪われ人は佇む(八慧)
2022-060:濡 &2003-060:奪う(横雲)
理不尽に命奪はる戦ひの終はらぬ春や頬濡らす雨(横雲)
2022-061:継 &2003-061:祈る(横雲)
春盛り真間の継橋涙石越えて祈れる伏姫桜(横雲)
2022-061:継 &2003-061:祈る(八慧)
老木の枝垂れ桜が咲き満ちて祈る思いは語り継がれる(八慧)
2022-062:シンデレラ &2003-062:渡世(横雲)
憧れしシンデレラ姫物語今では渡世の垢に埋まる(横雲)
2022-062:シンデレラ &2003-062:渡世(八慧)
シンデレラタイムがあった若い時渡世の苦など知らずにいたが(八慧)
2022-063:伸 &2003-063:海女(横雲)
背伸びして髪結ふ若き海女の目に青き空舞ふかもめの白し(横雲)
2022-063:伸 &2003-063:海女(八慧)
引伸ばす写真の隅に海女がいて少年の日の夏の思い出(八慧)
2022-064:罵 &2003-064:ド-ナツ(八慧)
母娘罵り合ったその後で二人黙々ドーナツかじる(八慧)
2022-064:罵 &2003-064:ド-ナツ(横雲)
浴びせらる罵詈雑言を気にもせずドーナツ食める人おおらけき(横雲)
2022-065:枚 &2003-065:光(横雲)
春月の光に溶けてほの香る千枚漬け糸のネバネバ(横雲)
2022-065:枚 &2003-065:光(八慧)
二枚目を気取る男は肩落とし月の光を虚しく浴びる(八慧)
2022-066:平凡 &2003-066:僕(横雲)
平凡に生きて死ぬるが一番と神の僕となりし人説く(横雲)
2022-066:平凡 &2003-066:僕(八慧)
それなりの波乱はあってもつつがなく平平凡凡僕等の時代(八慧)
2022-067:密 &2003-067:化粧(八慧)
三密を避けて三年化粧せずコロナ恐れてひっそり生きる(八慧)
2022-067:密 &2003-067:化粧(横雲)
源氏山抜けて密やか化粧坂花見の後の余韻楽しむ(横雲)
2022-068:帝 &2003-068:似る
ひたすらに寒きに耐えて立ち尽くすオスの皇帝ペンギンに似て(横雲)
2022-068:帝 &2003-068:似る
柴又の帝釈天へ向かう道寅さんに似る男が二人(八慧)
2022-069:大事 &2003-069:コイン(八慧)
鍵失くしコインロッカー開けられず大事の書類出せずに破談(八慧)
2022-069:大事 &2003-069:コイン(横雲)
この度の業務拡大事業にてビットコインも利用可とせり(横雲)
2022-070:儲 &2003-070:玄関(横雲)
偽りて丸儲けせる不正義を玄関先にただし叱れり(横雲)
2022-070:儲 &2003-070:玄関(八慧)
玄関に桜散りきてなんとなく儲けた気して晴れた空見る(八慧)
2022-071:トルコ &2003-071:待つ(横雲)
邪を避くるトルコの青き石胸に待つや遥かの時越え行ける(横雲)
2022-071:トルコ &2003-071:待つ(八慧)
孫待てばトルコ行進曲かけてマックへ走る1時間半(八慧)
2022-072:遣 &2003-072:席(横雲)
昼寄席に空席目立つ春の日や遣る瀬無きまま一人笑へる(横雲)
2022-072:遣 &2003-072:席(八慧)
遣り返す言葉がなくて席を蹴り残念会をひとり立ち去る(八慧)
2022-073:歪 &2003-073:資(八慧)
人生を楽しむ資質備えても老いの歪みになすすべもなく(八慧)
2022-073:歪 &2003-073:資(横雲)
歪まざる思ひ貫き磊落の資質楽しみ我が道をいく(横雲)
2022-074:荷物 &2003-074:キャラメル(八慧)
旅先に忘れた荷物送られて御当地のキャラメル友となる(八慧)
2022-074:荷物 &2003-074:キャラメル(横雲)
キャラメルの包みで作る折鶴をそつと置きたり手荷物の上(横雲)
2022-075:償 &2003-075:痒い(横雲)
むず痒き思ひの果てに花は散りなほ深くせる償ひの傷(横雲)
2022-075:償 &2003-075:痒い(八慧)
呪わしい花粉のピーク目が痒い零す涙は何の償い(八慧)
2022-076:睨 &2003-076:てかてか(八慧)
てかてかのリンゴ片手に睨めっここれは盗んだものではないの(八慧)
2022-076:睨 &2003-076:てかてか(横雲)
禿頭のてかてか光る春の日は睨み合ふほど意気阻喪せり(横雲)
2022-077:与 &2003-077:落書き(八慧)
惜しみなく与えた愛も尽き果てて虚しく恋の落書を消す(八慧)
2022-077:与 &2003-077:落書き(横雲)
落書きに天は二物を与えぬとあれど一物枯れて夢なし(横雲)
2022-078:青春 &2003-078:殺(八慧)
殺伐の世情を厭いぶらり旅老人五人青春切符(八慧)
2022-078:青春 &2003-078:殺(横雲)
青春の影遥かなる殺陣の舞もつれる足に老いの深まり(横雲)
2022-079:尋 &2003-079:眼薬(八慧)
ひつそりと眼薬の木が花つける里を尋ねて若葉に染まる(八慧)
2022-079:尋 &2003-079:眼薬(横雲)
尋ね来し杉の花粉の満つる里眼薬欲しと泣くもうららか(横雲)
2022-080:疎 &2003-080:織る(横雲)
疎に密に織る赤き糸縺るるや音の途切れて耳を澄ませる(横雲)
2022-080:疎 &2003-080:織る(八慧)
新緑がなぜか哀しく揺れていて雨の疎林に物語織る(八慧)
2022-081:比喩 &2003-081:ノック(横雲)
何事の比喩にもあらず啄木鳥のノックに応ゆる桃色の声(横雲)
2022-081:比喩 &2003-081:ノック(八慧)
その夢に確か聞こえた比喩でなく心のドアをノックする音(八慧)
2022-082:涼 &2003-082:ほろぶ(横雲)
わが生の心涼しくほろびゆくその影のごと風の光れり(横雲)
2022-082:涼 &2003-082:ほろぶ(八慧)
ほろぶ身を涼しい顔で語りつつ五月の風のゼリーをつくる(八慧)
2022-083:ドレス &2003-083:予言(八慧)
草原にドレスの裾をなびかせて風の予言に身を許す春(八慧)
2022-083:ドレス &2003-083:予言(横雲)
まがことの予言の重く現し世のエンドレスなる惨禍を恨む(横雲)
2022-084:眺 &2003-084:円(横雲)
春の空円しと眺め見まはして雲の行方を想ひ定めぬ(横雲)
2022-084:眺 &2003-084:円
回廊の円い柱に身を寄せてふたり眺める春の夕月(八慧)
2022-085:浴 &2003-085:銀杏(横雲)
夏近し銀杏若葉の下に立ち訪ひ待ちて木漏日を浴ぶ(横雲)
2022-085:浴 &2003-085:銀杏(八慧)
初夏の陽を浴びて銀杏の並木道きららきらめき若葉が踊る(八慧)
2022-086:鮮明 &2003-086:とらんぽりん(八慧)
とらんぽりん深く沈んで鮮明な影を残して青空へ飛ぶ(八慧)
2022-086:鮮明 &2003-086:とらんぽりん(横雲)
鮮明な夢の目覚めや空高くとらんぽりん飛ぶ雲つかまむと(横雲)
2022-087:堕 &2003-087:朝(八慧)
花に酔う夢にさまよい自堕落の極みに遊ぶ楽しい朝寝(八慧)
2022-087:堕 &2003-087:朝(横雲)
地に堕ちし名をかこちつつ浮橋の涙にくるる後朝(きぬぎぬ)の空(横雲)
2022-088:耽 &2003-088:象(八慧)
読み耽る心のうちは迷い道曖昧模糊の老化現象(八慧)
2022-088:耽 &2003-088:象(横雲)
まとまらぬ有象無象の言の葉に行く末暗く思ひ耽りぬ(横雲)
2022-089:赴 &2003-089:開く(横雲)
この夏は久々うたげ開くてふ心躍りて勇み赴く(横雲)
2022-089:赴 &2003-089:開く(八慧)
赴けば優しい笑顔に迎えられ明るい声に愁眉を開く(八慧)
2022-090:しぶき &2003-090:ぶつかる(横雲)
訳もなくぶつかる心持て余し夏の初めの雨しぶき浴ぶ(横雲)
2022-090:しぶき &2003-090:ぶつかる(八慧)
夏が来て今年は一人大波が岩にぶつかるしぶきを浴びる(八慧)
2022-091:秩 &2003-091:煙(八慧)
SLの煙を潜る鯉のぼり秩父の川は夏の輝き(八慧)
2022-091:秩 &2003-091:煙(横雲)
無秩序なこの世恨むかたなびける浅間の煙夏空に溶く(横雲)
2022-092:冷 &2003-092:人形(横雲)
若葉冷え古りゆくものを睨みゐる武者人形の兜光れり(横雲)
2022-092:冷 &2003-092:人形(八慧)
青い目のフランス人形裾広げ冷たい雨をじっと見詰める(八慧)
2022-093:無駄 &2003-093:恋(横雲)
たのみなく恋に恋して老いゆける褪せて実らぬ無駄花愛(は)しき(横雲)
2022-093:無駄 &2003-093:恋(八慧)
老いらくの恋を夢見た無駄あがきなぜか気持ちは半分青い(八慧)
2022-094:誓 &2003-094:時(横雲)
月朧ろ立てし誓ひを恃みつつ時の満つるを待ちてながむる(横雲)
2022-094:誓 &2003-094:時(八慧)
その昔誓った言葉は忘れられふたりの時が取り戻せない(八慧)
2022-095:凄 &2003-095:満ちる(八慧)
夏の夜の夢かうつつか時満ちて涙一滴凄艶の声(八慧)
2022-095:凄 &2003-095:満ちる(横雲)
白妙の引いては満ちる潮に似て凄みを増して寄せる年波(横雲)
2022-096:飯 &2003-096:石鹸(横雲)
髭剃りの石鹸の香も爽やかな旅の朝なり菜飯の美味し(横雲)
2022-096:飯 &2003-096:石鹸(八慧)
石鹸玉飛んでキラキラ陽に溶ける夕飯前の旅のひととき(八慧)
2022-097:特別 &2003-097:支(八慧)
特別な理由はなくも老い支度整えている小雨降る昼(八慧)
2022-097:特別 &2003-097:支(横雲)
手遊びの干支占ひに特別の人との出会ひありとはあれど(横雲)
2022-098:酔 &2003-098:傷(横雲)
汝が影は甘き古傷覚めぬ夢一酔千日なほ酔ひの中(横雲)
2022-098:酔 &2003-098:傷(八慧)
酔痴れて眠れば夢に胸奥の恋の傷跡かすかに疼く(八慧)
2022-099:白 &2003-099:かさかさ(八慧)
別れ際これは心の豊かさかさして気取らず嘘を告白(八慧)
2022-099:白 &2003-099:かさかさ(横雲)
樟落葉かさかさ踏むも面白く別るる前の闇路に惑ふ(横雲)
2022-100:翌 &2003-100:短歌(横雲)
明日知れぬ身にはあれども来る春を短歌に綴る翌桧の夢(横雲)
2022-100:翌 &2003-100:短歌(八慧)
百題を詠み終える今翌春も短歌にひたる夢を見ている(八慧)
2022&2003-完走報告(横雲)&(八慧)
横雲と八慧のペアで2年分のお題をもとに詠みあってみるという形で始めましたが、なかなか難しく、物語を織るということができませんでしたが、なんとか二百題二百首は詠み終えました。
ブログ「朝の雲」にまとめます。]]>
「影を慕ひて」(題詠100首《2021年》のまとめ)
http://asitanokum.exblog.jp/28866152/
2021-09-14T16:29:00+09:00
2021-09-14T16:29:41+09:00
2021-09-14T16:29:41+09:00
asitanokumo
題詠まとめ
2021-参加表明(横雲)
コロナ禍の中で思いは内に内に籠っていく。気力も衰えていく。
このままでは今年はこの企画に加われないかと思っていたが、失った時を未練がましくなお「恋」として詠ってみようかと・・「恋」の力を借りて、年度が替わったのを機に詠み始めます。よろしく。文語口語は気にしないことにします。
題して「影を慕ひて」。
2021-001:求(横雲)
求めても求めてもなほ八穂蓼のからしや人に逢はぬ日積みて
(「みな月の河原におふる八穂蓼のからしや人に逢はぬ心は 詠み人知らず(古今和歌六帖)」六月の河原に生えているたくさん穂の出た蓼(たで)のからいこと。そのようにからい(つらい)なあ、あの人に逢えない私の心は。)
2021-002:悲(横雲)
甦る七年前の思い出は悲しい色をうちに秘めてて
2021-003:店(横雲)
にっこりと木曽の茶店に笑む顔がふと蘇る春の夜の夢
2021-004:普通(横雲)
難しいことに気付いて立ち竦む普通の人生普通の生活
2021-005:絵(横雲)
幸せに過ぎてた頃に添い寝した絵本の夢を探す春の夜
2021-006:宛(横雲)
不用意に宛名不明の呟きが口から洩れて空を見上げる
2021-007:隔(横雲)
追憶の世界に探す君の影時が隔てる笑顔はおぼろ
2021-008:案(横雲)
雨の中名前を呼んで思案橋行きつ戻りつ唄うブルース
2021-009:きっかけ(横雲)
きっかけのお店の名前懐かしい花咲く里に道は続いて
2021-010:回(横雲)
いつの日か回春の杖振り回し月に乗じて君を訪ねむ
2021-011:外(横雲)
ときめきの道を外れた山の里朧月夜に連翹は咲く
(連翹の花言葉は「希望」)
2021-012:洩(横雲)
失ひし影を求めて一筋の木洩れ陽の道一人還りぬ
2021-013:匹(横雲)
陽だまりに安らぎ眠る猫二匹僕らの夢はどこをさまよう
2021-014:料理(横雲)
春の味写真に撮って送られて同じ料理でリモート楽しむ
2021-015:机(横雲)
城跡の記念の栞大切に机の奥に仕舞われていて
2021-016:拡(横雲)
宣言を解けば拡大するコロナ繰り返される計画中止
2021-017:ガラス(横雲)
ガラス越しに過ぎてゆく春眺めてるこの幸せを名付けられずに
2021-018:区(横雲)
十年(ととせ)経て帰還困難区域には止まった時が静かに眠る
2021-019:未(横雲)
喜寿過ぎし未生れの老いらくの心とどめて咲く未草
2021-020:忙(横雲)
忙中に望んだ閑を持て余す耳目衰え夢も萎んで
2021-021:国会(横雲)
コロナ禍の国会中継流し聞く唯に虚しい昼の無作為
2021-022:族(横雲)
おしゃべりも気楽にするのは家族だけ君の笑顔はマスクが隠す
2021-023:導(横雲)
うつつには逢ふよしもなみ朝鳥の音に導かれ夢にだに泣く
2021-024:脚(横雲)
浅き瀬の橋脚洗ふさざ波の音柔らかく里は春なり
2021-025:昼(横雲)
るんるんの幸せ描く絵の如く孫と遊べり桜舞ふ昼
2021-026:挙(横雲)
幼な子と歩める君の姿見ゆ木洩れ陽を浴び挙りて光る
2021-027:宜(横雲)
コロナ禍に直に会へぬは宜(うべ)なれど夢にもなどか汝(な)は通はざる
2021-028:立(横雲)
木洩れ日に立夏を待たぬ夏ありて思へば眩し遠き人影
2021-029:姓(横雲)
姓たがふ夫婦の如く振舞ひて並べ記せる春もありけり
2021-030:ウイルス(横雲)
ウイルスの型の違いにおろおろと振り回されて春が過ぎさる
2021-031:主(横雲)
言喧く(ことさえく)もつれもつれた主義主張からまる糸の解く術もなく
2021-032:恒(横雲)
武蔵野の面影しのぶ恒春園五月の空に風がきらめく
2021-033:多分(横雲)
葉桜の風に乗るよう揺れる影多分あなたの記憶のかけら
2021-034:信(横雲)
諦めのいい人だねと風信子夜風に乗って微香が誘う
2021-035:替(横雲)
決断が手替え品替え伸ばされて悪化深めて夏を迎える
2021-036:裁(横雲)
無垢といふ色にかがやく指先に神の裁きのときめきを見る
2021-037:送(横雲)
会えるのはこれが最後と見送れば元気な声が「またね!」と答え
2021-038:反(横雲)
反故にした約束だけが残されたノートに白いシミが滲んで
2021-039:憶(横雲)
根拠なく憶測だけで語られる未来像には笑顔があるが
2021-040:コミック(横雲)
コミックも描(か)けないほどのバカらしい聖火の無残人心荒廃
2021-041:斜(横雲)
街角の斜向かいから手を振って応える笑顔待ち合わせ前
2021-042:該(横雲)
当該の事象をここはさて置いて恋の歌など若く明るく
2021-043:慕(横雲)
八重垣の梔子(くちなし)の香に穂の影を慕へば遠く稲妻むくゆ
2021-044:平均(横雲)
かろうじて平均点は超えてても×(バッテン)だけが記憶に残る
2021-045:項(横雲)
汝(な)を如何にせんと嘆ける項羽と虞面影揺れてわれも雛罌粟(コクリコ)
2021-046:描(横雲)
雛罌粟が高原を染め来る来ないあふれる涙で描く面影
2021-047:旦(横雲)
まだ青い文旦の実を手に取れば少女の香りかすか漂う
2021-048:出(横雲)
目出度くもまたも出会える歓びを出湯に浸かり願う夏の夜
2021-049:徒(横雲)
徒(あだ)し世を恨むでもなく年廻り新茶楽しむ夏は来にける
2021-050:技(横雲)
山河を越えゆく恋の離れ技見つけられずに奇跡を頼む
2021-051:グリーン(横雲)
肩寄せて見る紫陽花の色薄くミントグリーン雨に溶けてる
2021-052:燃(横雲)
荒寥の夢さめてなおわが生はまだ燃え尽きずくすぶっている
2021-053:工(横雲)
行く道が道路工事に遮られ途切れた思い行方知れず
2021-054:娘(横雲)
傘寿超え微笑む人に懐かしい娘のころの面影を見る
2021-055:拾(横雲)
人偲び青葉の中を拾い行き言葉の色のとりどり供ふ
2021-056:速(横雲)
空席の多い真昼の山越える高速バスは緑に染まる
2021-057:順番(横雲)
ワクチンの順番待ちはままならぬだからといって死ぬわけでなく
2021-058:箋(横雲)
古書に挿す一筆箋に記された知らない人の文字を親しむ
2021-059:復(横雲)
いつか復桜の下で笑み交わす願いを胸に歌い続けて
2021-060:六(横雲)
たちまちに六月になる日曜日葉を透く空に憂さを忘れる
2021-061:いっぱい(横雲)
緊急時取舵いっぱい旋回し後のヨーソロー聞きたきと夏
2021-062:禍(横雲)
再びの疫禍の夏を森に棲む一人で歌う声木霊して
2021-063:正(横雲)
正解のでない現実如何にせむ会えない日々にただ立ち竦む
2021-064:笹(横雲)
小笹原露に濡れつつ越え行けるあはでこし夜の道のはるけし
2021-065:否(横雲)
開催の賛否の民意無視されてゴリ押しされるかコロナ禍五輪
2021-066:ウルトラ(横雲)
新緑に染まるウルトラクラシック浅間高原ライダーズカフェ
2021-067:炒(横雲)
人気無き避暑地のカフェに一人来て緑陰で食む和風炒飯
2021-068:去(横雲)
手を振って少女は森に溶けて去り過ぎてく時が木霊している
2021-069:農(横雲)
様々の農具が並ぶ古民家の採れたて出来たて山菜料理
2021-070:筋(横雲)
二た筋の水尾重なりて夕暮るる山影崩す夏の湖
2021-071:女(横雲)
朴葉寿司手作りしていた女生徒の昔を偲び葉の香楽しむ
2021-072:物語(横雲)
書き記すその物語終えぬまま時は移ろひわが夢は散る
2021-073:滞(横雲)
何ゆえに五輪を前に滞るコロナ対策暗愚の政治
2021-074:圧(横雲)
なにゆえに民に「犠牲」を圧しつけて国は五輪を強行するの
2021-075:忌(横雲)
避忌剤を浴びて抜けたる藪潜り籠に一山枇杷の実盛れる
2021-076:ごみ箱(横雲)
わが書きし伝奇小説ごみ箱へ捨てて笑みたり女教師は
2021-077:上(横雲)
雨上がり
2021-078:菓(横雲)
逢えぬ日の誕生祝の洋菓子に幾つ立てよう蠟燭色々
2021-079:隠(横雲)
草深く雨をためたる隠沼にはまりたる身は濡れに濡れたり
2021-080:尚(横雲)
尚強い心維持して七難も八苦も越えて行く人やよし
2021-081:あさって(横雲)
梅雨の中あさってからは降らないと予報信じてお出掛け用意
2021-082:太(横雲)
わが命太く長くと欲張って老残の身の余りがしょぼい
2021-083:欧(横雲)
南欧の空晴れ渡り黄の壁に影を濃くして君は佇む
2021-084:顔(横雲)
寄り添って見ればほのかに夕顔が露光らせて幸せ運ぶ
2021-085:蘇(横雲)
千切りの紫蘇にめかぶの夏小鉢派手な浴衣もお酒のお供
2021-086:簿(横雲)
終活の連絡名簿に記された名前を一つ消している朝
2021-087:苦手(横雲)
不都合な苦手意識の克服に素敵だった時思い浮かべる
2021-088:膚(横雲)
無残にも削られ崩れた山膚になほ夏の雨今も止まざり
2021-089:粋(横雲)
老の伽(とぎ)粋な男と見栄張って甲斐性なしにただ夢を追う
2021-090:稼(横雲)
只管に稼ぐことだけ血眼の時代を神は嘆き諫むや
2021-091:看(横雲)
気が付けば看板の字が読めなくて視力検査と三歩近づく
2021-092:装(横雲)
よそ行きの秋の装い用意して再会の日の夢を楽しむ
2021-093:ラベル(横雲)
予約してまたキャンセルを繰り返すトラベルサイトに夢の傷痕
2021-094:規(横雲)
歌を詠む規範だなんて知らなくてただひたすらに心のままに
2021-095:価(横雲)
生きざまの真価問われて露呈する見せかけだけの張りぼて人生
2021-096:年(横雲)
老残の年相応に籠り居て夏の終わりの日照雨(そばえ)を浴びる
2021-097:働(横雲)
夢散って働かないで生きるのももう厭きましたと老いてなげやり
2021-098:詫(横雲)
ドタバタの終末感に染められて終わらぬ悲喜劇お詫びのことば
2021-099:昇(横雲)
望みなく悶えて過ごす闇の夜もやがて昇る陽底にはらめり
2021-100:嬉(横雲)
あな嬉し今日生きている歓びを歌にする人ここに集へり
2021-完走報告(横雲)
当初の思いを辿れたのか覚束ないのですがとにもかくにも完走しました。ありがとうございました。
100首はブログ「朝の雲」にまとめます。
]]>
すれ違うコロナの夏(題詠blog2010のまとめ)
http://asitanokum.exblog.jp/28185359/
2020-08-02T07:52:00+09:00
2020-08-02T07:52:08+09:00
2020-08-02T07:52:08+09:00
asitanokumo
題詠まとめ
2009に引き続き2010の百首にトライします。
これを完走すると、この題詠百首の企画、2003年~2020年の18年分・1800余首を詠み通すことになります。口語に軸足を追いて「八慧」の名で詠みますが、口語文語にとらわれず詠んでみようかと思っています。
2010-001:春(八慧)
高原にさゝやく如く春紫苑咲きて寂しく風に揺らげる
2010-002:暇(八慧)
うとうとと所詮暇な身持て余し昼寝の時間際限のなし
2010-003:公園(八慧)
公園の広場に蝉の声ひとつ我が行末の見えて見ぬふり
2010-004:疑(八慧)
疑いの晴らせないまま押し黙り艶々光る羊羹を切る
2010-005:乗(八慧)
立ち上がる波に波乗り立ち上がりもてあそばれて波間にこける
2010-006:サイン(八慧)
メールから飛びだしてくるVサイン笑顔の君は昔の儘で
2010-007:決(八慧)
決め処定まらぬままながらへばなすことのなき覚悟揺らぎぬ
2010-008:南北(八慧)
南北に連なる山の頂にわが命かと石ひとつ積む
2010-009:菜(八慧)
郭公の声に目覚めし高原の朝日眩しみ菜を刻む夏
2010-010:かけら(八慧)
木漏れ日のかけら騒めく山荘に遠く響ける歓びの歌
2010-011:青(八慧)
月の夜の一人の我をいたづらに寂しがらせて啼く青葉木菟
2010-012:穏(八慧)
音を鳴くも憂きことつきず草深き隠り沼のおもひそかにごれる
2010-013:元気(八慧)
元気かと問へるメールに返事なく半夏の雨の静々と降る
2010-014:接(八慧)
継ぎ接ぎの議論虚しく時過ぎて決まらないこと確かめる夏
2010-015:ガール(八慧)
シャガールの恋人のごと寄り添って明けゆく空を飛びたった夢
2010-016:館(八慧)
静かなる天井高き夏館窓を開けば合歓がけぶれる
2010-017:最近(八慧)
最近は目礼だけですれ違う不要不急の会話を裂けて
2010-018:京(八慧)
蒸し暑い京都の街の片隅にカタカタ回る扇風機の音
2010-019:押(八慧)
この夏の鬼押出は閉鎖され浅間の微動さらに重なる
2010-020:まぐれ(八慧)
ひと仕事終えて汗拭く夕まぐれ太き夏木が妖しくそよぐ
2010-021:狐(八慧)
鎮座する狐を撫でて祈れるは実らぬ思ひ行末のこと
2010-022:カレンダー(八慧)
カレンダーめくれど梅雨の明けやらず柱に凭れ世を見詰めをり
2010-023:魂(八慧)
魂極る命惜しみて手花火の火玉消ゆるを哀しみにけり
2010-024:相撲(八慧)
閉じこもり手持無沙汰の指相撲握ったままで雨の音聞く
2010-025:環(八慧)
恋しくも明けゆく朝や苧環(おだまき)の昔を今になすすべもなく
2010-026:丸(八慧)
笑む君のさらり描ける花丸の渦重りて憂きを飛ばしぬ
2010-027:そわそわ(八慧)
明易の川辺をひとりそわそわと何を待つともなくいそぎ行く
2010-028:陰(八慧)
片陰が尽きて遠くに雲の峰気付けば海の音が聞こえて
2010-029:利用(八慧)
鍵錆びて利用できない出入口絡まる蔦に過ぎ来しの影
2010-030:秤(八慧)
天秤に掛けた二人にさよならを言われてひとり取り残される
2010-031:SF(八慧)
夏空の果てのSFアルタイル君を求めて彷徨ってみる
2010-032:苦(八慧)
ひととせは早過ぎ行きてこの夏の七夕にさへ逢えぬが苦し
2010-033:みかん(八慧)
葉の陰の未だ小さな青みかん老いの秘密は実らないまま
2010-034:孫(八慧)
夏の夜の青い公孫樹の香の下に行く方祈り一人佇む
2010-035:金(八慧)
金色の波となる日を待つ青田夏の嵐になぶられている
2010-036:正義(八慧)
そのことに正義はなきも譲られぬ思ひ残して取り残さるる
2010-037:奥(八慧)
その恋は女の胸の奥の奥知られないまま眠り続ける
2010-038:空耳(八慧)
遠くから呼ばれる声を空耳とおもいて哀しふりかえる街
2010-039:怠(八慧)
夢果てて気怠い朝を倦む夏を厭うや君の音沙汰もなく
2010-040:レンズ(八慧)
かすむ目のレンズ磨くも弱り目の晴るることなく誠の見えず
2010-041:鉛(八慧)
画用紙と色鉛筆を用意してテラスに座る高原の朝
2010-042:学者(八慧)
ご都合でどうにでもなるご意見が御用学者にもてはやされる
2010-043:剥(八慧)
世に充ちる虚言剥ぎ取り真実を語れば悲惨末法の末
2010-044:ペット(八慧)
夏の野をサロペット履き駆け足で近付く君に雲が眩しい
2010-045:群(八慧)
群蜻蛉仰げば遠き雲の峰君の隣で大の字に寝る
2010-046:じゃんけん(八慧)
じゃんけんに負けてしゃがんで鬼になり隠れた君がまだ探せない
2010-047:蒸(八慧)
夏草の蒸れた匂いに少年の怒る背がある苦しい記憶
2010-048:来世(八慧)
来世また君と逢おうか苦しみの世を共々にまた深くして
2010-049:袋(八慧)
逢いたいと蛍袋にともす灯の思いが揺らぐ夏の高原
2010-050:虹(八慧)
山峡に晴間を見せて梅雨の虹なほ幽かなる名残惜しめり
2010-051:番号
一律に番号付けて管理する方策厭いカードは持たず
2010-052:婆
卒塔婆が風に鳴る日の冷奴集まれる者黙し語らず
2010-053:ぽかん
蹲踞(つくばい)にひとつぽかんと浮かぶ桃夏の日暮れて客の来たらず
2010-054:戯
戯れに恋はすまじと言われても涙のうちにじゃれあっていた
2010-055:アメリカ
夏の朝飲む珈琲はアメリカン柑橘サラダに笑顔を添える
2010-056:枯
その町の栄枯盛衰語りつつシャッター街に西日の強し
2010-057:台所
台所の窓から朝の匂いして呼び覚まされる「おはよう」の声
2010-058:脳
失へる名を求めつつ彷徨へり脳(なづき)濁りて影朧なり
2010-059:病
病葉(わくらば)を拾い重なる厄忌むも美しきもの掌にあり
2010-060:漫画
毎朝の四コマ漫画に世の様を知りて哀しき悔恨重ぬ
2010-061:奴
酒よりも先に出されし冷奴青き山椒の香の沁みにけり
2010-062:ネクタイ
握りしむ黒きネクタイ結ぶ日の汗を拭へる白きハンカチ
2010-063:仏
我が生の未だ終らず燃ゆるもの胸にぞありて咲く仏桑花
2010-064:ふたご
一皿に添えたふたごの卵焼き二人で食べる高原の朝
2010-065:骨
喉もとの小骨の如く思い出が夏の終わりを早くも告げる
2010-066:雛
軽鴨の雛の声する川の淵草陰深く影は見えねど
2010-067:匿名
公開の匿名希望のメッセージ秘めた思いを知ってほしくて
2010-068:怒
歌ごとに喜怒哀楽が記されてうつろい早く月日は廻る
2010-069:島
島影を遠く眺める丘の上茂った草の騒めく匂い
2010-070:白衣
匂い立ち背高く繁る夏草の合間を過ぎる行者の白衣
2010-071:褪
吊り橋を渡って行けば夢褪せて何もない野が広がっていた
2010-072:コップ
暑気払うコップの氷溶けていく木陰に人の影少なくて
2010-073:弁
杜の中七福神の弁天を探し尋ねて滲ませる汗
2010-074:あとがき
あとがきを読んで本文読まぬまま読んだつもりで仕舞う新刊
2010-075:微
雨けぶりひとひ翠微に坐したれば濡れて悶えし思いしみいる
2010-076:スーパー
山深みひとり眺むや逢えぬ夜の夏空明かしスーパームーン
2010-077:対
対局を眺めて過ぎし一日に深きドラマのありきと解かれる
2010-078:指紋
サヨナラの言葉もなしに君去りぬグラスに指紋微か残れる
2010-079:第
思い出は成り行き次第の人生に思いかけずも添えられた花
2010-080:夜
夏の夜の森の匂ひに思ひ出の遥かの天を眺め暮らしつ
2010-081:シェフ
涼やかに真白きシェフの夏帽子笑顔に添えて運ぶデザート
2010-082:弾
手を振って息弾ませて駆け寄った笑顔を今も胸に秘めつつ
2010-083:孤独
夏更けて老いて孤独を知る夜を眠れないまま本読みはてる
2010-084:千
千の星に千の名ありて夏の夜は闇の匂ひに包まれている
2010-085:訛
呟いた訛の意味が解けなくて知らん顔して話し進める
2010-086:水たまり
陽の匂う雨の上がった草原に隠されていた水たまり踏む
2010-087:麗
年一度会うこと得るや麗しき彩りの糸君の織りせば
2010-088:マニキュア
マニキュアの指に愁いを積らせて観世音如頬杖をつく
2010-089:泡
夏はもう夢でしかなく泡風呂に一人寂しく埋まっている
2010-090:恐怖
夏の真夜突然に来る死の恐怖忘れてゐしも近づく予感
2010-091:旅
この夏は旅に出たくもままならぬ嘆きふかめて晴れぬ空見る
2010-092:烈
粲粲の烈日の下に咲くダリア妖しきのまでに燃ゆる緋の色
2010-093:全部
惑星を全部見渡す夜明け前コロナの夏はひとりぼっちだ
2010-094:底
耳底に鳴るは何かの息遣い眠れぬものの胸底に棲む
2010-095:黒
夏帽子黒きリボンは蝶に似て寂寥という日盛りの夢
2010-096:交差
この先の行方は知れず交差する記憶を訊ね夏のふりゆく
2010-097:換
乗換を間違へしゆゑ行き着ける夢の終着静もれる闇
2010-098:腕
会える日を腕まくりして待つ夏が恐る恐るに梅雨を抜け出す
2010-099:イコール
すれ違う君と私がイコールでないこともまた歓びとする
2010-100:福
手作りの雪見大福厚ぼたし求肥に少し君の味して
2010-完走報告(八慧)
2011年 02月 18日に「題詠blog2011」に参加したのが始まりでした。歌を詠み始めて間も無い頃で、「うたのわ」から導かれてのことす。
それ以降毎年参加していました。
2018年4月からは日々のブログ更新がままならないこともあって、未参加の2003年のお題からぼちぼち詠み進めてきていました。
この2010年分を完走したところで、2003年からのこの題詠百首の企画のこれ迄の18年分、全1800余題を詠み通したことになりました。
ありがとうございました。
]]>
コロナの夏の老いたる恋(題詠blog2009のまとめ)
http://asitanokum.exblog.jp/28144535/
2020-06-26T07:46:00+09:00
2020-06-26T07:46:24+09:00
2020-06-26T07:46:24+09:00
asitanokumo
題詠まとめ
今年のお題が詠み終えたので、続いて「横雲」の名で未詠の【2009年の「題詠100首blog」】の企画に文語詠みでトライします。お題にはカタカナも多いようなので文語でいけるか疑問ですが、王朝風を離れて口語的発想で詠んでみようかと思っています。一日二・三首のペースで行ければと思いますが・・・疫禍に翻弄されるこの頃、どうなりますことやら。
2009-001:笑(横雲)
笑むことの久しく無くも懐かしき人を想ひて心和ます
2009-002:一日(横雲)
この一日暮れてかなしや夏燕生き長らへて何事もなし
2009-003:助(横雲)
助手席に座るや笑まふ横顔の間近にありて若葉まぼしき
2009-004:ひだまり(横雲)
ひだまりに夢見たものの残れるか捉へむとして濃き影の消ゆ
2009-005:調(横雲)
一人来て人いぬ郷の谷川の調べ聞き入る夏の夕暮
2009-006:水玉(横雲)
振り向きてえまひをこぼすスカートは水玉模様初夏の色
2009-007:ランチ(横雲)
笑み光るランチタイムのカフェテラス新樹を漏れる陽を頬に受け
2009-008:飾(横雲)
自粛中出窓に飾る一輪はふたりで摘みし思い出の花
2009-009:ふわふわ(横雲)
ふはふはの気持ちのままに別れしは空木咲く道未練残して
2009-010:街(横雲)
人影の少なき街の公園に村を偲べる青葉茂れり
2009-011:嫉妬(横雲)
魂きはる心変りの会へぬ夜の無音に嫉妬置けぬ追ひ酒
2009-012:達(横雲)
張りぼての伊達な姿に見栄はつて天を仰ぎてさらす生恥
2009-013:カタカナ(横雲)
今年また好みの色に咲く花のカタカナの名の覚えがたかり
2009-014:煮(横雲)
酒冷えて生姜風味の煮冷しと冷麦揃ふ夕餉めでたし
2009-015:型(横雲)
旧型のエアコン室外機の音響く路地裏夏の始まり
2009-016:Uターン(横雲)
Uターンの教え子訪ぬ山深き廃校の庭夏草茂る
2009-017:解(横雲)
奇妙なる自粛解除の報ぜられなほ逢えぬ日々続くかに見ゆ
2009-018:格差(横雲)
コロナ禍に国の地域の学校の情報格差際立ちにけり
2009-019:ノート(横雲)
鉛筆やノートを誰もが持つやふに一人一人にPCやある
2009-020:貧(横雲)
我が影の貧しきを倦み夏の夜の半月雲に隠れぬたまひぬ
2009-021:くちばし(横雲)
右左首振り立てて何の実を啄みたるや椋のくちばし
2009-022:職(横雲)
五月病職退きて久しきに残日録を倦むも哀しき
2009-023:シャツ(横雲)
湯上りのシャツをめくりて飲むビール問ふこと多き世をばさておき
2009-024:天ぷら(横雲)
そら豆の天ぷら摘まむ夕餉なり新たまねぎの甘き香もして
2009-025:氷(横雲)
触れ合はすグラスに氷溶けゆきて別れ惜しめる歌呟けり
2009-026:コンビニ(横雲)
コンビニの駐輪場の横に咲く十薬白しほの星明り
2009-027:既(横雲)
既視感のある街角に佇みて君待つ心湧きてきたりき
2009-028:透明(横雲)
透明な羽たたむやふ汝が影の裸形はひそと闇に生まれつ
2009-029:くしゃくしゃ(横雲)
泣き疲れ眠りに落ちし翌朝はくしやくしやの髪無心に梳る
2009-030:牛(横雲)
草の原老牛の背を初夏の風吹きすぎて浅間けぶれる
2009-031:てっぺん(横雲)
里山のてつぺんの木々伐られけり拓けし先に見ゆる遠富士
2009-032:世界(横雲)
月おぼろ病める世界を憂ひつつ人に離れて影法師踏む
2009-033:冠(横雲)
慶びも悼みも辛し疫禍裏の人を呼ばざる冠婚葬祭
2009-034:序(横雲)
春の夜に笑みて別れてはや十年(ととせ)話の序でに知る君の今
2009-035:ロンドン(横雲)
ロンドンに着きし便りのその後の十年を知らずして過ぎにしよ
2009-036:意図(横雲)
笑み裏に隠るる意図を探りかね別れし春の宵の懐かし
2009-037:藤(横雲)
藤波のゆかりの色をたづねつもたえたる恋のゆくへの見えず
2009-038:→(横雲)
→(やじるし)に導かれたる異空間出逢ひの場所と思ひ定めむ
2009-039:広(横雲)
広き野に忘れ草揺る浅間裾音なき風と子牛遊べり
2009-040:すみれ(横雲)
去年の夏すみれ摘みたる峠道忘られしごと通ふ人なし
2009-041:越(横雲)
夏旅の越ゆる県境いくつ目か人の通はぬ峠さびしき
2009-042:クリック(横雲)
星空を見上げて語る愛の再生&サイクリック宇宙論
2009-043:係(横雲)
係り受けの言葉のやふには呼応せず二人の笑まひ冷たきままに
2009-044:わさび(横雲)
水音のしげきが中の花わさびはるけき思ひさざめけるなり
2009-045:幕(横雲)
あやめ活けし誕生の日の祝宴の幕閉じられて広がる無音
2009-046:常識(横雲)
相容れずなほ別れざる黙しかな常識なしと非難されつも
2009-047:警(横雲)
椋鳥の啄みたるか警醒の遠ざかれるに樹のざわめきぬ
2009-048:逢(横雲)
逢ひたくてふと逢へさうで逢へぬままミミズに出逢ふ夏の日盛り
2009-049:ソムリエ(横雲)
ソムリエの如く蘊蓄傾けしワインの栓に滴る涙
2009-050:災(横雲)
季(とき)過ぎぬ災患の渦衰へずなほ語る日の定まらぬまま
2009-051:言い訳(横雲)
言ひ訳をいはぬふるまひ女伊達にこり笑ひて忽ちに去る
2009-052:縄(横雲)
ゆつくりと大縄跳びの輪が回り入って抜けてもう一回り
2009-053:妊娠(横雲)
はや沙羅の花は咲きたり一人身の友の妊娠知りしあの頃
2009-054:首(横雲)
次々と落ちし御首(みしるし)重なりて相対死に添ふ夏椿
2009-055:式(横雲)
葬式の終れる庭に夏椿落つるをながむかはたれの時
2009-056:アドレス(横雲)
アドレスに間違へあるや届かざるメールを前にいかづちを聞く
2009-057:縁(横雲)
縁先を濡らせる夏の雨過ぎて忘るるころに響く遠雷
2009-058:魔法(横雲)
渾身の魔法は利かず眠られず夢にも人に会へぬは苦し
2009-059:済(横雲)
コロナ禍の右往左往や儘ならぬ済世救民暗愚の無策
2009-060:引退(横雲)
引退後無為徒食の日重ねしもなほ楽しみの僅か残れり
2009-061:ピンク(横雲)
うつすらとピンクが滲む夏の花更紗空木に雨はひそけく
2009-062:坂(横雲)
道玄の坂を下りて別れゆく手を振る人の影おぼろなり
2009-063:ゆらり(横雲)
緑なる蛍火ゆらり揺れて消え又点りつつ闇深めゆく
2009-064:宮(横雲)
緑蔭の宮居を訪ふも人気なく高きところを風の吹くなり
2009-065:選挙(横雲)
剥がるかに選挙ポスターはたはたとはためくばかり夏深まれり
2009-066:角(横雲)
待合す夏の初めの街角の花屋の風に思ひの敢へず
2009-067:フルート(横雲)
街角の風はフルート哀しみの色に染まれる夏の夜の夢
2009-068:秋刀魚(横雲)
哀れなる秋刀魚の歌を口遊み熱く侘しき涙流せり
2009-069:隅(横雲)
咲き誇る隅田の花火一輪を手折りて古き壺に活けたり
2009-070:CD(横雲)
七変化咲く夏の宵懐かしきCD聴ききて君を憶へり
2009-071:痩(横雲)
紫陽花の群れ咲く中に痩せし身を埋めて月の光に染まる
2009-072:瀬戸(横雲)
進退の瀬戸際に立ち竦む夏後ろ姿のなほ遠ざかる
2009-073:マスク(横雲)
蒸し暑きマスク外せず沈黙の列に混じりて街を歩めり
2009-074:肩(横雲)
手を肩に置きしまま行く栗林花の匂ひに包まれてゐる
2009-075:おまけ(横雲)
しまひぎわおまけの話おもしろく語るに落ちて講話終りぬ
2009-076:住(横雲)
花栗の匂ひ漂ふ山住ひ夜の明けゆきてほのかに白し
2009-077:屑(横雲)
梅雨晴の空にあまねき星屑に迷へる心紛らはしける
2009-078:アンコール(横雲)
アルコールと見間違えたるアンコールノロ対策に手を洗ふ日々
2009-079:恥(横雲)
恥らひの色を見せつつ心太啜れる紅に新樹の光
2009-080:午後(横雲)
やむとみせてまた降る雨を持余し午後の長きに紫陽花を剪る
2009-081:早(横雲)
早蕨の萌えいづる野に降る雨の音をしみじみ二人聞きゐし
2009-082:源(横雲)
夏草や腐敗政治の根源を絶つかに鎌を振りおろしたり
2009-083:憂鬱(横雲)
見上げたる空を覆へる憂鬱の厚きを忌むやもゆるものある
2009-084:河(横雲)
夜の更けて鳴ける河鹿の哀しみに今も混じれる遥けき想ひ
2009-085:クリスマス(横雲)
さりげなく君と会ふクリスマスまであと半年とときめいてみる
2009-086:符(横雲)
幾枚も付箋重ねて読む本の如き心の御しがたきかな
2009-087:気分(横雲)
スカートを翻らせてヒロインの気分で歩く高原の夏
2009-088:編(横雲)
三つ編の少女の老いてみる夢は妖しき月とかくれんぼする
2009-089:テスト(横雲)
プロテストの波街を埋め出口の無くて地下壕に逃ぐる人あり
2009-090:長(横雲)
長良川言えない言葉口遊み涙流れて心せせらぐ
2009-091:冬(横雲)
夏空を見上げて冬の大三角語るあなたの瞳輝く
2009-092:夕焼け(横雲)
人恋ふや梅雨の晴れ間の夕焼けになほ懐かしき遠き日のこと
2009-093:鼻(横雲)
マスクよりはみ出す鼻に粒の汗分け入る麻の暖簾さやげり
2009-094:彼方(横雲)
みどり敷く彼方へつづく路ありて山の遥かに思ひかよへり
2009-095:卓(横雲)
朝日さす卓に置かれたもぎたてのトマトの赤に濡れる指先
2009-096:マイナス(横雲)
渓に下りマイナスイオン浴びる夏濁れる心洗ふが如く
2009-097:断(横雲)
断りの返事のメール消せなくて行く先見えず迷ひ入る道
2009-098:電気(横雲)
冬の日の静電気に似て指先に走る衝撃震える想ひ
2009-099:戻(横雲)
スカートを翻らせて戻る路夏野の風になぶられている
2009-100:好(横雲)
抱きしむる夏野に白き花満ちて好き撓(たわ)むとはいはずにあらめ
2009-完走報告(横雲)
歌はむとすること揺れに揺れつつも老いたる恋の百首をはりぬ]]>
「呑む涙」(コロナ禍の夏を迎えて)題詠《2020年》
http://asitanokum.exblog.jp/28102741/
2020-05-20T05:50:00+09:00
2020-05-20T05:50:37+09:00
2020-05-20T05:50:37+09:00
asitanokumo
題詠まとめ
「呑む涙」(コロナ禍の夏を迎えて)
《2020年》
2020-参加表明(八慧)
今年も「八慧」の名でトライします。日々設定した季語で俳句と短歌を詠んでいるTwitterやブログにこの企画も組み込んで、一日一首のペースで詠めればと思っています。嘆かわしいことに、気力も想像力も衰えたか100題のお題を見渡しても物語が浮かんでこず、物語を編もうという意欲もわいていませんが、とにかくはと思いながら詠んでみます。
とりあえずのテーマ。
「掌にやさしく包み呑む涙 粉引茶碗に充ちる哀しみ」
2020-001:君(八慧)
霙降る空見上げれば聞こえくるいま逢いたいの君の歌声
2020-002:易(八慧)
解決は易しくないと葉牡丹の入組む襞に悩みを托す
2020-003:割(八慧)
節分の豆を踏み割る音がして鬼が帰って来たと知られる
2020-004:距離(八慧)
絡む糸もう春なのにとけなくて君との遠い距離はそのまま
2020-005:喉(八慧)
春雷を聞き後ろ手にドア閉ざす口に含んだ喉飴がじゃま
2020-006:鋭(八慧)
咲き満ちた梅の一枝すぱっと切るその鋭さに春が目覚める
2020-007:クイズ(八慧)
戯れのクイズに秘める言葉には君を迎える春がいっぱい
2020-008:頑(八慧)
薄氷が溶けても蕾頑なに咲くのを拒むあなたを待って
2020-009:汁(八慧)
かちかちと哀しい音を響かせて男は一人蜆汁吸う
2020-010:なぜ(八慧)
生々となぜられた手の感触が甦る夢覚めて春の夜
2020-011:域(八慧)
あなたとは雨域の違う町に居て青空眺め春の雨聴く
2020-012:雅(八慧)
二人きて灯しに浮かぶ梅園に風雅楽しむ夜がふけていく
2020-013:意地悪(八慧)
好きだからした意地悪と言われても疑い深く君の目を見る
2020-014:客(八慧)
老人もSHIBUYAの客となる佳日チョコレート手に軽い足取り
2020-015:餌(八慧)
餌を撒き集まる鳩に語りかけ一人の昼の公園に春
2020-016:グラス(八慧)
触れ合わすグラスに透ける思い出は池一面に浮かんだ花唇
2020-017:境(八慧)
うつし世の境を越えてかかる虹君住む春の里に導く
2020-018:位(八慧)
幸せは中位でも春は春そっと喜ぶ白オキザリス
2020-019:立派(八慧)
目を奪う太く立派な松の木に春の羽衣そつとかけられ
2020-020:梅(八慧)
真っ白に散り敷いている梅の花あなたの「いいね」に春が深まる
2020-021:冊(八慧)
ときめいてめくる短歌の小冊子君の名見つけとりあえずお茶
2020-022:自慢(八慧)
おつまみは自慢の料理鮒膾差しつ差されつ更けていく宵
2020-023:陥(八慧)
その日から欠陥だけが目について嫌いになった人だと判る
2020-024:益(八慧)
益荒男のうつしごころは老いてなお益々盛んと駒返る草
2020-025:あなた(八慧)
会いたいの気持ち楽しむ細い月ながくあなたに会えない春は
2020-026:岩(八慧)
逢えなくて冷えた心で料峭の岩打つ波を眺め続ける
2020-027:慰(八慧)
水温む池をゆつたり泳ぐ鯉疼く心を慰さめるよう
2020-028:刷(八慧)
誰のとも知れぬ歯刷子置かれてて棚の扉をバッタと閉めた
2020-029:オープン(八慧)
風船はオープン記念のキャンペーン春一番に高く飛ばされ
2020-030:建(八慧)
次々に新しいビル建ち並び夕焼空の形を変える
2020-031:芝居(八慧)
雛の前若いつもりで白酒に頬赤らめて酔ったお芝居
2020-032:委(八慧)
運命の人はいずこか咲く桃にこころ委ねて微笑んでみる
2020-033:虐(八慧)
春が来て虐げられた枯れ草が萌え出すように思い湧きたつ
2020-034:頃(八慧)
いくつかの希望の灯しが消える頃春の闇には妖魔うまれる
2020-035:為(八慧)
いつまでも解けないままの悲しみは誰の所為だとないている天(そら)
2020-036:撮(八慧)
一撮みしたお茶の葉がゆっくりとひらいて香る春ののどけさ
2020-037:あべこべ(八慧)
あべこべの対処で悪化するばかり鋏を使うすべがみえない
(「馬鹿と鋏は使いよう」とはいえど・・「悪化する安倍のあべこべあきれはてあきらめきれないあしたはどっちだ」)
2020-038:私(八慧)
一日が終わった後で知ったこと君と私の幸運吉日
2020-039:威(八慧)
なかみなく空威張りして狼藉を働く人が導く不幸
2020-040:スパイ(八慧)
逢えなくて逢えないままのスパイラルこの苦しみはいつまで続く
2020-041:拒(八慧)
来るものを拒まないとは言わないが春の睡魔に殺される昼
2020-042:司(八慧)
司書室の窓辺に置いた一鉢にきいろたんぽぽ次々咲いて
2020-043:個(八慧)
久々の個展の報せに添えられた花のイラストほのかに薫る
2020-044:施(八慧)
闇雲に実施不能の施策立て広がる混乱尽きない怒り
2020-045:攻(八慧)
岩越える春の白波攻め寄せて水仙の香が濃く匂う浜
2020-046:わいわい(八慧)
うしろ髪を引かれたままで言うのなら欲しくはないわいわいの言葉
2020-047:溢(八慧)
歓声が溢れる土俵夢に見てがらんがらんに響く呼び出し
2020-048:殴(八慧)
突然の篠突く雨は横殴りただ晒される埠頭突端
2020-049:兼(八慧)
空透けて兼六園の四手辛夷咲けば遥かな人に逢いたく
2020-050:削(八慧)
思い出の添削されたラブレター一カ所だけに丸印つく
2020-051:夫婦(八慧)
池の辺に寄り添う若い夫婦松手をとりあって並んで見てた
2020-052:冗(八慧)
春の夜の支離滅裂の言い訳に巡回冗長検査のエラー
2020-053:掌(八慧)
君の掌とふれ合った日が甦る花散る里に今日ひとり居て
2020-054:がらくた(八慧)
棄て難いがらくたの山前にして死ぬに死ねずと笑ってすごす
2020-055:譲(八慧)
譲り葉が落ちて別れる日が近く出会いの季節は駆け抜けていく
2020-056:処(八慧)
舞う花に此処までお出でと誘われて何処まで行こう春の山里
2020-057:ソプラノ(八慧)
空高く天使の声かソプラノの囀りを聞く春の野遊び
2020-058:峰(八慧)
散る花に甦るのは峰越えて桜訪ねたふたりの旅路
2020-059:招(八慧)
この春の催し物は皆中止招かれていた花見の宴も
2020-060:凶(八慧)
吉凶を占う今朝の星座表良くも悪しくもあなたは来ない
2020-061:まじめ(八慧)
本意隠しいつもまじめなふりをして誕生の日も嘘つき通す
2020-062:催(八慧)
コロナ禍に人影消えて催しはすべて中止の花冷えの街
2020-063:幽(八慧)
春追って遊ぶ深山幽谷に隠れるように咲いている君
2020-064:父(八慧)
亡き父と歩いた道に風光り影追うように花屑が舞う
2020-065:一部(八慧)
風景の一部を染めた花筏見詰めて二人言葉をなくす
2020-066:硬(八慧)
ひとり旅硬い切符を握りしめ迷った末に涙ぐんだ日
2020-067:デビュー(八慧)
木瓜咲いて離れ離れに遊んでるひとりぼっちの公園デビュー
2020-068:緊(八慧)
飛花落花逢えずに過ぎて恋の神えやみの神に緊(ひし)と抱かれる
2020-069:裸(八慧)
春の夜の裸身の桜はらはらと散り続けては風に巻かれる
2020-070:板(八慧)
逢いたいと逢ってはならぬの板挟み遠く離れて逢えないままに
2020-071:能(八慧)
この春は再起不能に陥って悶えて時を遣り過ごすのみ
2020-072:𠮷(八慧)
𠮷野家が「つちよし」なんて知らなんだ看板の文字あらためて見る
2020-073:採(八慧)
しゃがみ込み蕗を採る背に桜散るくぐもる声の歌が聞こえて
2020-074:せめて(八慧)
置き去られせめて余生は悔なくと願ってみても明日が見えない
2020-075:擦(八慧)
思い出を優しく擦る春の風遥かの思いせつなく染めて
2020-076:充(八慧)
この春は空っぽのまま過ぎていく補充できない虚しさのこして
2020-077:武器(八慧)
魔を祓う仏の武器を振るように一双の蝶空に翔け行く
2020-078:添(八慧)
過ぎていく春を見送る夢にみた君と添う世がいつかはあると
2020-079:内(八慧)
何もかも嘘偽りで塗り固め内なる事実は誰も知らない
2020-080:擁(八慧)
擁きしめた春はするりと抜けていき早くも胡蝶花(しゃが)があらそって舞う
2020-081:札(八慧)
ひそやかな改札口に見送れば雨降る街は色を失う
2020-082:秒(八慧)
秒針の音にまぎれて屋根滑る樟の落葉を聞く春の闇
2020-083:剤(八慧)
二十年飲めば血圧降下剤効いているのかまだ生きている
2020-084:始末(八慧)
生ぬるい中途半端の人生は行ったり来たり始末が付かない
2020-085:臭(八慧)
コロナ禍の気分晴らしにシャボン玉吹けば吐息の臭みも消えて
2020-086:造(八慧)
手造りの料理に添えた青楓さやかな夏の風を呼んでる
2020-087:栽(八慧)
盆栽の若葉に光ざわめいて老いの二人は言葉をなくす
2020-088:しばらく(八慧)
しばらくは実らぬ恋と山吹を一輪挿して籠る闇の夜
2020-089:里(八慧)
かくれんぼしたまま過ぎる春の宵思う心は二千里の外
2020-090:植(八慧)
近道の裏のつつじの植込みにいつもの猫の声が隠れる
2020-091:呪(八慧)
ひきこもる八十八夜のお呪い福茶を飲んで疫禍を祓う
2020-092:タッチ(八慧)
じゃまたとハイタッチした別れ道明日は知れず花水木咲く
2020-093:属(八慧)
帰属する国の悲惨をいたむとき咎を身に受けさんざしが咲く
2020-094:錠(八慧)
閉じこめた錠を解くすべ知らなくて囀る椋を羨んでいる
2020-095:俗(八慧)
山深く俗塵を避け籠る日を夢に見ている夏を迎えて
2020-096:機嫌(八慧)
ご機嫌の尾を跳ね上げて鯉幟若葉の風を孕みのけぞる
2020-097:詐(八慧)
世の中は詐言重ねる人ばかり事実は闇に隠されたまま
2020-098:鈍(八慧)
鈍才の目にも呆れる愚鈍さが際立ってきて夏が始まる
2020-099:任(八慧)
若葉陰任天堂のゲーム機のとぎれとぎれの音が聞こえて
2020-100:詠(八慧)
ひそやかに想いのたけを歌に詠み甘辛苦く筍を煮る
(寄り道コース)
2020-101:一輪(八慧)
髪にさすコクリコ一輪揺らし行く五月の風は晶子の歓喜
2020-102:両輪(八慧)
実万両輪飾りに挿し年越すも五月の風は苦しみの色
2020-103:三輪(八慧)
甦り再三輪廻を繰り返す永久(とわ)の誓いを次に託して
2020-104:四輪(八慧)
良い国を総べる正義の四輪王どこにいるかと満月に問う
2020-105:五輪(八慧)
来年は祝って重五輪っぱ飯いっばい食べると遠くの便り
2020-106:七輪(八慧)
降り立つは花人街道二三七輪行バック開くも楽し
2020-107:九輪(八慧)
山裾にひっそりと咲く九輪草果てた苦倫の思いを残す
2020-108:大輪(八慧)
言い訳の何が正大輪にも葛にも掛からない嘘で固めて
2020-109:大車輪(八慧)
策無きに獅子奮迅の大車輪指揮が悪けりゃただ空回る
2020-110:吊り輪(八慧)
夏の夜の吊り輪灯のほの明かり読経の声に微かに揺れる
2020-完走報告(八慧)
寄り道コースのお題の「輪」が虚しくなったコロナ禍。なんとか詠み進めたが、テーマを絞るという事はできずに終わった。
全体はブログ「朝の雲 」 に「呑む涙」としてまとめる。
]]>
身に沁みる秋
http://asitanokum.exblog.jp/27909290/
2019-12-23T07:24:00+09:00
2019-12-23T07:24:35+09:00
2019-12-23T07:24:35+09:00
asitanokumo
題詠まとめ
「身に沁みる秋」題詠《2008年》
2008-参加表明(八慧)
2007年のお題が詠み終えたので、続いて「八慧」の名で【2008年の「題詠100首blog」】の企画にトライします。一日一首のペースで詠めればと思っているがどうなるやら。
2008-001:おはよう(八慧)
下露を散らす秋風吹いてきてやがて乱れる萩のおはよう
2008-002:次(八慧)
高原をけぶらせている白驟雨別れの言葉次送りする
2008-003:理由(八慧)
理由などなくて秋の灯消す宵の触れないままの指が冷たい
2008-004:塩(八慧)
塩の道行く秋の旅空澄んで道祖神にもシオカラトンボ
2008-005:放(八慧)
逢うためのこころ放てば啼く鳥が群れて夕べの空一巡り
2008-006:ドラマ(八慧)
冴えざえとドラマの中に秋北斗その終末は曖昧にして
2008-007:壁(八慧)
月照らす白壁の白滲む街そちらこちらで虫が鳴きだす
2008-008:守(八慧)
燃えつきる西日に染まる天守閣捥いで手にする林檎も赤い
2008-009:会話(八慧)
一瞬の会話に託すせつなさにひとひらひらと銀杏散る夕
2008-010:蝶(八慧)
墓碑を越えどこへ向かうか秋の蝶あなたの影をゆるりとめぐる
2008-011:除(八慧)
厄除けのお守りひとつジャケットのポケットに入れ秋の野を行く
2008-012:ダイヤ(八慧)
黒電話のダイヤルは廻はされぬまま秋の夜が平和に過ぎた
2008-013:優(八慧)
空澄めば優しく咲いて彼岸花遥かな国に思いをはせる
2008-014:泉(八慧)
一叢の色濃い藍の露草が濡れているのは泉への道
2008-015:アジア(八慧)
澄む秋のアジアの果ての鰯雲手を振り君の遠さをさぐる
2008-016:%(八慧)
消費税10%は明日から釣瓶落しに丹がむせび泣く
2008-017:頭(八慧)
今日からの軽減税率店頭のベンチの横で立って食べよう
2008-018:集(八慧)
きらきらと狗尾草(えのころぐさ)が秋の気を集めて風に揺れる野っ原
2008-019:豆腐(八慧)
旅先の掬えば白い新豆腐メランコリックに艶々として
2008-020:鳩(八慧)
犬連れて鳩笛吹いて秋草の原にしゃがんでのぼる日を見る
2008-021:サッカー(八慧)
夢に見た花野の先のサッカー場無人で月に照らされていた
2008-022:低(八慧)
低(た)れかかる雲の暗さにたちすくみひそかな秋の声を聴きいる
2008-023:用紙(八慧)
見渡せば雲一つない秋の空いま画用紙が青く塗られる
2008-024:岸(八慧)
沙魚飛んで岸辺の杭に寄せる波ひとり眺めてひねもす過ごす
2008-025:あられ(八慧)
振る舞いをあられもないと叱りつつ過ぎてく秋が身にしみる宵
2008-026:基(八慧)
意味もなく海は汚され寒々と腐臭を秘めた基地が造られ
2008-027:消毒(八慧)
後の月見るため開くカーテンに消毒の香がかすかに残る
2008-028:供(八慧)
繰り返す子供騙しの言い訳をどうすることもできない国会
2008-029:杖(八慧)
杖を手に眠らずに聴く暴風雨防災グッツ膝に抱えて
2008-030:湯気(八慧)
山盛りにされ湯気あげる衣被つるり裸にしたい思い出
2008-031:忍(八慧)
あばら家の何をしのぶか忍草月の光にたえて忍び音
2008-032:ルージュ(八慧)
ルージュ濃い女の愚痴を聞きながら薄い紅葉を哀しんでいる
2008-033:すいか(八慧)
この出会いすいか甘いか嗅ぐように指先かすめ赤とんぼ飛ぶ
2008-034:岡(八慧)
秋うらら岡に登ればしし垣の崩れた跡に群れる小式部
2008-035:過去(八慧)
さみしくて団栗ひろう指先に過去の痛みが甦る朝
2008-036:船(八慧)
しみじみと貴船菊見る黒髪に雨が冷え冷え白く光った
2008-037:V(八慧)
打ち揃い平和を示すVサイン秋の土用の空に突き出す
2008-038:有(八慧)(八慧)
恋しくて佇んでいる夕間暮れ金木犀の香の有るが儘
2008-039:王子(八慧)
星空を眺め王子を思ってはひとり聴きいるすがれむしの音
2008-040:粘(八慧)
粘りつく恨みの言葉拭っては文無鳥(あやなしどり)と血を吐いて泣く
2008-041:存在(八慧)
その人のなおも確かな存在を問うては秋の夜が更けていく
2008-042:鱗(八慧)
天帝の逆鱗に触れ荒れる川たける怒りが波濤を砕く
2008-043:宝くじ(八慧)
宝くじ買ってはやばや冬仕度さて死支度には何を捨てよう
2008-044:鈴(八慧)
鈴懸の並木を抜けた公園に草の穂わたが風に光った
2008-045:楽譜(八慧)
熟れ柿が梢にふたつ三つ残る楽譜の音符が零れたように
2008-046:設(八慧)
紅葉観る設けの席に五つ六つ飾るともなく木の実置かれる
2008-047:ひまわり(八慧)
幼な子が並んで歌うハロウィンのキュートなコスプレひまわり帽子
2008-048:凧(八慧)
切れそうで夢をつないだ凧糸がもうこれ以上には伸ばせない
2008-049:礼(八慧)
走りぬく真夏すがしい札幌に晴れて輝く五輪のマーク
2008-050:確率(八慧)
応答の確率低いメールでも秋の夜惜しみ思いを込める
2008-051:熊(八慧)
あちこちに「熊出没」と掲示され紅葉の森をこわごわ進む
2008-052:考(八慧)
明瞭に考え違いを指摘され萎れて帰る夜は苦しく
2008-053:キヨスク(八慧)
キヨスクの弁当を買う旅も待ってる人がいれば楽しい
2008-054:笛(八慧)
寒く澄む秋の空には鳶の笛光になって美しく降る
2008-055:乾燥(八慧)
振り向けば無味乾燥の人生に彩り添えた風景がある
2008-056:悩(八慧)
うれしくも悩み忘れて小春日の林をめぐりひとひを過ごす
2008-057:パジャマ(八慧)
黄の花のパジャマに羽織るバスローブ窓から朝の光がもれて
2008-058:帽(八慧)
別れ際振る冬帽子陽を受けてやがて林の枯葉にまぎれ
2008-059:ごはん(八慧)
最後にはごはんをいれて熱々を啜って終わる宴会の鍋
2008-060:郎(八慧)
山茶花がはらはら散れば雪女郎くる気配して夜風が痛い
2008-061:@(八慧)
見せばやと@(アット)をつけて書くふみに単価記号の短歌は詠めず
2008-062:浅(八慧)
別れにはまだまだ浅い冬の宵握り返した指がからまる
2008-063:スリッパ(八慧)
ぬくぬくの冬のスリッパ木造の隙間風吹く廊下に並ぶ
2008-064:可憐(八慧)
ひっそりと可憐に咲いた寒菊に心のうちを呟いてみる
2008-065:眩(八慧)
追うほどに白く眩しい冬の陽が逢えない人の影を育てる
2008-066:ひとりごと(八慧)
冬バラの花びら摘まみひとりごと思いのほかに指に冷たく
2008-067:葱(八慧)
何事もない顔をしてさくさくと刃音確かめ切る矢切葱
2008-068:踊(八慧)
ひらひらと風がないのに葉が踊り枯蓮の影不安を煽る
2008-069:呼吸(八慧)
身悶える神の呼吸か散る木の葉激した思い吐き出すように
2008-070:籍(八慧)
氷雨降り厚い遺稿の手ごたえは本というより書籍の重さ
2008-071:メール(八慧)
風邪に寝て布団のなかで音ださず開かれもせず震えるメール
2008-072:緑(八慧)
枯れた野に変わらぬ思い語るかに緑の松が一本残る
2008-073:寄(八慧)
寄りあって寄せ鍋囲む四畳半学生街のアパート二階
2008-074:銀行(八慧)
落葉踏み簡素になった銀行の暦手にして萎れて帰る
2008-075:量(八慧)
冬の日の僅かに増えた酒の量うつらうつらに寝入ってしまう
2008-076:ジャンプ(八慧)
滑りきてジャンプする瞬間(とき)その影は飛び立つ鳥のときめきに似る
2008-077:横(八慧)
振幅の大きな波に乗り揺れて横にならんだ浜の水鳥
2008-078:合図(八慧)
振りかざす帽子が合図冬河原老いるを嘆く人の道行き
2008-079:児(八慧)
境内の句碑を探してかさこそと落葉を踏んで児童館裏
2008-080:Lサイズ(八慧)
冬の川背にしてがばと頬張るはLLサイズの苺大福
2008-081:嵐(八慧)
吹き上げる冬の嵐に捲られたコートの裾に落葉絡まる
2008-082:研(八慧)
庖丁を研いで鶏肉さばいた日揃う家族と夕餉楽しむ
2008-083:名古屋(八慧)
描かれた椿が淡い名古屋帯解けば塩瀬の音が色めく
2008-084:球(八慧)
見えるのは使い古しの餅網だ黄斑浮腫の眼球検査
2008-085:うがい(八慧)
洗面の棚に赤々実南天一枝差し置くうがいコップに
2008-086:恵(八慧)
陽の恵み受けて優しい冬木道ケンケンケンパひとり石蹴る
2008-087:天使(八慧)
そもそもは冬の天使が枯枝に赤いショールを忘れていって
2008-088:錯(八慧)
愛されていたと錯覚していると説き伏すように木枯しが吹く
2008-089:減(八慧)
湯加減のよい露天湯に身を沈め眠る山見る真昼の至福
2008-090:メダル(八慧)
禅寺の日向ぼっこでとつとつととりそこなったメダルの話
2008-091:渇(八慧)
冬ざれの渇いた喉を癒すよう届いた手紙むさぼり読んだ
2008-092:生い立ち(八慧)
生い立ちに嘘が混じっていることをふと洩らされた冬の夜のこと
2008-093:周(八慧)
一周忌終えて遺品のカーディガン羽織れば鏡に若い父いて
椋をテーマに
2008-094:沈黙(八慧)
庵では名こそ呼ばぬが街路樹に来啼く椋鳥やがて沈黙
2008-095:しっぽ(八慧)
山小屋の椋を見上げて屋根の上ほらほらじゃれる子猫のしっぽ
2008-096:複(八慧)
椋の木の下をさまよい実を探る叶わぬ思い複雑なまま
2008-097:訴(八慧)
こんなのは味わえないと訴えてやがて小さい声でおいしい
2008-098:地下(八慧)
地下を抜け別れの駅で握る手は手品師に似て悲喜差し替える
2008-099:勇(八慧)
冬くると悦び勇み旅立った時が今なお懐かしくなる
2008-100:おやすみ(八慧)
小屋暮し星はちらちら山の上聞いた言葉がおやすみなさい
コメント
テーマの定まらないままだったが、なんとか詠み終えました。
今年は、2019年のお題の後、5月より2006年、7月より2007年。9月半ばから2008年を詠み込んできたのて、題詠400首の年になった。
来年の2月に再会・再開できるよう願っています。
2008-完走表明(八慧)
テーマの定まらないままでしたが、なんとか詠み終えました。
百首詠み終えたところで、百首の総題を「身に沁みる秋」といたします。]]>
題詠100首★2007「迷ひ道」
http://asitanokum.exblog.jp/27766203/
2019-09-13T07:29:00+09:00
2019-09-13T07:29:11+09:00
2019-09-13T07:29:11+09:00
asitanokumo
題詠まとめ
《2007年》
2007-参加表明(八慧)
2006年のお題が詠み終えたので、続いて「八慧」の名で【2007年の「題詠100首blog」】の企画にトライします。
「遠き影」
2007-001:始(八慧)
老い老いて詠み始めたる恋の歌遠き影追ひ逢ふ日思ひぬ
2007-002:晴(八慧)
梅雨晴れのひと日を遊び過しけり移ろふ思ひ知る由もなく
2007-003:屋根(八慧)
屋根裏の窓に灯しのともる時同じ月見る人や偲ばる
「緑濃し」
2007-004:限(八慧)
限りなき夢追ひゆきて限りある命燃やせる世のいとほしき
2007-005:しあわせ(八慧)
星眺め浸かる出湯にしあはせの老いて悔なき身をつつみける
2007-006:使(八慧)
言の葉は心の使ひ緑濃く繁る梢のさわさわと揺る
「ふりぬるも」
2007-007:スプーン(八慧)
スプーンの掬ふすずしささやさやと澄める想ひの胸にしみいる
2007-008:種(八慧)
百種(ももくさ)の言葉に込めしわが想ひ勿忘草の揺るるにまかす
2007-009:週末(八慧)
週末の端居にながむ山の雨ふりにこそふれ人も涙も
「涙の末」
2007-010:握(八慧)
別れ路の握り返さる手の温み儚き夢を何に契れる
2007-011:すきま(八慧)
せつなさの隙間すきまに忍び入る涙の末を人や知らなむ
2007-012:赤(八慧)
ながらひて悔む昔やふりむけば迷へる空に赤き月出づ
「夏深む」
2007-013:スポーツ(八慧)
スポーツ紙振りかざし呼ぶ青年の横に少女のはにかみのあり
2007-014:温(八慧)
山深き温泉宿に集まりて老若男女夏を楽しむ
2007-015:一緒(八慧)
啼く蝉と一緒になりて騒がしく人の集へる丘越えて行く
「夏闌く」
2007-016:吹(八慧)
吹く風にさやぐ緑のなほ深く入日涼しき高原に立つ
2007-017:玉ねぎ(八慧)
手に余る大玉ねぎの重かれば剥くやいつはりなきを確かむ
2007-018:酸(八慧)
段々に酸漿市に購へる実の色づきて夏の夜闌くる
「月に雨」
2007-019:男(八慧)
許されぬ男の嘘か摘みとりし苺潰され悲しみの色
2007-020:メトロ(八慧)
心ねのメトロノームの乱るごと昔忍ぶの草のなびける
2007-021:競(八慧)
夏の夜の徒競べとや月と雨はかなき夢ををきつつ楽し
「幻影」
2007-022:記号(八慧)
一片の記号となりて立ち尽くす夏の光に若き日の君
2007-023:誰(八慧)
木の蔭の君に似たるは誰ならむ手を振り来たる影若やぎて
2007-024:バランス(八慧)
影二つアンバランスを際立たせ少女と翁森に消えたり
「鎌倉」
2007-025:化(八慧)
逢はむとて通ひしものを化粧坂つらき言葉に今も危ふし
2007-026:地図(八慧)
鎌倉の古地図手にして七曲り茂る青葉の香に包まるる
2007-027:給(八慧)
苦しみを解き給ひしやかまくらの古仏の胸に吉祥の印
「君の居ぬ時」
2007-028:カーテン(八慧)
やわらかい薄いカーテンふくらます夜風がはこぶ火の山の香気(かざ)
2007-029:国(八慧)
亡びゆく国の姿の醜きを夏の光のギラリ照らせり
2007-030:いたずら(八慧)
つれづれといたずらごとを書き並ぶ君居ぬ時の慰めとして
「夏山」
2007-031:雪(八慧)
夏山の雪の残れる渓越えてお花畑と星に逢ふ旅
2007-032:ニュース(八慧)
梅雨明けて山に繰り出す人波を映すニュースに誘はれている
2007-033:太陽(八慧)
霧濃くも林を分けて太陽の登る気配の色濃くなりぬ
「夏座敷」
2007-034:配(八慧)
配られし菓子の冷たき夏座敷思ひ思ひの声や美し
2007-035:昭和(八慧)
遠く遠く昭和の恋の香りして夏座敷には一文字の軸
2007-036:湯(八慧)
山シダを活けて湯宿の夏座敷夕べの風に思ひの崩る
「露の世に」
2007-037:片思い(八慧)
朝顔の一つ咲く日の片思ひ夢もこの世も露とあらそふ
2007-038:穴(八慧)
墓穴掘るおのれを嗤ひ酒酌みてこの世も露と身こそうらみめ
2007-039:理想(八慧)
別れゆく不条理想ひ朝顔の露とあらそふ世をなげきけり
「旅立ちのとき」
2007-040:ボタン(八慧)
誰も来ぬコールボタンを押し続け幾億年か流れ去れるや
2007-041:障(八慧)
雲流れ障子に映る月影に懸け橋わたる魂の翳見る
2007-042:海(八慧)
夕焼けの海辺に夏の匂ひすは夢路辿れる魂のたゆたひ
「夏座敷」
2007-043:ためいき(八慧)
諦めのためいきさへも美しく夜のとばりに影の解けゆく
2007-044:寺(八慧)
襖とり広げし寺の夏座敷大の字に寝て山の音聴く
2007-045:トマト(八慧)
朝取りのとりどり熟れしトマト手に新妻のごと笑みをこぼせり
「迷ひ路」
2007-046:階段(八慧)
古寺の木の階段をつやつやと照らせる月に影の迷へり
2007-047:没(八慧)
うつつなる日本沈没見据えつつ確かめ難き思ひ確かむ
2007-048:毛糸(八慧)
朝の秋君のほつれ毛糸の筋涙の元をたどる迷ひ路
「嘘」
2007-049:約(八慧)
密約のごとく心の奥底に大事ほうじに畳まれる嘘
2007-050:仮面(八慧)
まやかしの仮面の笑ひ振り撒きて行方の見えぬ道に迷へる
2007-051:宙(八慧)
汗拭ひ見あぐや碧き秋の宙かさねし嘘の虚しきを知る
「映画」
2007-052:あこがれ(八慧)
星の夜は叶わぬままにあこがれるメグライアンの「巡り逢えたら」
2007-053:爪(八慧)
戦争の爪痕微か背に残す「映画」に夏の蝶が飛び立つ
2007-054:電車(八慧)
輝けるミライの電車夏の夜に笑ふ子を乗せてまつしぐらなり
「秋の空」
2007-055:労(八慧)
精神の疲労回復企みて痛みこらへる初秋の旅
2007-056:タオル(八慧)
湯上りのほてる身つつむバスタオルなくしたものは拾いえぬまま
2007-057:空気(八慧)
秋の空気球の一つ溶けゆけば澄める思ひを染むる夕焼
「秋の野」
2007-058:鐘(八慧)
露払ひ供華に釣鐘草を摘む愁ひの色の淡きをいたみ
2007-059:ひらがな(八慧)
ひらがなのてふてふが飛ぶ秋の野や色なき露と涙光れる
2007-060:キス(八慧)
野にありて権威を嫌ふアナキスト独りうき世を歎き老いゆく
「影を慕ひて」
2007-061:論(八慧)
若き日々共に論ぜし幸せをいかばかりほど叶えしととふ
2007-062:乾杯(八慧)
偲ぶるは良き日良き時乾杯のグラスに笑みし君が面影
2007-063:浜(八慧)
影慕ひ浜昼顔の咲く道を湖風の香に誘はれて行く
「盆過ぎて」
2007-064:ピアノ(八慧)
君が影かき消すように夏果ててピアノに白き薄埃積む
2007-065:大阪(八慧)
耐えがたき暑さ続きし盆休み大阪弁に染められ帰る
2007-066:切(八慧)
涼しげに茂る秋草古き道訪ぬ鎌倉七切通し
「ふりぬる身」
2007-067:夕立(八慧)
カナカナの声途切らせし夕立の過ぐや葉末に空の光れる
2007-068:杉(八慧)
驟雨過ぐ杉の木立にひとりゐてふりぬる身とぞあはれしらるる
2007-069:卒業(八慧)
卒業のアルバム捲る手の皴を共に嘆ける喜寿の現し身
「身ひとつ」
2007-070:神(八慧)
神奈備の山辺の雨に濡れて行く秋の旅情の深まる夕べ
2007-071:鉄(八慧)
かぎろへる鉄路辿りて身ひとつ荒野を越えてなが影を追ふ
2007-072:リモコン(八慧)
並べたるリモコン五つそれぞれは繋がらぬまま役目知られず
「山に啼く」
2007-073:像(八慧)
幼さを残し佇む裸婦像の未完成なるゆるき曲線
2007-074:英語(八慧)
退職後畑打つ英語教師ゐて日焼けし艶の皴深くせり
2007-075:鳥(八慧)
物思ふ我に聞かすや時鳥人まつ山に恋しくも啼く
「秋風」
2007-076:まぶた(八慧)
そののちはともにけだるきまぶた閉じ夢の続きに秋風聞きし
2007-077:写真(八慧)
笑むひとの写真懐かし秋風の色に誘はる旅にいざ出む
2007-078:経(八慧)
逢はぬままはや幾歳の経たるよと孤悲の恨みにふくや秋風
「秋草」
2007-079:塔(八慧)
秋日受く路傍に古き供養塔嘆きの色を増せる下草
2007-080:富士(八慧)
色づきて揺るる秋草踏み分けて降りさけみれば夕映えの富士
2007-081:露(八慧)
ひとりごとつぶやいている露の秋たのみの末の旅をつづける
「揺れる思い」
2007-082:サイレン(八慧)
訓練のサイレン告ぐる震災忌梢に見上ぐ空や青かる
2007-083:筒(八慧)
筒鳥のこゑに迷ひて書けぬ文深まる霧に思ひ惑ひぬ
2007-084:退屈(八慧)
アトリエの古き揺り椅子ゆらゆらと一人揺れてる退屈な午後
「秋の蝶」
2007-085:きざし(八慧)
変節の疑心きざして秋の夜はちびりちびりの酒に溜息
2007-086:石(八慧)
秋の陽にぬくもる石をいとしみて番ひの蝶の浄土に遊ぶ
2007-087:テープ(八慧)
見送りのテープ漂ふ埠頭には別れ惜しみてなく虫の声
「秋深む」
2007-088:暗(八慧)
暗闇の谷へ落ち行く心地して国の行方を憂ふ秋なり
2007-089:こころ(八慧)
秋深み旅のこころの定まれり身にしむ夜半の風や色なき
2007-090:質問(八慧)
生くことの本質問ふも答えなく迷ひの道に潜む死の影
「桔梗花」
2007-091:命(八慧)
手花火に老いの命の匂ひしてたまゆらに揺れ消ゆるを惜しむ
2007-092:ホテル(八慧)
大花火浜のホテルのベランダに出でて眺むや夏の果て行く
2007-093:祝(八慧)
あきちこう六十路を祝ふ言の葉の色かはりゆき独り悲しき
「絵模様」
2007-094:社会(八慧)
老々の高齢社会を生きていく二人に明日の介護の覚悟
2007-095:裏(八慧)
若き日の粋の名残りの羽織裏婀娜な姿の褪せぬ絵の色
2007-096:模様(八慧)
秋草の靡く絵模様ひるがへす若き女の裾の艶めく
「夜の更けて」
2007-097:話(八慧)
あれこれと病の話聞きし夜のはぐらかされてなにか哀しき
2007-098:ベッド(八慧)
月光の零るベッドの裾にゐて失へるもの裏返しけり
2007-099:茶(八慧)
秋の夜の更けてすすれる熱き茶に昔を返す衣手の夢
「終の栖」
2007-100:終(八慧)
これがまあ終の栖と断ずるも迷ひの道のなほ続きける
2007-完走報告(八慧)
百首詠み終えたところで、百首の総題を「迷ひ道」といたします。
]]>
題詠100・2006年「七夕に逢ふを願ふも」
http://asitanokum.exblog.jp/27679703/
2019-07-08T16:36:00+09:00
2019-07-08T16:41:47+09:00
2019-07-08T16:36:21+09:00
asitanokumo
題詠まとめ
2019年のお題が詠み終えて、昨年詠んだ「題詠マラソン2003・2004年・2005年」に続いて2006年の「題詠100首blog」の企画にトライした。
「七夕に逢ふを願ふも」
「五月の風」
2006-001:風(八慧)
新しき風よろこびて風まとひ令和に踊るチュールスカート
2006-002:指(八慧)
指組めば指が応える帰り道椋の若葉に風のささやき
2006-003:手紙(八慧)
高嶺ゆく五月の風をゼリーにし君に贈るとある古手紙
「フェート・シャンペートル」
2006-004:キッチン(八慧)
キッチンにワラビ・ゼンマイ・フキ・ヨモギ並べる君の野遊びの果て
2006-005:並(八慧)
風きって並んで走る初夏のグリーンベルトのレンタサイクル
2006-006:自転車(八慧)
デュエットし自転車で行く河堤指さす先に虹が大きい
「揺椅子」
2006-007:揺(八慧)
ひとひとよ揺ぎなきとや誓ひしもあだに散りぬることのはのうく
2006-008:親(八慧)
揺り籠に頬杖をつくしとね親ねんねこねんねこカナリアの歌
2006-009:椅子(八慧)
木漏れ日にきしむ揺椅子午後の風老ひゆける身や定めがたかる
「老桜」
2006-010:桜(八慧)
くちはてぬ老木の桜ふたたびの春にやあはむ猶や契らむ
2006-011:からっぽ(八慧)
からっぽの心で帰る夜の道月の光に桜葉濡れて
2006-012:噛(八慧)
葉桜の葉のぬれてゐて老いらくのなにやら疼く甘噛みの痕
「待つほどに」
2006-013:クリーム(八慧)
待つのは辛く斜め読みするウイークリームード音楽甘くても
2006-014:刻(八慧)
思ひ出を刻みし春は遠退きて浅間のけぶり低く匂へり
2006-015:秘密(八慧)
秘密なきふたりといへず待つほどになほ語りえぬ秘密膨らむ
「優しい朝」
2006-016:せせらぎ(八慧)
森深みせせらぎを聴くはつ夏の優しき朝に人声遠し
2006-017:医(八慧)
医心方解き明かしつも翻空蝶の影は遥かに遠のくばかり
2006-018:スカート(八慧)
スカートの襞の歪みが気になって駆け出していた朝が眩しい
「石楠花(しゃくなげ)」
2006-019:雨(八慧)
五月雨にぬれて草ふむ浅間裾けぶりの低く垂れこめてをり
2006-020:信号(八慧)
信号は黄色のままに世の中はあちらこちらで事故多発中
2006-021:美(八慧)
高原の石楠花は今陽を浴びて恨みの果てに美(い)しくも咲ける
「重き思ひ」
2006-022:レントゲン(八慧)
傷心の胸押し当つるレントゲン苦しき思ひ如何に映れる
2006-023:結(八慧)
陽の洩れて月日重ねし桜木の思ひ交はる結び葉の翳
2006-024:牛乳(八慧)
身に重き思ひ引きずる蝸牛乳色の跡は我が悔みなり
「緑の風と」
2006-025:とんぼ(八慧)
削っても飛ばないままの竹とんぼ緑の風と澄んだ空見る
2006-026:垂(八慧)
垂れ込める緑の枝の重なれる森をいできし風の香や濃き
2006-027:嘘(八慧)
秘め事の優しい嘘の匂い聞く絵日傘くるりひと回りして
「頭上の夏」
2006-028:おたく(八慧)
数奇者と呼ばるおたくの戸惑ひにアキバの夏は頭上に白し
2006-029:草(八慧)
刈り行けど夏草茂く空白く夢の跡など辿りてゐたる
2006-030:政治(八慧)
行く先の見定められず草茂り安倍の暴政治まらぬまま
「山深き町へ」
2006-031:寂(八慧)
雨の日の寂れた町にバス待てば相寄る傘の幻を見る
2006-032:上海(八慧)
はつ夏をわがものとする崖の上海を眺めて風になぶらる
2006-033:鍵(八慧)
安寧と静謐求め山深く分け入りたりし鍵要らぬ里
「糸繰草」
2006-034:シャンプー(八慧)
からっぽのボディーシャンプーひっそりと寂れた宿の風呂場にひとつ
2006-035:株(八慧)
苧環の株分けしたる一鉢は君が園生に今年咲けるや
2006-036:組(八慧)
繰りかへし織りし組紐君の手に巻く日を想ふ朝の静けさ
「薔薇」
2006-037:花びら(八慧)
雨に濡る薔薇の花びら艶めきて蛇の薄衣垣に残れり
2006-038:灯(八慧)
薔薇苑の隅の外灯ひとつ消え木の間に低き月影を見る
2006-039:乙女(八慧)
乙女らの巡れる園に笑ひ満ち老いの恨みは取り残されて
「越えてなほ」
2006-040:道(八慧)
九十九折幾つ越えたか峠道先見えずして輪廻彷徨ふ
2006-041:こだま(八慧)
耳澄ましこだまを聞くやほととぎす一声啼きて飛び立てるかな
2006-042:豆(八慧)
峠から遠く眺める伊豆の海沖の小島に波は見えない
「消えてなほ」
2006-043:曲線(八慧)
航跡の白い曲線やがて消え空の青さが風を染めてる
2006-044:飛(八慧)
はかなしと飛花落葉を歌へども思ひのたけはいまだ残れり
2006-045:コピー(八慧)
哀しみのコピーライトが堅いから嘆きはついに伝えられない
「別れ路」
2006-046:凍(八慧)
別れ路の君の言葉に凍え死ぬ心の隙に残る花影
2006-047:辞書(八慧)
我が辞書の「希望」の消えて夏空がひたすら青く広がっていた
2006-048:アイドル(八慧)
振り向けば沸き立つ雲にアイドルの真似したポーズよみがえる夏
「不安」
2006-049:戦争(八慧)
ブランコの下のくぼみがしっとり雨に潤ひ戦争の影
2006-050:萌(八慧)
あけぼのの脱ぎ滑 (すべ) したる薄衣に疑ひ萌(きざ)す仄かのにほひ
2006-051:しずく(八慧)
水底に影深くするしづく石黄泉の道にも夏草しげし
「取り残されて」
2006-052:舞(八慧)
縁側に並びて舞へる蛍見し夢も遥けくなりにけるかな
2006-053:ブログ(八慧)
閉鎖すも放置されたるブログには形見のごときコメント残る
2006-054:虫(八慧)
末枯るる蓼喰ふ虫も好き好きと後ろ姿の遠ざかる夏
「夏の夕」
2006-055:頬(八慧)
頬杖をやめても愁ひ消えぬまま蛙の声の天に響けり
2006-056:とおせんぼ(八慧)
蔓草のとおせんぼする裏庭に見る人のなき山百合の咲く
2006-057:鏡(八慧)
手鏡に浴衣の帯の黄を映し夏の雲行く夕景に立つ
「潜む想ひ」
2006-058:抵抗(八慧)
梅雨晴間母の遺せし布を裁つ抵抗感の心地よき朝
2006-059:くちびる(八慧)
くちびるの渇き潤す岩清水呑みてけものの声の漏れいづ
2006-060:韓(八慧)
韓藍の十四五本に励まされ想ひの燃ゆる深きくれなゐ
「舞ふ色に」
2006-061:注射(八慧)
診療所予防注射の列長く泣く子なだめて花の舞ひ散る
2006-062:竹(八慧)
クルクルと楓の赤い竹とんぼ舞って静かな風が吹き過ぐ
2006-063:オペラ(八慧)
夏の夜のオペラグラスにうつりゆくにほふが如き舞姫の影
「過ぎし日を」
2006-064:百合(八慧)
揺れつづく谷間の百合の心にて葉陰に湧きし清水汲みゐる
2006-065:鳴(八慧)
過ぎ去りし夏に鳴きしを懐かしみ山時鳥空に鳴くなり
2006-066:ふたり(八慧)
宙に浮くはかなき夢の影追ひしふたりの旅の思ひ出はるか
「面影」
2006-067:事務(八慧)
事務服を纏ひし君の若やげる笑顔の写真秘かに持てり
2006-068:報(八慧)
思はざる果報を待てど何事もなきこそ人の世の常ならめ
2006-069:カフェ(八慧)
カフェの灯に君が面影さぐりやる星夜の街の恋占師
「潜む思ひ」
2006-070:章(八慧)
玉章(たまづさ)におもひのたけをしるせしもなほこむる夜に潜むものあり
2006-071:老人(八慧)
酔ふほどに寿老人めく杖持ちて夏の夕べをさまよひてをり
2006-072:箱(八慧)
別れ路のかたみと頼る玉手箱潜めし思ひたくすあかつき
「占ひ」
2006-073:トランプ(八慧)
羅(うすもの)を着てトランプを並べゐる若きうなじに占ひの吉
2006-074:水晶(八慧)
水晶に映る若葉の影揺れて占ふ老女空見上げたり
2006-075:打(八慧)
筮竹(ぜいちく)を打つ音さゆる夏の宵当たらぬ八卦空頼みする
「アンニュイ」
2006-076:あくび(八慧)
燕の巣年経るままに乾きけりむなしく見上げあくびの漏るる
2006-077:針(八慧)
秒針の動かぬ夏の日は過ぎて逆に廻はすも再会のなき
2006-078:予想(八慧)
再会の予想当たらず頬ぬらすその夜の雨に涙まされる
「夕明かり」
2006-079:芽(八慧)
かそけくも夏芽の小さき花散りて薄き衣に月影宿る
2006-080:響(八慧)
哀しくも我が身一つぞふりゆくに心に響(とよ)む言の葉の彩(いろ)
2006-081:硝子(八慧)
風鈴の硝子打つ音の軒にあり懐かしき人去りゆける夕
「人待てど」
2006-082:整(八慧)
整ひし松の枝ぶり眺めつつ人待つ宵の月を見るかな
2006-083:拝(八慧)
拝殿に向ふ道沿ひ色淡き紫陽花群れて人待つここち
2006-084:世紀(八慧)
越えられぬ世紀末てふ退廃のいよよ深まりはや十九年
「梅雨晴間」
2006-085:富(八慧)
銀翼の下に富士の嶺眺めつつ梅雨の晴れ間の朝に旅立つ
2006-086:メイド(八慧)
メイドめく猫娘ゐて招きたり梅雨のさなかの鬼太郎の街
2006-087:朗読(八慧)
弁舌の言葉も意味も不明朗読み捨てにする日本の未来
「花嫁」
2006-088:銀(八慧)
唐織の金糸銀糸の打掛に負けじとえまふ若き花嫁
2006-089:無理(八慧)
無理せずに笑む花嫁の幼な顔緑に映えて薫風を呼ぶ
2006-090:匂(八慧)
緑陰の匂ふが如き花嫁の祖母なる人の眼の温かし
「喫茶店で」
2006-091:砂糖(八慧)
向かひ合ふ茶店の午後は言葉なく匙よりこぼれ砂糖溶けゆく
2006-092:滑(八慧)
滑りゆく時の証しに木漏れ日のやがて消えたる陰に残さる
2006-093:落(八慧)
落ちてゆく身を哀しまぬ夕暮にもだすふたりはいつかとくべき
「悔い多く」
2006-094:流行(八慧)
歌もなほ流行り廃りのあるやらむ人に知られず歌口遊む
2006-095:誤(八慧)
誤りの多き人生悔やめども逢ひたることはこよなき恵み
2006-096:器(八慧)
ふたりして冷やし善哉たのみけり白き器に白玉白し
「時の移ろひ」
2006-097:告白(八慧)
年ふるに額紫陽花の色褪せて忘れられつや告白の日は
2006-098:テレビ(八慧)
山深き里にはテレビ映らぬと語らひ長き山荘の夜
2006-099:刺(八慧)
言の葉は時空を超えて真っ先に歌読む人の心刺すべし
「七夕に願ふ」
2006-100:題(八慧)
七夕に願ふと題し詠み終える百首の想ひなほ終はりなし
]]>
題詠100首2019「巡り逢う日に」
http://asitanokum.exblog.jp/27572290/
2019-04-30T06:33:00+09:00
2019-04-30T06:33:53+09:00
2019-04-26T15:44:38+09:00
asitanokumo
題詠まとめ
2019年の題詠100首お題は、「文語口語にとらわれず八慧の名で、「巡り逢う日に」と題して、そこはかとなく「和泉式部日記」をペースにして詠む」という心づもりで歌いだした。
「巡り逢う日に」
「梅探る」
2019-001:我(八慧)
夢よりもなお儚いと知っててもまた来た春に我慢ができない
2019-002:歓(八慧)
再びの巡り会う日を夢に見て秘かに洩らす歓びの声
2019-003:身(八慧)
老い兆す身を包む香は懐かしい人思い出させる里の梅
-2-17
「囀りは春の空へ」
2019-004:即(八慧)
おなじ枝におなじ声して啼く鳥に即興の歌呟いてみる
2019-005:簡単(八慧)
簡単に言葉にしてはいけないと判っていても叫びはもれる
2019-006:危(八慧)
危ぶんでながめ過ごしたひととせの苦しい心を空へ放とう
-2-19
「甲斐なくも猶」
2019-007:のんびり(八慧)
甲斐のない短歌記してつれづれを誤魔化しながらのんびり生きる
2019-008:嫁(八慧)
慰めに嫁菜摘みては野に遊ぶ身の憂きことを言ふかひもなく
2019-009:飼(八慧)
寝しづまる蚕飼ひの村に星流れなにをか後の世語りにせし
-2-21
「羽化登仙の風吹けど」
2019-010:登(八慧)
待ち望む羽化登仙の風吹いてあだなる色がなびき乱れる
2019-011:元号(八慧)
新しき元号の時代(とき)恃めども「安・晋」あらば日本を捨てむ
2019-012:勤(八慧)
春の月おぼろにかすみ老いの目に勤(いそ)しむことのはのたよりなし
-2-23
「春うらら」
2019-013:垣(八慧)
春の陽の照れる垣穂に花匂ひ懐かしみつつ影を尋ぬる
2019-014:けんか(八慧)
なが影の行きけんかたをながめつつ梅にうつろふこゑをしのびぬ
2019-015:具(八慧)
繰り返す「武具馬具武具馬具三武具馬具」早口ことばの口元をかし
-2-25
「春に酔う」
2019-016:マガジン(八慧)
春風に話のはずむカフェテラス洒落たマガジン傍らに置く
2019-017:材(八慧)
教材の恋歌に酔う女生徒のまなこの雫春の匂いす
2019-018:芋(八慧)
芋虫が蝶となる日を夢に見てなれないままに蠢いている
-2-27
「恨みの影に」
2019-019:指輪(八慧)
しのび音をいつか聞かむかけふすぎてあふ時もなく指輪ゆるびぬ
2019-020:仰(八慧)
苦しくも木高き声を仰ぎゐてあはで明かせるよを恨みけり
2019-021:スタイル(八慧)
よとともに物思ひつつ眠れぬもこれが私のライフスタイル
-3-1
「すれ違い」
2019-022:酷(八慧)
冷酷な言葉残して立ち去った影に向かって投げ打つ小石
2019-023:あんぱん(八慧)
喧嘩して別れた後は不貞腐れあんぱん頬張り泡盛がぶ飲み
2019-024:猪(八慧)
立ったまま利き猪口握り涙ぐむ男の肩に花びらがある
-3-3
「しのび音」
2019-025:系(八慧)
しのび音に懸想の系譜たどる春世にかくれつつけふもすぎけり
2019-026:飢(八慧)
春や過ぐ木高き声は聞けぬまま飢うる心の苦しきものを
2019-027:関係(八慧)
いさやまだ知らざりしかなこの果てにかかる難関係り合ふは
-3-5
「追憶」
2019-028:校(八慧)
夕暮るる校舎の陰に佇みて物思へどもよる人もなく
2019-029:歳(八慧)
歳老いし美婦の春愁息かけて拭く姿見に遠き日の影
2019-030:鉢(八慧)
待たましもむかしの縁(えにし)懐かしみ手に取る古き藍絵の小鉢
-3-7
「おぼつかなくも」
2019-031:しっかり(八慧)
をりすぎてしつかり立ての励ましに今宵あやめのねをぞかけなむ
2019-032:襟(八慧)
春宵の襟あしの艶高き香にいと恋しきとけふはまけまし
2019-033:絞(八慧)
ストールはふんわり藍の絞り染め風棲まはせて春野に踊る
-3-9
「開かない戸」
2019-034:唄(八慧)
開かざりし真木の戸ぐちに立ちつくし別れ唄めく風の音を聴く
2019-035:床(八慧)
いかでかは臥床つめたく夜の過ぎぬつらき心のありなしの見ゆ
2019-036:買い物(八慧)
春色のマーガレットの鉢を買い物の音聴いてひとりを過ごす
-3-11
「長雨」
2019-037:概(八慧)
くるしくも既成概念飛び越えて君や渡らむけふのながめを
2019-038:祖(八慧)
みをしるや祖霊まします大川のけふのながめにみずのまされる
2019-039:すべて(八慧)
ぬれぬれのつらき思ひぞ夜をすべて窓打つ雨の音を聞きける
-3-13
「あかつき」
2019-040:染(八慧)
暁のあかぬ別れや露に濡る草の葉に見る藍染の色
2019-041:妥(八慧)
よひごとになじみはすとも妥(おだ)やかに死する思ひを君や知らざる
2019-042:人気(八慧)
人気なき山の湯宿のあかつきのをりふし知らぬにくき囀り
-3-15
「細き春月」
2019-043:沢(八慧)
夕暮れて沢音響く浅き春出づる思ひの月なのめなり
2019-044:昔(八慧)
昔見し月ぞと思ひながむれど目は空にして心まどへり
2019-045:値(八慧)
千金の値をつけし宵なればやさしき人にミモザ贈れり
-3-17
「よみがえる昔日」
2019-046:かわいそう(八慧)
目を凝らすキラキラ光るすんだかわいそうな魚は何なのでしょう
2019-047:団(八慧)
春の日の幼い頃の思い出がお布団の中で繋がっていた
2019-048:池(八慧)
池の辺に寄り添う鴨の影揺らし春の夕陽は沈んでいった
-3-19
「つらしともまた」
2019-049:エプロン(八慧)
三つ編みを前に垂らしたロリータの胸当てエプロンフリルが揺れる
2019-050:幹(八慧)
月照らす桜の幹の肌触りとまれかうまれうらみ絶えせず
2019-051:貼(八慧)
貼り替えた障子に映る月影に経がたき春のすむをうらみぬ
-3-21
「涙の露」
2019-052:そば(八慧)
そばめたるなが手のはらふ草の露つつめる袖のまづしをれけり
2019-053:津(八慧)
さそはれて河津桜の並木行く梢に月の影おぼろなり
2019-054:興奮(八慧)
興奮のなほ冷めやらず帰る道濡れたる袖にしみる月影
-3-23
「逢えないままに」
2019-055:椀(八慧)
塗り椀のぼかしの揃ひ購へど贈る時なく春の過ぎ行く
2019-056:通(八慧)
いつよりか通ふこころのすれ違ひ逢へないままに桜咲き満つ
2019-057:カバー(八慧)
浮世絵のブックカバーを忍ばせて旅にでる日に思いをはせる
-3-25
「うらみ絶えせず」
2019-058:如(八慧)
うつつよに如何にせむとや生まれけむうらみ絶えせぬ仲を嘆けり
2019-059:際(八慧)
月澄むを誰に告げむとつれなくも又ひと際の思ひそふ宵
2019-060:弘(八慧)
遠かると見に行かれぬも弘前の桜並木に月やすみける
-3-27
「散り初む花に」
2019-061:消費(八慧)
あの恋の消費期限は切れたのか問えば桜のはや散り初むる
2019-062:曙(八慧)
いく世しもあらぬわが身や散り初むる花にたのめる曙の空
2019-063:慈(八慧)
惜しみなく舞ふをながむる眼差しに深き慈悲あり風に色あり
-3-29
「よいしょの咎」
2019-064:よいしょ(八慧)
元号に「安」「信」説きてよいしょせる咎重くして花や散りゆく
2019-065:邦(八慧)
あなたには通りすがりの異邦人でもサヨナラの返事は欲しい
2019-066:珍(八慧)
大和路に珍(うづ)の御歌の文字さぐりそぞろありきて人偲びたり
-3-31
「袖の氷」
2019-067:アイス(八慧)
融けてゆく愛を検証するようにロックアイスでグラスをビート
2019-068:薄(八慧)
薄氷(うすらひ)の吹かれ融けゆく如くして消ゆる想ひのうすがすむかな
2019-069:途(八慧)
融けゆけば冥途の土産にもならぬ袖の氷は知る由もなき
-4-2
「過ぎていく春」
2019-070:到(八慧)
哀しみの思ひ到れる春の果て止まった時はもう動かない
2019-071:名残り(八慧)
あかなくも名残の花の雨雫哀しき色に仄か染まりぬ
2019-072:雄(八慧)
雄弁に語れぬままに宵過ぎぬ雲居の月に誘はれしかど
-4-4
「思ひきや」
2019-073:穂(八慧)
鶯の垣穂に鳴くや尺八の音を合はするに子猫あそべる
2019-074:ローマ(八慧)
表札のローマ字綴り新しく人待ち顔に花陰の濃し
2019-075:便(八慧)
ゆき違ふ春のもの憂き片便り忌まるばかりと空をながめつ
-4-6
「ひとよ」
2019-076:愉(八慧)
逢ふも愉しわかるも愉しひとよとてうつろふべしや夢をたのみに
2019-077:もちろん(八慧)
かくてしももちろんなりとひとのよは心ぞそらになりぬべらなる
2019-078:包(八慧)
春うれふ思ひ包みてふくるよの猶つらかれと月の細かる
-4-8
「感傷旅行」
2019-079:徳(八慧)
尋ねつも花や散りたる背徳のあふ坂越えず遠き里山
2019-080:センチ(八慧)
散るまでは花の匂ひを思ひやりかたらはぬままセンチメンタルジャーニー
2019-081:暮(八慧)
花見むと契りし人と散る花の里に行きたき春の暮れ方
-4-10
「待ち侘る来信」
2019-082:米(八慧)
恨みこし人の心や小米花散り敷く庭に人は来たらず
2019-083:風呂(八慧)
空になる人のこころは見上げたる風呂屋の旧き煙突の先
2019-084:郵(八慧)
行く春の夢にぞ見ゆや待ち侘る郵便受の白き封筒
-4-12
「迷ひ路」
2019-085:跳(八慧)
跳び越ゆる渓の深きは知られねどいざよふ月を待ちわたるかな
2019-086:給料(八慧)
つらき夜の迷へる街に呼び招くカッフェの女給料理片手に
2019-087:豊(八慧)
影恋ふに豊旗雲に入日さし又ぬれそひてまどふ路かな
-4-14
「巡り会ふ幸」
2019-088:喩(八慧)
儚きも露とひとしき身にあれば何に喩へむ巡り会ふ幸
2019-089:麺(八慧)
わが罪の重きを知れり巡り会ふ幸の香りか焼きたての麺麭(パン)
2019-090:まったく(八慧)
まったくの嘘とは言へぬ約束が夜明けの空にだんだんかすむ
-4-16
「行く春を惜しみ」
2019-091:慎(八慧)
乙女らの慎ましく踏む花の塵振り返りてはまた惜しみけり
2019-092:約束(八慧)
稲熟れし頃の約束守られずやがてうつろひさよならの時
2019-093:駐(八慧)
八穂蓼の歩を駐(とど)むるや逢坂のたまのゆくゑをみぬぞかなしき
-4-18
「夢路の闇」
2019-094:悟(八慧)
悟るべき行く手こそみめ迷ひこし夢路のやみになほまよひゐて
2019-095:世間(八慧)
世間(よのなか)はいつかは夢と思ひつもうき身ひとつをいづち置かまし
2019-096:撫(八慧)
撫で擦る鬚の白きを憂ひつつ光なき世をあるにまかせつ
-4-20
「光は見えず」
2019-097:怨(八慧)
春ゆけばつらき心をおくの海のうらの浜ゆふ怨みつつ老ゆ
2019-098:萎(八慧)
萎え萎えの身をぞ恨みて逢坂の我が行く果てに光の見えず
2019-099:隙(八慧)
花垣の隙(ひま)行く駒や実のならぬ八重山吹の色に惑ひぬ
-4-22
「新緑」
2019-100:皆(八慧)
七重八重しだれし花の皆散りて若き緑の風に包まる
2019-101:平成(八慧)
九重に平成惜しむ飛花落花いくさなき世を何に頼まむ
2019-102:昭和(八慧)
十重二十重昭和の香りいまだ濃き温泉町に散る八重桜
-4-24
「立往生」
2019-103:大正(八慧)
賑はひし大正月の過ぎ行きてひとり疲れてけふ小正月
2019-104:明治(八慧)
落ち合ひて花を訪ぬる明治村教会堂にカリヨンの鐘
2019-105:慶応(八慧)
矢を受くもひとり弁慶応戦し立往生せし地にひとり立つ
-4-26
「覆水を盆に返さむ」
2019-106:万延 (八慧)
引き分けは笑止千万延長戦首長くして相方を待つ
2019-107:応仁(八慧)
忍びつついくたびあふにこれきりと拒絶反応仁義立たざり
2019-108:延暦 (八慧)
咲きし日は戻らなくても約束は雨天順延暦に記す
-4-28
「あるがままに」
2019-109:天平(八慧)
寿ぐやふりてはいよよ新しき九重の天平和願ひて
2019-110:大化(八慧)
わが心公明正大化粧なく素顔のままに放蕩詠ふ
2019-111:令和(八慧)
歌の材仮令和泉式部日記と定めしもなほ夢は叶はず
-4-30
2019-完走報告(八慧)
とりあえずという形で完走。3首づつ37組の111首となり、意図したわけではないが、平成を締めくくるものになった。
当初の「そこはかとなく「和泉式部日記」をペースにして」という目論見は、道半ばで破綻していた。
]]>
王朝風和歌100首
http://asitanokum.exblog.jp/27443712/
2019-02-15T05:55:00+09:00
2019-02-15T06:06:43+09:00
2019-02-15T05:55:01+09:00
asitanokumo
季節の歌
冬に入るもみぢ葉を散らす時雨の音寂しふりゆく身にも冬のきにける 横雲 1水鳥は冬に入りたる池のおもうきねをぞなく恋をするかな 横雲 2-11-8
片時雨もみぢ葉に降りみ降らずみ片時雨ぬるるおもひや袖の染まりぬ 横雲 3ふりそめて袖に時雨るる神無月むかしをこふる色やまされる 横雲 4-11-10
姫椿薄紅のいつ咲きたるや姫椿月の明かりに濡れて染まりぬ 横雲 5あふ人のなきまま時のうつろふもみそかに咲ける姫椿かな 横雲 6-11-12
思ひ草紫の露に濡れたる思ひ草思ひの色のいよよ濃くせる 横雲 7人知れずしぼる涙に思ひ草思ひの色に染めらるる秋 横雲 8-11-14
小春の空風の無き小春日和の心地よく深山に敷ける錦踏みゆく 横雲 9行く末の知れぬ定めをいとほしむ小春の空に雲は流るる 横雲 10-11-16
冬の半月更け行けば光も色も寂しさもひとしほさゆる冬の半月 横雲 11見あぐれば冬の半月身にしみてはかなき夢のえやは忘るる 横雲 12-11-18
小夜時雨しほたるるひとり旅寝の小夜時雨薄き衣にうき世歎きつ 横雲 13音に聞く老のね覚の小夜時雨夢の跡なる袖や濡れたる 横雲 14-11-20
夫婦の日年ふりてめをとを祝ふ日の朝は老ひゆく身をばかこつ朝なり 横雲 15小雪舞ひ冬仕度する夫婦岩寄する白波千世の数かも 横雲 16-11-22
冬紅葉いかにせむ静けき雨に冬紅葉忍ぶにあまる色濡らしつる 横雲 17色染めて冬のもみじ葉濡らしゆく時雨にまさるわが涙かな 横雲 18-11-24枯葉降り積める枯葉踏む音哀しみて寝待の月の影のこほれり 横雲 19冬来ぬと枯葉を飛ばす風の音のうらみてもなほ身にしむるかな 横雲 20-11-26
落葉道うづもるる落葉の道を踏み行くやうつつか夢か心迷へる 横雲 21木枯しの風の音聴き落葉掃く恋しきことの数かぞへつつ 横雲 22-11-28
冬の日老ゆけば恋つつ暮るる冬の日の温き光の手に零れ満つ 横雲 23暮れやすき日のひねもすをかこちつつあかぬ心はひと待ちかぬる 横雲 24-11-30
葉の露木の下の露の氷れるあさまだき物思ふ人の影やかそけし 横雲 25露置ける森の下葉に寂しさの面影残し人の去りゆく 横雲 26-12-2
裸木木の葉なき枝にむなしく流れゆく雲に紛へるわが想ひかな 横雲 27裸木となれる大樹の影の濃くこの通ひ路に年のふりゆく 横雲 28-12-4
冬の朝さらでだにうきの身にしむ冬の朝垣穂の君の影のかなしき 横雲 29冬の朝なほ色増せる葉に透ける光に定なき世を愁ふ 横雲 30-12-6
木枯し音高く落葉を舞はす木枯しのむせぶ思ひや色のつれなし 横雲 31手枕にしるく聞こゆや音高く何ぞかなしも夜半の木枯し 横雲 32-12-8
冬三日月夢なれや冬の三日月残る朝思ひたゆとも影の恋しき 横雲 33冬雲の切れ間にほのか三日月の反りて寒さの冴え返りたり 横雲 34-12-10
寒風凍て風の音聴く夜半や寝覚めして思ひ定めぬ身のうかりける 横雲 35風寒みこほれる想ひ掛けとどめ細かる月にいのち頼めり 横雲 36-12-12
鐘氷るほの聞こゆ鐘冴ゆる朝恃めども老のね覚めの憂き身かこてり 横雲 37ひとりぬる枕に朝の鐘氷るうき世の夢の見果てぬままに 横雲 38-12-14
師走の月影さむきしはすの月の細かるに遥か雲居の君恃むかな 横雲 39色寒み残りすくなき日を数へ細かる月に夢を恃みぬ 横雲 40-12-16
ゆり鴎都鳥ひとひ川面を眺めつつうきを知らでや年のふりゆく 横雲 41夢ぬちに影のかそけくゆり鴎いかでかひなきあふ瀬にうきぬ 横雲 42-12-18
虎落笛(もがりぶえ)夕暮のまろき月影虎落笛残る色なき梢に冴えて 横雲 43きこゆるは身にしみわたる虎落笛悶えこがるる冬のいたまし 横雲 44-12-20
冬鳥短日の淵瀬つたひて行く波に暮れゆく年の冬鳥の影 横雲 45
嘴を胸に埋めし寒禽のふかき思ひを誰ぞ知るらむ 横雲 46-12-22
冬薔薇ほんのりと淡き色なり冬薔薇残る命を光にゆだぬ 横雲 47萎れたる薔薇の実冬の空にありあだなる物といふべかりけり 横雲 48-12-24
霜霜晴の眩しき空に風のありちぎりの袖に木の葉の散りて 横雲 49散れる葉の色そめかへす今朝の霜わか言のはの色やかはらぬ 横雲 50-12-26
薄氷(うすらひ)池水の泡をやどせる薄氷のあやふき想ひやがて消ゆるも 横雲 51薄氷をつつきて知るや今朝の冷え人の心のたのみがたきも 横雲 52-12-28
小晦日(こつごもり)来る春を待つも嬉しき小晦日こころ交はすや老い重ねつも 横雲 53眺めつつやすらふ程に小晦日昔を今に思ひなしつつ 横雲 54-12-30
年立ちかえるあら玉の年たちかへる朝の空思ふ心のかぎりなきかな 横雲 55病む翳を隠す如くもひそやかに白梅咲けるあらたまの年 横雲 56-1-2
初夢日ノ本の落つるを知るもとどめ兼ねひたすら落つや初夢の憂き 横雲 57初夢の覚めておぼろにはかなくもうつつのやみに惑ひぬるかな 横雲 58-1-4
寒の入りあからひく霜白き朝寒に入るおもふものから我身むなしき 横雲 59うすらひの色確かむる寒の入り結ぶ思ひのとくるをうれふ 横雲 60-1-6
松明けふればこそ恋しかりけれうき雲の峰にわかるる松明けの空 横雲 61豊御酒のゑひ醒めてこそ松過ぎの色香の見えてうれしかりけれ 横雲 62-1-8
冬三日月山の端に鋭く冴えて光りつつ心にぞ入る冬の三日月 横雲 63面影を冬三日月に恃めども巡りあふ身の細きや哀し 横雲 64-1-10
寒烏風渡る梢の孤影寒烏翼垂らして一声啼きぬ 横雲 65大ぶりの冬の烏の影ひとつ梢にありて日の暮るるかな 横雲 66-1-12
寒の水掌に掬くへば痛き寒の水世の行く末の闇に迷ひて 横雲 67腑に沁みて寒九の水と知られける老いらくの身に嘆き重ぬも 横雲 68-1-14
春を待つ老いの身のね覚に春を待つここちして月影はあり明の空 横雲 69
年ごとのたより途切れて梅蕾色のかたきや春遠くして 横雲 70-1-16
冬日向冬の日を肩に受けつつかれがれの道に佇み哀しきを知る 横雲 71一匹の猫眠りゐる冬日向身をうきものとかこつべらなり 横雲 72-1-18
冬の夜冬の夜の光さやかに零れ敷く何恨みてや泪の散れる 横雲 73春恋ふる心を知るや冬の夜の梢にしるく月冴えわたる 横雲 74-1-20
実万両隠栖のひそかに赤き実万両ひとりぬるよの身のかひもなく 横雲 75数ならぬ身の嘆きかな万両の残りたる実や涙の赤し 横雲 76-1-22
春いまだ水鳥のうきねをなくとしるらめや春の遠きを澄む空に見て 横雲 77唇に風の冷たく春いまだ梢に椋の啼く声もなく 横雲 78-1-24
冬銀河冬銀河低き山並みしたがへて澄める光のいよよ増したり 横雲 79風寒み祈りて仰ぐ冬銀河雲ゐに花のいつや咲かまし 横雲 80-1-26
唐梅(からうめ)唐梅に春のきぬるや咲きにけるやがて暮るるも待ち人は来ず 横雲 81臘梅の咲くや日溜まり人去りて偲ぶ思ひの色に濡れける 横雲 82-1-28
狐火老いゆくや青き狐火並びたる闇に惑ひし夢覚めずして 横雲 83狐火のしのび逢ふ夜の思ひかな消えたるあとに影のかひなく 横雲 84-1-30
探梅行年ごとの梅の香りを探りゆく旅寝の夢に逢ふこともがな 横雲 85梅探る夢路をかけて匂ふ風むすぶともなく枕に消ゆる 横雲 86-2-1
節分老いゆけば追儺の声にしはぶきぬ行く方のなき鬼神のごとく 横雲 87
しらぎぬに風やはらかき節分会待ちてし春は巫女の手にあり 横雲 88-2-3
野火堤焼く煙棚引く春の野はながなをたのみ下もえわたる 横雲 89野火消えし野を佇みて夕暮るる忍ぶ思ひの色を残して 横雲 90-2-5
春生りて薄紅にほころぶ蕾春生りてことばの花のいづち咲くらむ 横雲 91しるらめや待つとしもなく老い楽の春を重ぬる下萌えの色 横雲 92-2-7
水の春生まれてはたゆたふおもひ水の春角組む荻に光のどけし 横雲 93春の水ながるる音の細かるも色やはらかに草の萌えいづ 横雲 94-2-9
淡雪ふるほどに木の芽につもる淡雪のこころなりせばうちとくるかな 横雲 95逢えぬままふりゆく春の淡雪につもる思ひを忘やはする 横雲 96-2-11
春浅し袖濡らす雪には春の匂ひして世にふる老の寝覚哀しも 横雲 97春浅き空よりおつる淡雪の色にまがへる匂ひかそけし 横雲 98-2-13
風船風無きに紙風船のいぶかしく揺るるともなく手よりこぼれし 横雲 99色淡く空にとけゆく風船のあはれとみえて春を恨みぬ 横雲 100
その時々の季語を題にして王朝風和歌100首を詠もうと始めたのが、昨年11月8日。詠んでるうちにテーマを見失ってしまったようだが、とりあえず「100首」になったので終了とする。100日など瞬く間に過ぎるこの頃である。-2-15
]]>
題詠2005
http://asitanokum.exblog.jp/27203484/
2018-11-06T06:16:00+09:00
2018-11-05T21:25:26+09:00
2018-11-05T21:19:34+09:00
asitanokumo
題詠まとめ
2005-参加表明(八慧)
2004年のお題が詠み終えたので、2005年に挑む。
八慧の名で現代短歌風を試みたいと思うが、どうなるやら、・・・。
2005-001:声(八慧)
かげろうを摘まべば薄い声の色総身に沁みて閨の灯を消す
-9-1
つぼみ
2005-002:色(八慧)
秋薔薇のつぼんだ色が濃くなって冷たい雨が明日を濡らす
2005-003:つぼみ(八慧)
陽に染まり淡く色づく秋つぼみ咲く花数をそぞろに拾う
2005-004:淡(八慧)
濃く淡く交わり重ね変容の色香に今朝もせつなくなって
-9-3
異層を探る
2005-005:サラダ(八慧)
色鳥の啼いてはばたく朝の身にサラダのような高原の風
2005-006:時(八慧)
穢れつつ共に滅びる時来たる相対死になれない身にも
2005-007:発見(八慧)
埋もれた断章胸に発見し過ぎさる時の異層を探る
-9-5
一人旅
2005-008:鞄(八慧)
一人旅鞄の奥に秘めている惑いの熱は解き放てずに
2005-009:眠(八慧)
山深い村は眠りぬおぼろ夜に蠢くものを不問に付して
2005-010:線路(八慧)
山峡を縫って線路はしなやかにあなたの町をかすめて過ぎる
-9-7
秋の夜
2005-011:都(八慧)
ニードルが貫く水がきらめいて都合の悪い秋を見破る
2005-012:メガホン(八慧)
対岸の火事を知らせるメガホンも役立たないまま透き通る秋
2005-013:焦(八慧)
焦がれ死に出来ないでいて秋の夜のずれたままなるフォーカスポイント
-9-9
生の果て
2005-014:主義(八慧)
主義もなく流されてきたわが生が終の敵に糾弾される
2005-015:友(八慧)
晒される友禅模様を打つ時雨旅が冷たく果てて夕暮
2005-016:たそがれ(八慧)
魂を揺るがす風になぶられて芒の原に迫るたそがれ
-9-11
風を嗅ぐ
2005-017:陸(八慧)
浜に出て吹き来る陸の風を嗅ぐ真夏の夜の夢の続きに
2005-018:教室(八慧)
廃校のすっからかんの教室に消されないまま落書残る
2005-019:アラビア(八慧)
なれはわがシェヘラザードと微笑んでアラビア夜話に想いを託す
-9-13
月影
2005-020:楽(八慧)
待つほどに雲居流れる秋の夜の月影薄い失楽の園
2005-021:うたた寝(八慧)
うたた寝を覚ます浮世の辛い夢冷たく笑う月がぽっかり
2005-022:弓(八慧)
弓張の月傾いてあわあわの木立の影に誘われている
-9-15
秋の風
2005-023:うさぎ(八慧)
耳たてる月のうさぎが呼んでいる光の中へ団子供える
2005-024:チョコレート(八慧)
森抜ける涼しい風にチョコレート分け合う朝がはためいている
2005-025:泳(八慧)
ゆるやかに波立つ空に泳ぐ影眺めて歩くほろ酔いの宵
-9-17
秋の朝
2005-026:蜘蛛(八慧)
木漏れ日の影を絡めてほの揺れる蜘蛛の囲飾る露の輝き
2005-027:液体(八慧)
液体のように流れる薄明かり陸橋越えてはるか東雲
2005-028:母(八慧)
草を刈る母刀自偲ぶ木暗がり幾つの秋がうつろい過ぎる
-9-19
生酔い
2005-029:ならずもの(八慧)
逢えぬまま過ぎ行く秋は夢ならずもの言う花の色香遠退く
2005-030:橋(八慧)
思川越えてジョー呼ぶ泪橋渡りきれない純情ひとつ
2005-031:盗(八慧)
新走り味見す吾は老厭う命盗人今日も生酔い
-9-21
秋風索漠
2005-032:乾電池(八慧)
古玩具裏側二列乾電池曲立不動秋風索漠
2005-033:魚(八慧)
哀しくて灯をともす秋ともすれば泪一滴秋刀魚は美味い
2005-034:背中(八慧)
始まらぬ恋に終わりはないんだと立ち去る君の肩に秋風
-9-23
夢の夢
2005-035:禁(八慧)
爛熟の木の実を盗む夢の夢逢えない時の禁断症状
2005-036:探偵(八慧)
探偵が切り開く闇おどろしく読まずに閉じるクライマックス
2005-037:汗(八慧)
汗ばんだ肌のぬめりを拭きとって苦しい夢をさますきぬぎぬ
-9-25
淡い色は
2005-038:横浜(八慧)
さりげなく握れば指は冷たくて宿の灯濡れる横浜の秋
2005-039:紫(八慧)
なつかしい淡い色ある姫紫苑夕べの野辺にすこやかに咲く
2005-040:おとうと(八慧)
横にいる仲良いめおとうとましく月の浜辺の宴を抜け出る
-9-27
吟遊詩人
2005-041:迷(八慧)
残された謎めく言葉思い出し宙ぶらりんの心の迷い
2005-042:官僚(八慧)
終焉を迎える時も無位無官僚友頼みの遊びの結末
2005-043:馬(八慧)
馬酔木咲く野辺を彷徨い遥かなるトルバドゥールの歌声を聞く
-9-29
秋雨に濡れて
2005-044:香(八慧)
濡れそぼち黙してふたり京洛の秋の色香を訪ね行く旅
2005-045:パズル(八慧)
二人して解けないパズル放り出し色づく秋に濡れていた旅
2005-046:泥(八慧)
白々と果てたこの世を厭いつつ泥水蹴立て走り込む宿
-10-1
秋の色増す
2005-047:大和(八慧)
大和路に秋深まってつやつやと柿の実熟れて枝はたわわに
2005-048:袖(八慧)
逢う夜半の風引き入れて袖裏の紅葉の色がほの匂い立つ
2005-049:ワイン(八慧)
秋更けて赤ワイン酌む朧夜はアスパラガスに生ハムを巻く
-10-3
月待ちて
2005-050:変(八慧)
一夜花心変わりか秋の宵咲かないままに月待ちかねる
2005-051:泣きぼくろ(八慧)
月を待ち笑う少女の泣きぼくろ待宵草がもうすぐ開く
2005-052:螺旋(八慧)
幹を捲きのぼる螺旋の蔦紅葉夕焼け色を夜に残して
-10-5
ミステリー
2005-053:髪(八慧)
束ね髪するっと放つ夕間暮れ秋の蛍が消えて薄闇
2005-054:靴下(八慧)
闇ほのかあっけらかんと女生徒の黒靴下が脱ぎ棄てられて
2005-055:ラーメン(八慧)
ラーメンの屋台の笛が遠ざかりミステリーめく夜が深まる
-10-7
高原の秋
2005-056:松(八慧)
落葉松の林を過ぎて秋風の音は優しい色に染められ
2005-057:制服(八慧)
制服の少女が走り去った後花野の道に秋が深まる
2005-058:剣(八慧)
鴛鴦の思いの色か剣羽 (つるぎば)が秋の陽受けて水脈輝かす
-10-9
三品それぞれ
2005-059:十字(八慧)
十字切る女の肩に夕陽差し棚引く雲が血の色になる
2005-060:影(八慧)
ゆらゆらと岸の紅葉が枝伸ばす水面に風の影が色づく
2005-061:じゃがいも(八慧)
しゃがいもの和風洋風中華風好みに合す料理三品
-10-11
秋の暮れ
2005-062:風邪(八慧)
風邪心地深まる秋のほつれ毛に言うに言われぬ微熱の悶え
2005-063:鬼(八慧)
挨拶におそれ入谷の鬼子母神びっくり下谷と返される朝
2005-064:科学(八慧)
理科学ぶ教室にある骸骨が白衣を着けて夕日を浴びる
-10-13
街の灯消えて
2005-065:城(八慧)
月残る城址に秋の音さやぎ虚しく枯れるこの世を嘆く
2005-066:消(八慧)
街の灯が消えてかなしく川の音ささやく宿に影うつくしむ
2005-067:スーツ(八慧)
新調の秋のスーツを身にまといスカート丈を少し縮める
-10-15
送別
2005-068:四(八慧)
別れ際泪隠して見つめあう四丁目角の夕日が赤い
2005-069:花束(八慧)
抱くほどの花束渡す別れの日微かに遠く子守歌聞く
2005-070:曲(八慧)
手を振って角を曲がった後ろ影あの日のままに君は手を振る
-10-17
クラス会
2005-071:次元(八慧)
同窓会式次元気に締めくくり再会誓う二年後の喜寿
2005-072:インク(八慧)
思い出のグラスに注ぐ白ワインクラス会から帰った夜に
2005-073:額(八慧)
思い出は刈られないまま額の花枯れて侘しく秋風の中
-10-19
夢の続き
2005-074:麻酔(八慧)
開け胡麻酔って夜中に閉ざされた扉に向かい呟いていた
2005-075:続(八慧)
昨夜見た夢に続きがあったとて思案に余る今日の吉凶
2005-076:リズム(八慧)
菜を刻むリズムに夢がまぐれゆきけだるい朝の眼裏(まなうら)に舞う
-10-21
抱き枕
2005-077:櫛(八慧)
置き去りにされても残るウェットな手櫛で梳いた髪の感触
2005-078:携帯(八慧)
誘われて俳句必携帯びる旅ホテルの裏の灯しがかすむ
2005-079:ぬいぐるみ(八慧)
抱き枕長い大蛇のぬいぐるみくねくねとして足に絡まる
-10-23
秋日和
2005-080:書(八慧)
書きさしのメール消せずに時流れ往還のない空はピーカン
2005-081:洗濯(八慧)
買い換えた優しい声の洗濯機呼ばれるままの洗濯日和
2005-082:罠(八慧)
透き通る青い空には手の込んだ甘い罠など隠せはしない
-10-25
高原
2005-083:キャベツ(八慧)
高原のキャベツ畑を駆け抜けた朝の陽射しは夏の味して
2005-084:林(八慧)
とぼとぼと林を抜けて見かえれば広い裾野は錦衣を纏う
2005-085:胸騒ぎ(八慧)
崩壊の胸騒ぎして目覚めれば落葉松散らす風のいきづき
-10-27
天高し
2005-086:占(八慧)
この秋を独り占めする山頂に吹き上げてくる錦繡の風
2005-087:計画(八慧)
今の世は百年の計画けずに人の育たぬ為政の暗愚
2005-088:食(八慧)
小輩は衣食足りても恥知らず不平鳴らして天に唾する
-10-29
別れたのちに
2005-089:巻(八慧)
別れ際巻き戻してる思い出は出逢った頃の泪と笑顔
2005-090:薔薇(八慧)
立ち去った人の形見か本棚に枯れた白薔薇飾られたまま
2005-091:暖(八慧)
加賀染めの暖簾くぐれば茶屋街の夢幻世界へ登る階段
-10-31
傷の疼き
2005-092:届(八慧)
身を焼いた治りかけてる痒い傷疼いていても手が届かない
2005-093:ナイフ(八慧)
砂浜て拾ったナイフ錆びていて昔の傷が疼いたりする
2005-094:進(八慧)
大荒れの苦海の波にもまれつつ進んだ先に浄土はなくて
-11-2
色ながら散る
2005-095:翼(八慧)
風そよぎ歌の翼に陽のさして色ながら散る君の言の葉
2005-096:留守(八慧)
色づいた言葉がはらり神の留守眠る思いを掌に置く
2005-097:静(八慧)
秋の朝静かに明けて摘まみ取る舌にほのかに甘い椋の実
-11-4
冬近し
2005-098:未来(八慧)
とりあへず楽しい未来夢に見てひと日一日を過ごす幸せ
2005-099:動(八慧)
逢えなくて季節が動き恨み葉の山の装い色を深める
2005-100:マラソン(八慧)
マラソンの完走報す弾む声少年少女に冬の微笑み
-11-6
2005-完走報告(八慧)
2005年のお題をなんとか詠み終えました。
まとめは、「朝の雲」(asitanokum.exblog.jp)の「題詠マラソン2005」に記します。
このあと、王朝風和歌が詠みたくなったので、この「題詠100首」の会場から離れて、100首ほどを詠み進めようかと思っています。これは、FacebookとTwitter「横雲」とブログ「杉篁庵日乗」に発表の予定です。
]]>
題詠マラソン2004
http://asitanokum.exblog.jp/27077876/
2018-08-30T05:59:00+09:00
2018-08-30T05:59:07+09:00
2018-08-28T18:12:42+09:00
asitanokumo
題詠まとめ
2004年会場(題詠マラソン2004)
http://www.sweetswan.com/daiei-2004/
2004/参加表明
2004-参加表明(横雲)
2003年のお題に続いて2004年のお題にトライしてみる。
004年の分は、「横雲」の名で詠むので旧仮名文語になりそうだ。
しかし、王朝風ではなく現代風の歌にしてみたいが、まだ、テーマも定められずにいる。やっぱり恋の歌が多くなりそうな気はする。二日で三首位のペースで進めてみたい。
2004-001:空(横雲)
新しきビル建ち上ぐる夏の空雲のはたてにこふる人あり
2004-002:安心(横雲)
安心(あんじん)の一日(ひとひ)だになく過ぎゆけばあはぬ昨日のなほ悔まれて
2004-003:運(横雲)
運不運玩ばれし生ゆゑになだめつつ羅の夏帯解きし
-6-25
声
2004-004:ぬくもり(横雲)
ぬくもりを残す布団に身を投げて耳に残れる声を聞く夜
2004-005:名前(横雲)
こゑにして君の名前を繰りかへし遠き昔を偲ぶ草吊る
2004-006:土(横雲)
行く末を待つ身の老ゆも厭離穢土まよふ心の暗きに入りぬ
-6-27
甲斐なく老いて
2004-007:数学(横雲)
西鶴の昼夜にわたる大矢数学ぶかひなく老いさらばへし
2004-008:姫(横雲)
安らけく息する姫をかたはらに抱きて眠る夜の静けさよ
2004-009:圏外(横雲)
暴風圏外るもいまだ風止まず身に染むほどに秋は哀しき
-6-29
雨止みて
2004-010:チーズ(横雲)
初めての二人の朝(あした)チーズ切る光まぶしくよろこび満つる
2004-011:犬(横雲)
雨止みて拒む老犬誘ひたり夏草茂る夢の名残りに
2004-012:裸足(横雲)
ルンルンと裸足で歩くシーサイド長スカートの裾たくしあぐ
-7-01
酔はましや
2004-013:彩(横雲)
酔はましやそぞろに歩き二人して彩絵(だみえ)の壁に寄り添へる夕
2004-014:オルゴール(横雲)
手回しの音の欠けたるオルゴール恋の名残りの捨てられぬ歌
2004-015:蜜柑(横雲)
湯の小屋の青き香強き青蜜柑淋しき色に爪立ててみる
-7-03
艶姿
-2004-016:乱(横雲)
乱鴬の声に艶あり啼き交す渓の湯宿に夜明けのひかり
2004-017:免許(横雲)
この恋に未練残すか冷艶な切捨御免許せずにゐて
2004-018:ロビー(横雲)
湯の宿の朝のロビーに待合せ艶な姿にルンルン気分
-7-05
七夕の空
2004-019:沸(横雲)
沸々と湧きたつ思ひ持て余しひとり見あぐる七夕の空
2004-020:遊(横雲)
花散らし戯れ遊ぶ風になりすさぶ思ひを解き放ちたり
2004-021:胃(横雲)
胸に落ち胃の腑に落ちし言の葉を君が誠と疑はざりき
-7-07
つれなき色
004-022:上野(横雲)
髪濡らす上野の山の青時雨つれなき色に刻を染めゆく
2004-023:望(横雲)
花栗の香に包まるる小望月その暁のちぎりいたみぬ
2004-024:ミニ(横雲)
偽りのフェミニストめくふるまひを君は嫌ひて背に拒みたり
-7-09
悦び
2004-025:怪談(横雲)
たそがれに怪談を聞く女生徒の眼(まなこ)に光る悦びの色
2004-026:芝(横雲)
寝ころぶや夏芝蒸れて呼ぶ汗の耳の後ろを這い落ちてゆく
2004-027:天国(横雲)
天国へ行けぬあはれをよそに聞き頼れる力なきをかなしむ
-7-11
夏祭
2004-028:着(横雲)
浴衣着て村の祭りに急ぎつつ川瀬にまじる笛の音聞く
2004-029:太鼓(横雲)
村の灯へ誘ふ祭の遠太鼓湯宿の窓に夕闇迫る
2004-030:捨て台詞(横雲)
捨て台詞吐きて立ち去る男には祭囃子の寂しくきこゆ
-7-13
どくだみ
2004-031:肌(横雲)
肌脱ぎの肩の紫蓮に蝶舞はせ思ひのままに君は旅立つ
2004-032:薬(横雲)
十薬の花群れ盛る島の道罪まぬがるや十字の白き
2004-033:半(横雲)
初夏の白き肌見せ半化粧半信半疑裏切りの時
-7-15
空
2004-034:ゴンドラ(横雲)
空中へゆらりゴンドラすべり出で眼下に青き山河広がる
2004-035:二重(横雲)
二重三重やがて八重咲き八重に散り夏の夜空に思ひを残す
2004-036:流(横雲)
君見ずや願ひ一すじ流れ星たちまち消えて空の清艶
-7-17
盛りを過ぎて
2004-037:愛嬌(横雲)
愛嬌の振り撒かるるも夏空に盛り過ぎたる花萎れける
2004-038:連(横雲)
連れ添ひて辿れる道にある轍途切るる時の闇恐れけり
2004-039:モザイク(横雲)
本心をぼかすモザイク消せぬまま便り間遠になりしこのごろ
-7-19
昔日
2004-040:ねずみ(横雲)
次々とねずみ花火の音爆ぜてやがて静謐満天の星
2004-041:血(横雲)
夜の灯にたぎる血潮を厭ひつつ彷徨ひし日の懐かしきかな
2004-042:映画(横雲)
君と見し古き映画に若き日を偲ぶ宵なり我は老いたり
-7-21
風の象(かたち)
2004-043:濃(横雲)
みどり濃き七月の山越え来たる風の象(かたち)を草原に見る
2004-044:ダンス(横雲)
しなつくる鶴のダンスに倣ひてや笑顔の君はスカート広ぐ
2004-045:家元(横雲)
ひつそりと夜のにほひの一軒家元(もと)も子もなき恋の終焉
-7-23
緑陰に
2004-046:練(横雲)
糸持ちて練羊羹を切る指の指輪に宿る光りの赤し
2004-047:機械(横雲)
動かざる機械の透ける古時計何の形見を留め置きける
2004-048:熱(横雲)
火の山の匂ひ濃き日の緑陰に熱纏ひたる身を憩ひけり
-7-25
よろよろと老ゆ
2004-049:潮騒(横雲)
人待ちて遠く潮騒聞く宿の湯殿の窓は夏のおぼろ夜
2004-050:おんな(横雲)
溺れたる酒とおんなを断ちしかど地に足つかずよろよろと老ゆ
2004-051:痛(横雲)
向きあふて触れし痛みの忘られずその面影にねこそなきそふ
-7-27
あらたなる嘘
2004-052:部屋(横雲)
うつくしき蛍火ひとつあらたなる嘘育ちゆく部屋に灯れる
2004-053:墨(横雲)
細く濃く眉墨引ける指白し逢魔が時に遠きいかづち
2004-054:リスク(横雲)
逢ふほどにリスクの増せど短夜のいのちなりけり人ぞ恋しき
-7-29
青春の形見
2004-055:日記(横雲)
半世紀前の古びし青春の形見とぞなる交換日記
2004-056:磨(横雲)
よるよるは須磨の浦波恨みつつ思ふ方より吹く風待てり
2004-057:表情(横雲)
別れしな表情硬く紅引きて声こらへつつ君は泪す
-7-31
うらみてもなほ
2004-058:八(横雲)
八朔の節句たのみにできぬまま昨日の嘘を猶おしむかな
2004-059:矛盾(横雲)
いくつもの矛盾抱へて過ごす世をうらみても猶たのみにぞせむ
2004-060:とかげ(横雲)
尾の切れし青とかげ這ふ石の上真昼の影の濃きを走らす
-8-02
蝉のしぐるる
2004-061:高台(横雲)
秋ちかき蝉のしぐるる高台寺うすき衣のねにぬるるかな
2004-062:胸元(横雲)
涼風を待つ胸元に滑る汗山下陰に蝉のしぐれて
2004-063:雷(横雲)
湯にひたり聞く遠雷のひとしきりやがて夕焼け蝉のしぐるる
-8-04
時の形見
2004-064:イニシャル(横雲)
ハンカチの君のイニシャルの色褪すを過ぎ来し時の形見とぞする
2004-065:水色(横雲)
水色のロングスカート靡かせて浜辺を走る君が眩しく
2004-066:鋼(横雲)
我になほ鋼のごとく鍛えたる心のあらば寂しさ耐ふも
-8-06
追憶
2004-067:ビデオ(横雲)
旧式のビデオカメラに映り込む手を振る君と散る花びらと
2004-068:傘(横雲)
さしかける傘に桜のちりかかり相寄る影を濡らす追憶
2004-069:奴隷(横雲)
睦びても奴隷のごとく黙しゐる目の恐ろしき女ありけり
-8-08
うたかたの影
2004-070:にせもの(横雲)
たれゆゑにみだれそめたる恋ならむ酔ひてむなしやにせものがたり
2004-071:追(横雲)
次々に追ひくる波に身を任せかかるうきめのうくをうらみぬ
2004-072:海老(横雲)
汐に飛ぶ海老の光か夏の恋波間にやどるうたかたの影
-8-10
初秋
2004-073:廊(横雲)
初秋の画廊に一人佇めばふりぬる身にぞあはれのしらる
2004-074:キリン(横雲)
雲の峰崩れて秋のキリン草村の娘の手に摘まれけり
2004-075:あさがお(横雲)
あさがほの萎れし夕べぬるき風身をつくしてや思ひ侘びぬる
-8-12
旅のかたち
2004-076:降(横雲)
吹き降りを避けて佇む大樹下洗ひしごとく髪とき放ちたり
2004-077:坩堝(横雲)
狂ほしき坩堝に溶けし我が想ひ旅の像(かたち)となるぞ嬉しき
2004-078:洋(横雲)
湯の宿の和洋混じりし料理食み象(かたち)となれる旅を楽しむ
-8-14
手術痕
2004-079:整形(横雲)
手術後の美容整形せし胸に雫となりて汗の流るる
2004-080:縫い目(横雲)
陽に晒す腹部に残る縫ひ目痕消えぬ思ひはいづくに隠る
2004-081:イラク(横雲)
夏の野のイラクサの棘チクチクと古き痛みの肌に浮き出づ
-8-16
夢醒むるも
2004-082:軟(横雲)
軟かき木の芽に見たる春の夢醒むるも枯れし枝をたのみとす
2004-083:皮(横雲)
なにくれと叶はぬ恋の皮算用戯(たはぶ)れ言の文の溜まりぬ
2004-084:抱き枕(横雲)
抱き枕いだけど夢の虚しくて戯れの身は置きどころなし
-8-18
遠き歓声
2004-085:再会(横雲)
再会の駅の北口たぎる身に潜む痛みと朝の賑ひ
2004-086:チョーク(横雲)
色チョーク重ねて描く夏模様空き教室に遠き歓声
2004-087:混沌(横雲)
敷島の混沌の闇深まりて現し世はなほ生き難きかな
-8-20
秋の風
2004-088:句(横雲)
秋草に埋もる句碑に月影の淡き宵なり風の涼しき
2004-089:歩(横雲)
二歩三歩過ぎて気づける野仏に蝶のとまりてはつか傾く
2004-090:木琴(横雲)
秋の風呼ぶ木琴の響きありたなびく雲に何をたのめる
-8-22
夢の痕
2004-091:埋(横雲)
遠き日の胸の埋火かき出だしはかなき夢の痕を痛みぬ
2004-092:家族(横雲)
夜深み四人家族のそれぞれの部屋に孤独の枕のありて
2004-093:列(横雲)
夕焼けの終の光に立ち尽くし列なす蟻の乱れ見詰むる
-8-24
遠き思ひ出
2004-094:遠(横雲)
寄り添ひて窓辺に聞ける遠花火浴衣の君は遠き思ひ出
2004-095:油(横雲)
君の住む街への道は油照り乗り継ぎわろきバスの遅るる
2004-096:類(横雲)
生類を憐れみ食す夏の夜の生臭き息美しく吐く
-8-26
過ぎ来しを
2004-097:曖昧(横雲)
曖昧な答え重ねて過ぎ来しを悔なき我と眠りむさぼる
2004-098:溺(横雲)
濁りなき稚児の瞳に恥ぢ入りてなれに溺るる身を糾すかな
2004-099:絶唱(横雲)
咲き誇る花の絶唱山に充つかの日の春の然は来ざるも
-8-28
百首
2004-100:ネット(横雲)
たが為に歌ひあげしやこの百首言の葉散りて甘きソネット
2004-完走報告(横雲)
「題詠100」の企画は、2003年から始まっていましたが、私がこの企画を知って参加したのは歌を詠み始めて間もなくの2011年からでした。
2018年の100題が詠み終わった後、この4月からは日々のブログ更新がままならないこともあって、未参加の2003年のお題からぼちぼち詠み進めることにしました。
2003年のお題に続いて、2004年のお題100題もなんとか詠み終えました。
これで「題詠」を10年分・1000余首詠んだことになります。
-8-30]]>
題詠マラソン2003《十五年》
http://asitanokum.exblog.jp/26933187/
2018-06-23T06:10:00+09:00
2018-08-27T15:17:29+09:00
2018-06-23T05:31:06+09:00
asitanokumo
題詠まとめ
以下、フェイスブックに記したものをまとめて転載する。
2003-参加表明(やゑ)私が「題詠100」の企画に参加したのは2011から、歌を詠み始めて間もなくのころでした。この企画は2003年から始まっていたと知って、始まりからどれだけ辿れるかわからないものの、この4月(2018年)からは日々のブログ更新がままならないこともあって、未参加の2003年のお題からぼちぼち詠み進めてみようかと思います。季節の花や風物(季語)と取り合わせて淡い想いが詠めればと思っています。(今年始まった「題詠」の企画で、今年分が詠み終えると、過去の題を詠むことができるようになった。)
「十五年」2003-001:月(やゑ)言葉なく桜月夜に肩寄せる影絵の中にある十五年2003-002:輪(やゑ)水の輪を重ねて鳥は飛ぴたった花に未練はないのだろうか2003-003:さよなら(やゑ)さよならを交わして帰る春の宵逢いたい気持ちを奥に澱ませ
「風ひかる」2003-004:木曜(やゑ)晩餐のグラスを交はす振袖に桜が散って聖木曜日2003-005:音(やゑ)山国の雪解を想い岩陰でひとり聞いてる春の潮の音2003-006:脱ぐ(やゑ)春コート脱いで眩しい川風に晒す笑顔が遠くに見える
「蠢く月」2003-007:ふと(やゑ)花陰にうふふと笑う顔見せて早くこっちと手を振っている2003-008:足りる(やゑ)花散って蠢いている春月が足りない愛を求めつづける2003-009:休み(やゑ)嘘ついてずる休みして逢いに行き水田に春の雲を眺める2003-010:浮く(やゑ)熱の身が共に過ごした時越えて昔ながらの夢に浮く春
「水鳥の跡」2003-011:イオン(やゑ)三越のライオン撫でる少女いてビルの谷間は春の夕焼2003-012:突破(やゑ)花屑を突破りゆく水鳥の跡に青空ひとすじの道2003-013:愛(やゑ)春惜しむ心に愛は届かない八重の桜も散ってしまった2003-014:段ボール(やゑ)コロコロとやがて石段五十段ボールはポンポン弾んで落ちる
「初夏の月」2003-015:葉(やゑ)機嫌よく目覚めてきみは身を包む若葉の風にいつもの笑顔2003-016:紅(やゑ)月光に疲れを知らず濡れている窓辺に咲いたベゴニアの紅2003-017:雲(やゑ)妻籠みに垣を巡らす八雲立ち包まれていく初夏の月2003-018:泣く(やゑ)泣く人に泣くなと言ってすすりあげ何処まで行こう空木咲く夜
「高原」2003-019:蒟蒻(やゑ)蒟蒻のさしみを摘まむ縁の夏ビールの泡は零れて消える2003-020:害(やゑ)いくつかの季節過ぎても害った心の疵はふいに疼いて2003-021:窓(やゑ)高原に向かう列車の窓いっぱいの初夏にこころを浸す2003-022:素(やゑ)ふたりして素足の裏に夏踏んで駆けていきたい丘に来ている
「浅間の煙」2003-023:詩(やゑ)一編の詩を口ずさみつつ丘登り今朝も眺める浅間の煙2003-024:きらきら(やゑ)落葉松の林に雨がきらきらと横に流れて夏が始まる2003-025:匿う(やゑ)新緑が匿う君の影を追い雄蝶雌蝶がもつれて消えた2003-026:妻(やゑ)稲妻の光の中に見えた影何を隠すか夏の夜の森
「森の匂い」2003-027:忘れる(やゑ)封印し忘れたはずの思い出が時に醸され熟し溢れる2003-028:三回(やゑ)おあずけに三回回ってワンという犬に倣った哀しいまなこ2003-029:森(やゑ)初夏の森の匂いに誘われて髪解き放つ君の輝き2003-030:表(やゑ)花びらを表に裏に牡丹舞い散るにまかせる投げやりの恋
「愚痴」2003-031:猫(やゑ)街中の猫撫で声に振り向けば思いの外に老けている人2003-032:星(やゑ)ベランダで星降る夜に二人して昔の歌を口ずさむ日よ2003-033:中ぐらい(やゑ)結局は老人の愚痴愛だって中ぐらいほどいいものはない2003-034:誘惑(やゑ)誘惑に耐えているのに白い花夏空のもと樹に溢れ咲く
「尾灯」2003-035:駅(やゑ)駅降りて角を曲がれば懐かしい顔が待ってるわけでなくとも2003-036:遺伝(やゑ)母娘遺伝している豪快な笑いが響く初夏の庭2003-037:とんかつ(やゑ)じいさんが贔屓していたとんかつのお店の席を確かめている2003-038:明日(やゑ)終電のテールライトが消えた後置き去りになる明日のない恋
「青葉」2003-039:贅肉(やゑ)かの人の優しさなのか贅肉がプルンプルンと波打っている2003-040:走る(やゑ)石走る滝の音聴く真昼なり青葉をこえた風が輝く2003-041:場(やゑ)場違いのようでも墓場におしゃれ服私の時は着て来てください2003-042:クセ(やゑ)頰そめる君を想ってほの赤い月に向かってアクセルを踏む
「風の暑さ」2003-043:鍋(やゑ)たぎる鍋庭にぶちまけ夏が来た風の暑さに息止める夕2003-044:殺す(やゑ)噛み殺す怒りが幾度重なって僕らはボケていくのだろうか2003-045:がらんどう(やゑ)子供らが帰った後のがらんどう体育館に潜む陶酔2003-046:南(やゑ)石南花(シャクナゲ)にやさしい夏が降りかかる訪う人のない高原の朝
「花南瓜」2003-047:沿う(やゑ)川に沿う桜並木に青嵐君の帽子は高くに飛んだ2003-048:死(やゑ)坂の上花の下にて死にたいと歌った人の碑に青嵐2003-049:嫌い(やゑ)いまさらに嫌いな人に手を振って別れるように別れてみたい2003-050:南瓜(やゑ)にぎやかに南瓜の花が咲いていて素顔の君は故郷訛
「老を哀しむ」2003-051:敵(やゑ)色と酒溺れることも遠くなり敵(かたき)といえぬ老を哀しむ2003-052:冷蔵庫(やゑ)冷蔵庫開いて閉じて夕飯は何にするかと不在の悶え2003-053:サナトリウム(やゑ)高原のサナトリウムにいるように朝の空気を二人で吸って2003-054:麦茶(やゑ)新しく麦茶を淹れて生き死にの瀬戸際を問う息継ぎの昼
「花野の風」2003-055:置く(やゑ)甦る花散る下に佇んて胸に手を置く君の仕草が2003-056:野(やゑ)風に立ち花野の花を摘み取ってもう会えないのかと恨んでる2003-057:蛇(やゑ)梅雨空に開いて閉じて蛇の目傘別れる時は傾けている2003-058:たぶん(やゑ)ごたぶんに洩れずあなたもさよならはごめんで始まりごめんで終わる
「彷徨う町」2003-059:夢(やゑ)芳草の夢は醒めずも目も声もかすみかすれて影遠ざかる2003-060:奪う(やゑ)奪われた心を元に戻せずにあなたの町を彷徨ってみる2003-061:祈る(やゑ)目をあげて祈る姿にひざまずく君を眺めて安らいでいる2003-062:渡世(やゑ)これまでに渡世の道の分岐点幾つ間違えここに来たのか
「遠い記憶」2003-063:海女(やゑ)暁の林は深い霧の海女の影がぼんやり浮かぶ2003-064:ドーナツ(やゑ)分かち合う餡ドーナツのひとかけら遠い記憶を呼び覚ましてる2003-065:光(やゑ)眩しくて遮光カーテン閉じる昼ホテルの窓に遠い山影2003-066:僕(やゑ)老いそめて君の僕(しもべ)になる花見この世のほかの思い出にす
「夢のなごり」2003-067:化粧(やゑ)花栗の香につつまれる化粧坂終わった人の夢のなごりに2003-068:似る(やゑ)窓口になごむ笑顔が君に似る看護婦がいて通う病院2003-069:コイン(やゑ)この恋を占うようにコイントス表が出たら今日会いに行く2003-070:玄関(やゑ)玄関に散らばる靴のさまざまを大中小に並べて帰る
「緑の風」2003-071:待つ(やゑ) 高原の緑の風に吹かれつつ今年も集うともがらを待つ2003-072:席(やゑ)居酒屋の席ほぼ埋まり碁がたきの席だけ空いて西日が暑い2003-073:資(やゑ)資本論語る人無く世の中は金がすべてと金持ちの論2003-074:キャラメル(やゑ)よちよちがやがてのりのり片足で踊るゆるキャラメルヘンの郷
「風に染まる」2003-075:痒い(やゑ)ウズウズと背中の傷が痒いからシャワーを浴びて緑に染まる2003-076:てかてか(やゑ)テカテカの脂の顔を拭いつつ緑の風に包まれている2003-077:落書き(やゑ)学級のノートに落書きした日々がドラマみたいに思い出される2003-078:殺(やゑ)夏虫を殺める灯しチカチカとまたたき揺れて夜風にそよぐ
「時経りて」2003-079:眼薬(やゑ)時経りて霞む記憶に眼薬をさしてあなたの面影を追う2003-080:織る(やゑ)火の山の物語織る幾夜さの窓に凭(もた)れて浸る追憶2003-081:ノック(やゑ)てのひらのスパイカメラはミノックス愛の記憶をそっと残した2003-082:ほろぶ(やゑ)美し国ほろぶ姿を見る日々が幾年過ぎて我は老いたり
「風の言葉」2003-083:予言(やゑ)電話口逢えるその日を予言する風の言葉を耳に重ねる2003-084:円(やゑ)次々と円舞の相手替えていく君を見ていた海辺のホテル2003-085:銀杏(やゑ)あたたかな銀杏落葉に身をしずめふりゆく時を惜しむ夕暮2003-086:とらんぽりん(やゑ)幼子をとらんぽりんが跳ね上げてまばゆく揺れるスカートの夢
「歓び」2003-087:朝(やゑ)別れても朝な夕なに願ってた歓び合えるその日はあると2003-088:象(やゑ)象潟の雨に打たれて咲く合歓に願いを込めてすする岩牡蠣2003-089:開く(やゑ)再会の君の心はいつまでも開くことないパンドラの箱2003-090:ぶつかる(やゑ)歓びのぶつかる音がくりかえすいとなみしぶき透き通る夜
「刻を待つ」2003-091:煙(やゑ)峰を這う浅間の煙また匂うつま恋う村に一人過ごす夜2003-092:人形(やゑ)十六夜の人形めいた縺れ髪さかしまの身にいなずまの影2003-093:恋(やゑ)戯れに恋の名残りの舞扇開いて閉じて過ぎる刻待つ 2003-094:時(やゑ)ふけゆけばさだめの時を待ちながら熟れた無花果ワインで煮込む
「時満ちて」2003-095:満ちる(やゑ)咲き満ちる桜の下の思い出は出逢った刻の笑顔の匂い2003-096:石鹸(やゑ)思い出は弾けて消える石鹸玉遠くの君へ届けたいのに2003-097:支(やゑ)来年の干支を数える時満ちて逢える日のくる春を待つ夜2003-098:傷(やゑ)お互いに爛れた傷を舐めあってそっぽを向いて過ごす夜が過ぎ
「やさしい想い」2003-099:かさかさ(やゑ)短歌にもヘイト記され鬱な朝そのかさかさの心哀しむ2003-100:短歌(やゑ)短歌にはやさしい想い詠みたいと幸せ拾い百首重ねる
2003-完走報告(やゑ)題詠マラソンの2003年度分を詠み終えた。ブログ再開に合わせて課題として「やゑ」の名で歌い始めたのが五月初めのことだった。どうにか口語短歌に慣れてきた感がある。
]]>
題詠2018百首&十首のまとめ
http://asitanokum.exblog.jp/26467993/
2018-02-14T17:31:00+09:00
2018-11-18T07:30:23+09:00
2018-02-14T17:10:16+09:00
asitanokumo
題詠まとめ
春のうちに詠めればと歌いだしたが、意外に早く詠めてしまった。
なんとか恋の物語が浮かび上がってくるように、10首ずつ小見出しをつけて詠んでみた。
ここにはまずそのままの形で転載する。
「老いらくの恋はてて」(110首)
「春を待つ」 001--010
2018-001:起(横雲)
日高う寝起きて眺む梅が枝に春のしるしのかそけくぞある
2018-002:覚(横雲)
行く先の打ち覚ゆれどなほ春は朝風寒く遠き面影
2018-003:作(横雲)
作りなす盆梅の花咲きたれどとふひありやと春ぞ久しき
2018-004:いいね(横雲)
春霞たなびく空を待ち居れば「いいね」の声の遠く聞こゆる
2018-005:恩(横雲)
恩讐を越えて逢ひたき人あれば梅の香さそふ里の春風
2018-006:喜(横雲)
再びの春に逢う日を待ち居れば芽吹ける梅の目を喜ばす
2018-007:劣(横雲)
待ち居れば我劣らじとふふみたる梅の蕾の愛しかりけり
2018-008:タイム(横雲)
ひと匙のスープふふめば広がれるタイムのよき香君の思い出
2018-009:営(横雲)
としつきの営み絶えず再びの春の巡りの花の待たるる
2018-010:場合(横雲)
探梅に待合せたるバス乗り場合はする笑みの久方にして
「行き違ふこころ」011--020
2018-011:黄(横雲)
咲き初むる黄梅の黄を弾く陽や頬にやさしく君を迎ゆる
2018-012:いろは(横雲)
君思ひ草書で記すいろは歌にほへど梅は未だしならむ
2018-013:枝(横雲)
老梅のひと枝にひとつ花つきぬ羞じらふ如く紅滲ませて
2018-014:淵(横雲)
追憶の淵に佇み覗きやる危ふき時を君と重ねき
2018-015:哀(横雲)
思ひきや哀れとどむる春の夜をあひみぬままにひとりぬるとは
2018-016:掘(横雲)
わがとがを根掘り葉掘りに問ひつめて涙の川を君は渡れり
2018-017:ジュニア(横雲)
背を見せて団塊ジュニアの君なればひとり遊びは芸のうちとや
2018-018:違(横雲)
行き違ふこころをふたり持て余しもだして過ごす雪の舞ふ夜
2018-019:究(横雲)
去れるとき我を揶揄して恋の道究むる人と言ひて頬撃つ
2018-020:和歌山(横雲)
しのぶほどなみだに濡れて詠める和歌山より月の出でぬ日なれば
「懐かしむ日々」021---030
2018-021:貫(横雲)
手に載せて志野の貫入愛しみし君が横顔懐かしむ日々
2018-022:桐(横雲)
桐下駄の音追ひゆけばけざやかに君の面影路地裏に立つ
2018-023:現(横雲)
失へる現(うつつ)の夢の名残とて契れる夜の欠片(かけら)を拾ふ
2018-024:湖(横雲)
鎮まれる火口湖ながめ燃え立ちし時愛しみて老をかなしむ
2018-025:こちら(横雲)
ワンピース着ごこちらくと寄り添ひて初めての夜は静かに過ぎき
2018-026:棄(横雲)
世を棄てし身に下萌のやさしきに苦しき恋をたのみとはせむ
2018-027:鶴(横雲)
葦田鶴のねになく夜半の一声を春の景色の朧に聞けり
2018-028:帰(横雲)
金縷梅(まんさく)のひとむれ咲ける門に居て帰らぬ日々を悔ゆる夕暮
2018-029:井(横雲)
つれなきに井守の黒焼振り掛けむ燃ゆる思ひは我のみにして
2018-030:JR(横雲)
JRに待ち惚けたるバレンタイン私鉄にありし君の懐かし
「梅咲きそめて」031---040
2018-031:算(横雲)
追ふほどに算を散らして去る雀深き林に梅咲き満つや
2018-032:庵(横雲)
我庵に訪ふ人の無く日のつもり咲かずはつるや再びの春
2018-033:検(横雲)
ふふみたる誠の心検(あらた)むや梅の蕾のなほ固かりき
2018-034:皿(横雲)
梅描く揃ひの皿に春の色浮かぶる宵や君に逢ひたし
2018-035:演(横雲)
好々爺演ずる宵に梅の香のほのにつつみてなが手を握る
2018-036:あきらめ(横雲)
なが心あきらめたるに再びの春を咲かすと卦にいでしかも
2018-037:参(横雲)
敷妙の君が御許に参りしに梅が枝に香のほころびにけり
2018-038:判断(横雲)
終局の違えぬ判断慶びて笑みを交はしぬ桃色遊戯
2018-039:民(横雲)
あこがれの田舎暮らしと古民家の縁に寄り添ふ桃源の里
2018-040:浦(横雲)
忘れ貝思ひありその浦波の寄せしを拾ふふたりなりけり
「再びの春」041---050
2018-041:潔(横雲)
潔く訣れし時をなきものに言はず語らず再びの春
2018-042:辺(横雲)
春の灯の甘き香のする枕辺に言はず語らず滂沱の涙
2018-043:権(横雲)
優しさの権化といへる偽りを知りてや君はせつなさに泣く
2018-044:ゴールド(横雲)
袖交ふる恋のゴールドファーミング痛みをひとひ歓喜に換へよ
2018-045:承(横雲)
ぬば玉の言承(ことう)け良きもふるまひは不承々々と見せし閨なり
2018-046:沖(横雲)
沖待ちの船の灯りを眺めつつ臥処(ふしど)にふたり黙(もだ)して居りぬ
2018-047:審(横雲)
つひに来る審(さば)かるる日のせつなきも悔みをけふは悦びとせむ
2018-048:凡(横雲)
去れる日に凡(おほ)に見しくを悔みやり床を新たに心焦がせる
2018-049:順(横雲)
歯目魔羅と順に迎ふる我なれどけふ新たなる夢ぞ見せなむ
2018-050:痴(横雲)
再びの恋に酔ひ痴る春の宵通ひなれたる夢路辿れり
「咲きそめし桜の下に」051---060
2018-051:適当(横雲)
桜咲く報せのあれば願ひたる悠悠自適当(あ)てこともなし
2018-052:誠(横雲)
春の夜の覚めたる夢は誠かと確かむるべく旅立ちにけり
2018-053:仙(横雲)
半仙戯漕ぎ出す心悦びて二人手を取り春風に舞ふ
2018-054:辛(横雲)
桜咲き千辛万苦乗り越えてつひに逢ひたる二人なりけり
2018-055:綱(横雲)
栲綱(たくづの)の白き鵜の綱手繰る如手繰り寄せらる我にてあらむ
2018-056:ドーナツ(横雲)
ドーナツの穴の先見る昼下がり笑顔の上に桜咲くなり
2018-057:純(横雲)
名を呼べば純情可憐の乙女めき桜の下に君振り返る
2018-058:門(横雲)
門灯のほのかに照らす桜木を仰ぐや空に月朧なり
2018-059:州(横雲)
宇治川の中州を渡る橋に寄り昔語りの恋をするかな
2018-060:土産(横雲)
言訳に旅の土産を選び買ふ君の肩背に花散りかかる
「逢瀬ののちに」061---070
2018-061:懇に(横雲)
懇ろになりて互いにつま抱(いだ)き汝(な)を想へりと泣きし夜の明く
2018-062:々(横雲)
虚々たるやけふを限りの命ぞと果てにし夢の跡のむなしく
2018-063:憲(横雲)
護るべき憲を守らずひたすらに不倫を責むる世のさかしさよ
2018-064:果実(横雲)
この因果実(まこと)し顏に尋ぬるは咎とや君は悟りたりしか
2018-065:狩(横雲)
言の葉の胸を射ちしや狩の夜の我待ちわぶる小琴の調べ
2018-066:役(横雲)
狂ほしく小琴奏でる指愛(かな)しそら鳴りの夜の一人二役
2018-067:みんな(横雲)
初旅の後にしるくや顧みんながかんばせの悦びの色
2018-068:漬(横雲)
なびき藻のくるや苦しきみだれ髪梳(けづ)りて漬(ひた)す悦びし夜を
2018-069:霜(横雲)
憂ひつつ寝もせで明くや春の霜影のしろきを恃みながむる
2018-070:宅(横雲)
棹させば舟は揺らぎぬうらみつつまいてこのよは三界火宅
「夜桜」071---080
2018-071:封(横雲)
巡り来しふたとせ越しの春なれや溢るる想ひ封ぜざれなく
2018-072:レンタル(横雲)
レンタルの着物で遊ぶ京の夜下駄の音にも華やぎありて
2018-073:羅(横雲)
美しく綺羅をまとへる桜狩り祇園をよぎる月朧なり
2018-074:這(横雲)
いだかれて背を這ひわたる汝(な)が指は魔神の翼はばたかすなり
2018-075:辻(横雲)
辻の灯に同じ夢見るここちして桜花ちる祇園をよぎる
2018-076:犯(横雲)
春うらら耳に桜の散りかかる女犯の僧の懺悔聞く如
2018-077:忠(横雲)
暁を憂しと歌へる忠岑に添ひて悦ぶ朝を語らむ
2018-078:多少(横雲)
手すさびの我楽多少し弄びふたりの春の夜や更け行ける
2018-079:悦(横雲)
君が影眺めてひとり悦に入る人妻となる身のいとほしく
2018-080:漁(横雲)
夜桜の並ぶ灯火(ともし)や妖しくも漁火に似て映り揺らげる
「花筏」081---090
2018-081:潰(横雲)
ながらへば潰(つい)えた夢の出涸らしを生くるがごとく花屑を踏む
2018-082:にわか(横雲)
鴛鴦(おしどり)の静かにわかつ花筏別るる朝に来し方たどる
2018-083:課(横雲)
愛といふ責をを課されし身の内に待つもはかなき春の夜の夢
2018-084:郡(横雲)
散る桜美しからむ汝が郡添ひて寝(ぬ)ればや惜しまざらまし
2018-085:名詞(横雲)
読みとくは古歌の総仮名詞書春障子には鳥影よぎる
2018-086:穀(横雲)
夢の辺の桜の下にくらしつつ穀潰(ごくつぶ)してふ我は詠へる
2018-087:湾(横雲)
弓なりに湾をよぎれる船の灯の春惜しみつつ島に隠れぬ
2018-088:省(横雲)
膠も無き手間省くかのメールあり別れの言葉なきままにして
2018-089:巌(横雲)
なほ吾に巌を通す一念の熱はありやと心に問へり
2018-090:トップ(横雲)
老いらくの狂恋もはやつきぬらむノンストップの終着近し
「散る花に」091---100
12018-091:勘(横雲)
見つめつついらふる君の笑む顔を勘違ひして恋の始まる
2018-092:醤(横雲)
氷にも酢醤油かくる人と居て香れる風に過ぎしひと夏
2018-093:健(横雲)
笑む顔の健気(けなげ)にみえて妖しきを知るやしらずや君はにつこり
2018-094:報告(横雲)
散る花に因果応報告げられて風吹き荒るる行方やしれぬ
2018-095:廃(横雲)
人の世ははやり廃りの浮き沈み春待たぬ日の諦めの色
2018-096:協(横雲)
ゆるらかに妥協重ねし果てにある老いを愛しみわが恋終る
2018-097:川(横雲)
匂ひたつ合歓(ねむ)の眠れる湯の宿や川瀬の音に雨のけぶれり
2018-098:執(横雲)
逃れえぬ修羅の妄執いだきつも老い行く先に春は来むとす
2018-099:致(横雲)
ふりゆけば致し方なく別れたりのちのおもひを埋めしままに
2018-100:了(横雲)
詠ひしは制御不能に陥りて強制終了せし恋の曲折
(寄り道コース)
「忘られし記憶」101---110
2018-101:壱(横雲)
壱の籤曳きてうれしき初詣共に梅見し若き日想ふ
2018-102:弐(横雲)
弐心咎めて去れる君の影散りかかりたる花や哀しき
2018-103:肆(横雲)
懐かしやふたりで読みし思ひ出の詩集みつくる書肆の棚に
2018-104:イレブン(横雲)
いま残る君の詠みたる歌の数イレブンナインの愛の結晶
2018-105:廿(横雲)
みてぐらを廿四孝にならへどもこの咎罪は神も許さじ
2018-106:九十九(横雲)
ふりたちし面影に見ゆ九十九髪(つくもがみ)老いて逢いたき人にぞありける
2018-107:萬(横雲)
春の夜の一人遊びの萬華鏡夢転がりて胸に湧くみの
2018-108:ミリオン(横雲)
ふたり行くサンテミリオン空碧くワインに酔ふて巡礼の径
2018-109:那由他(横雲)
那由他てふ名を持つ人に説かれたる仏の寿命我が罪の数
2018-110:無限大(横雲)
豊穣の見渡す限りの無限大君と語りし若き日の夢
『完』
]]>
https://www.excite.co.jp/
https://www.exblog.jp/
https://ssl2.excite.co.jp/