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「横雲」のやまとうた


by asitanokumo
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「呑む涙」(コロナ禍の夏を迎えて)題詠《2020年》


 「呑む涙」(コロナ禍の夏を迎えて)
《2020年》 
2020-参加表明(八慧)
今年も「八慧」の名でトライします。日々設定した季語で俳句と短歌を詠んでいるTwitterやブログにこの企画も組み込んで、一日一首のペースで詠めればと思っています。嘆かわしいことに、気力も想像力も衰えたか100題のお題を見渡しても物語が浮かんでこず、物語を編もうという意欲もわいていませんが、とにかくはと思いながら詠んでみます。
とりあえずのテーマ。
「掌にやさしく包み呑む涙 粉引茶碗に充ちる哀しみ」

2020-001:君(八慧)
霙降る空見上げれば聞こえくるいま逢いたいの君の歌声

2020-002:易(八慧)
解決は易しくないと葉牡丹の入組む襞に悩みを托す

2020-003:割(八慧)
節分の豆を踏み割る音がして鬼が帰って来たと知られる

2020-004:距離(八慧)
絡む糸もう春なのにとけなくて君との遠い距離はそのまま

2020-005:喉(八慧)
春雷を聞き後ろ手にドア閉ざす口に含んだ喉飴がじゃま

2020-006:鋭(八慧)
咲き満ちた梅の一枝すぱっと切るその鋭さに春が目覚める

2020-007:クイズ(八慧)
戯れのクイズに秘める言葉には君を迎える春がいっぱい

2020-008:頑(八慧)
薄氷が溶けても蕾頑なに咲くのを拒むあなたを待って

2020-009:汁(八慧)
かちかちと哀しい音を響かせて男は一人蜆汁吸う

2020-010:なぜ(八慧)
生々となぜられた手の感触が甦る夢覚めて春の夜

2020-011:域(八慧)
あなたとは雨域の違う町に居て青空眺め春の雨聴く

2020-012:雅(八慧)
二人きて灯しに浮かぶ梅園に風雅楽しむ夜がふけていく

2020-013:意地悪(八慧)
好きだからした意地悪と言われても疑い深く君の目を見る

2020-014:客(八慧)
老人もSHIBUYAの客となる佳日チョコレート手に軽い足取り

2020-015:餌(八慧)
餌を撒き集まる鳩に語りかけ一人の昼の公園に春

2020-016:グラス(八慧)
触れ合わすグラスに透ける思い出は池一面に浮かんだ花唇

2020-017:境(八慧)
うつし世の境を越えてかかる虹君住む春の里に導く

2020-018:位(八慧)
幸せは中位でも春は春そっと喜ぶ白オキザリス

2020-019:立派(八慧)
目を奪う太く立派な松の木に春の羽衣そつとかけられ

2020-020:梅(八慧)
真っ白に散り敷いている梅の花あなたの「いいね」に春が深まる

2020-021:冊(八慧)
ときめいてめくる短歌の小冊子君の名見つけとりあえずお茶

2020-022:自慢(八慧)
おつまみは自慢の料理鮒膾差しつ差されつ更けていく宵

2020-023:陥(八慧)
その日から欠陥だけが目について嫌いになった人だと判る

2020-024:益(八慧)
益荒男のうつしごころは老いてなお益々盛んと駒返る草

2020-025:あなた(八慧)
会いたいの気持ち楽しむ細い月ながくあなたに会えない春は

2020-026:岩(八慧)
逢えなくて冷えた心で料峭の岩打つ波を眺め続ける

2020-027:慰(八慧)
水温む池をゆつたり泳ぐ鯉疼く心を慰さめるよう

2020-028:刷(八慧)
誰のとも知れぬ歯刷子置かれてて棚の扉をバッタと閉めた

2020-029:オープン(八慧)
風船はオープン記念のキャンペーン春一番に高く飛ばされ

2020-030:建(八慧)
次々に新しいビル建ち並び夕焼空の形を変える

2020-031:芝居(八慧)
雛の前若いつもりで白酒に頬赤らめて酔ったお芝居

2020-032:委(八慧)
運命の人はいずこか咲く桃にこころ委ねて微笑んでみる

2020-033:虐(八慧)
春が来て虐げられた枯れ草が萌え出すように思い湧きたつ

2020-034:頃(八慧)
いくつかの希望の灯しが消える頃春の闇には妖魔うまれる

2020-035:為(八慧)
いつまでも解けないままの悲しみは誰の所為だとないている天(そら)

2020-036:撮(八慧)
一撮みしたお茶の葉がゆっくりとひらいて香る春ののどけさ

2020-037:あべこべ(八慧)
あべこべの対処で悪化するばかり鋏を使うすべがみえない
 (「馬鹿と鋏は使いよう」とはいえど・・「悪化する安倍のあべこべあきれはてあきらめきれないあしたはどっちだ」) 

2020-038:私(八慧)
一日が終わった後で知ったこと君と私の幸運吉日

2020-039:威(八慧)
なかみなく空威張りして狼藉を働く人が導く不幸

2020-040:スパイ(八慧)
逢えなくて逢えないままのスパイラルこの苦しみはいつまで続く

2020-041:拒(八慧)
来るものを拒まないとは言わないが春の睡魔に殺される昼

2020-042:司(八慧)
司書室の窓辺に置いた一鉢にきいろたんぽぽ次々咲いて

2020-043:個(八慧)
久々の個展の報せに添えられた花のイラストほのかに薫る

2020-044:施(八慧)
闇雲に実施不能の施策立て広がる混乱尽きない怒り

2020-045:攻(八慧)
岩越える春の白波攻め寄せて水仙の香が濃く匂う浜

2020-046:わいわい(八慧)
うしろ髪を引かれたままで言うのなら欲しくはないわいわいの言葉

2020-047:溢(八慧)
歓声が溢れる土俵夢に見てがらんがらんに響く呼び出し

2020-048:殴(八慧)
突然の篠突く雨は横殴りただ晒される埠頭突端

2020-049:兼(八慧)
空透けて兼六園の四手辛夷咲けば遥かな人に逢いたく

2020-050:削(八慧)
思い出の添削されたラブレター一カ所だけに丸印つく

2020-051:夫婦(八慧)
池の辺に寄り添う若い夫婦松手をとりあって並んで見てた

2020-052:冗(八慧)
春の夜の支離滅裂の言い訳に巡回冗長検査のエラー

2020-053:掌(八慧)
君の掌とふれ合った日が甦る花散る里に今日ひとり居て

2020-054:がらくた(八慧)
棄て難いがらくたの山前にして死ぬに死ねずと笑ってすごす

2020-055:譲(八慧)
譲り葉が落ちて別れる日が近く出会いの季節は駆け抜けていく

2020-056:処(八慧)
舞う花に此処までお出でと誘われて何処まで行こう春の山里

2020-057:ソプラノ(八慧)
空高く天使の声かソプラノの囀りを聞く春の野遊び

2020-058:峰(八慧)
散る花に甦るのは峰越えて桜訪ねたふたりの旅路

2020-059:招(八慧)
この春の催し物は皆中止招かれていた花見の宴も

2020-060:凶(八慧)
吉凶を占う今朝の星座表良くも悪しくもあなたは来ない

2020-061:まじめ(八慧)
本意隠しいつもまじめなふりをして誕生の日も嘘つき通す

2020-062:催(八慧)
コロナ禍に人影消えて催しはすべて中止の花冷えの街

2020-063:幽(八慧)
春追って遊ぶ深山幽谷に隠れるように咲いている君

2020-064:父(八慧)
亡き父と歩いた道に風光り影追うように花屑が舞う

2020-065:一部(八慧)
風景の一部を染めた花筏見詰めて二人言葉をなくす

2020-066:硬(八慧)
ひとり旅硬い切符を握りしめ迷った末に涙ぐんだ日

2020-067:デビュー(八慧)
木瓜咲いて離れ離れに遊んでるひとりぼっちの公園デビュー

2020-068:緊(八慧)
飛花落花逢えずに過ぎて恋の神えやみの神に緊(ひし)と抱かれる

2020-069:裸(八慧)
春の夜の裸身の桜はらはらと散り続けては風に巻かれる

2020-070:板(八慧)
逢いたいと逢ってはならぬの板挟み遠く離れて逢えないままに

2020-071:能(八慧)
この春は再起不能に陥って悶えて時を遣り過ごすのみ

2020-072:𠮷(八慧)
𠮷野家が「つちよし」なんて知らなんだ看板の文字あらためて見る

2020-073:採(八慧)
しゃがみ込み蕗を採る背に桜散るくぐもる声の歌が聞こえて

2020-074:せめて(八慧)
置き去られせめて余生は悔なくと願ってみても明日が見えない

2020-075:擦(八慧)
思い出を優しく擦る春の風遥かの思いせつなく染めて

2020-076:充(八慧)
この春は空っぽのまま過ぎていく補充できない虚しさのこして

2020-077:武器(八慧)
魔を祓う仏の武器を振るように一双の蝶空に翔け行く

2020-078:添(八慧)
過ぎていく春を見送る夢にみた君と添う世がいつかはあると

2020-079:内(八慧)
何もかも嘘偽りで塗り固め内なる事実は誰も知らない

2020-080:擁(八慧)
擁きしめた春はするりと抜けていき早くも胡蝶花(しゃが)があらそって舞う

2020-081:札(八慧)
ひそやかな改札口に見送れば雨降る街は色を失う

2020-082:秒(八慧)
秒針の音にまぎれて屋根滑る樟の落葉を聞く春の闇

2020-083:剤(八慧)
二十年飲めば血圧降下剤効いているのかまだ生きている

2020-084:始末(八慧)
生ぬるい中途半端の人生は行ったり来たり始末が付かない

2020-085:臭(八慧)
コロナ禍の気分晴らしにシャボン玉吹けば吐息の臭みも消えて

2020-086:造(八慧)
手造りの料理に添えた青楓さやかな夏の風を呼んでる

2020-087:栽(八慧)
盆栽の若葉に光ざわめいて老いの二人は言葉をなくす

2020-088:しばらく(八慧)
しばらくは実らぬ恋と山吹を一輪挿して籠る闇の夜

2020-089:里(八慧)
かくれんぼしたまま過ぎる春の宵思う心は二千里の外

2020-090:植(八慧)
近道の裏のつつじの植込みにいつもの猫の声が隠れる

2020-091:呪(八慧)
ひきこもる八十八夜のお呪い福茶を飲んで疫禍を祓う

2020-092:タッチ(八慧)
じゃまたとハイタッチした別れ道明日は知れず花水木咲く

2020-093:属(八慧)
帰属する国の悲惨をいたむとき咎を身に受けさんざしが咲く

2020-094:錠(八慧)
閉じこめた錠を解くすべ知らなくて囀る椋を羨んでいる

2020-095:俗(八慧)
山深く俗塵を避け籠る日を夢に見ている夏を迎えて

2020-096:機嫌(八慧)
ご機嫌の尾を跳ね上げて鯉幟若葉の風を孕みのけぞる

2020-097:詐(八慧)
世の中は詐言重ねる人ばかり事実は闇に隠されたまま

2020-098:鈍(八慧)
鈍才の目にも呆れる愚鈍さが際立ってきて夏が始まる

2020-099:任(八慧)
若葉陰任天堂のゲーム機のとぎれとぎれの音が聞こえて

2020-100:詠(八慧)
ひそやかに想いのたけを歌に詠み甘辛苦く筍を煮る

(寄り道コース)
2020-101:一輪(八慧)
髪にさすコクリコ一輪揺らし行く五月の風は晶子の歓喜

2020-102:両輪(八慧)
実万両輪飾りに挿し年越すも五月の風は苦しみの色

2020-103:三輪(八慧)
甦り再三輪廻を繰り返す永久(とわ)の誓いを次に託して

2020-104:四輪(八慧)
良い国を総べる正義の四輪王どこにいるかと満月に問う

2020-105:五輪(八慧)
来年は祝って重五輪っぱ飯いっばい食べると遠くの便り

2020-106:七輪(八慧)
降り立つは花人街道二三七輪行バック開くも楽し

2020-107:九輪(八慧)
山裾にひっそりと咲く九輪草果てた苦倫の思いを残す

2020-108:大輪(八慧)
言い訳の何が正大輪にも葛にも掛からない嘘で固めて

2020-109:大車輪(八慧)
策無きに獅子奮迅の大車輪指揮が悪けりゃただ空回る

2020-110:吊り輪(八慧)
夏の夜の吊り輪灯のほの明かり読経の声に微かに揺れる

2020-完走報告(八慧)
寄り道コースのお題の「輪」が虚しくなったコロナ禍。なんとか詠み進めたが、テーマを絞るという事はできずに終わった。
全体はブログ「朝の雲 」 に「呑む涙」としてまとめる。




by asitanokumo | 2020-05-20 05:50 | 題詠まとめ