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「横雲」のやまとうた


by asitanokumo
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題詠2018百首&十首のまとめ 

「題詠100」は、このところ八慧の名で詠んでいたが、今年は横雲の名で数年前試みたように春に咲く花にからむ恋の歌を文語で詠んで物語が作れればと思って参加した。
春のうちに詠めればと歌いだしたが、意外に早く詠めてしまった。
なんとか恋の物語が浮かび上がってくるように、10首ずつ小見出しをつけて詠んでみた。
ここにはまずそのままの形で転載する。

 「老いらくの恋はてて」(110首)

 「春を待つ」 001--010
2018-001:起(横雲)
日高う寝起きて眺む梅が枝に春のしるしのかそけくぞある

2018-002:覚(横雲)
行く先の打ち覚ゆれどなほ春は朝風寒く遠き面影

2018-003:作(横雲)
作りなす盆梅の花咲きたれどとふひありやと春ぞ久しき

2018-004:いいね(横雲)
春霞たなびく空を待ち居れば「いいね」の声の遠く聞こゆる

2018-005:恩(横雲)
恩讐を越えて逢ひたき人あれば梅の香さそふ里の春風

2018-006:喜(横雲)
再びの春に逢う日を待ち居れば芽吹ける梅の目を喜ばす

2018-007:劣(横雲)
待ち居れば我劣らじとふふみたる梅の蕾の愛しかりけり

2018-008:タイム(横雲)
ひと匙のスープふふめば広がれるタイムのよき香君の思い出

2018-009:営(横雲)
としつきの営み絶えず再びの春の巡りの花の待たるる

2018-010:場合(横雲)
探梅に待合せたるバス乗り場合はする笑みの久方にして


 「行き違ふこころ」011--020
2018-011:黄(横雲)
咲き初むる黄梅の黄を弾く陽や頬にやさしく君を迎ゆる

2018-012:いろは(横雲)
君思ひ草書で記すいろは歌にほへど梅は未だしならむ

2018-013:枝(横雲)
老梅のひと枝にひとつ花つきぬ羞じらふ如く紅滲ませて

2018-014:淵(横雲)
追憶の淵に佇み覗きやる危ふき時を君と重ねき

2018-015:哀(横雲)
思ひきや哀れとどむる春の夜をあひみぬままにひとりぬるとは

2018-016:掘(横雲)
わがとがを根掘り葉掘りに問ひつめて涙の川を君は渡れり

2018-017:ジュニア(横雲)
背を見せて団塊ジュニアの君なればひとり遊びは芸のうちとや

2018-018:違(横雲)
行き違ふこころをふたり持て余しもだして過ごす雪の舞ふ夜

2018-019:究(横雲)
去れるとき我を揶揄して恋の道究むる人と言ひて頬撃つ

2018-020:和歌山(横雲)
しのぶほどなみだに濡れて詠める和歌山より月の出でぬ日なれば


 「懐かしむ日々」021---030
2018-021:貫(横雲)
手に載せて志野の貫入愛しみし君が横顔懐かしむ日々

2018-022:桐(横雲)
桐下駄の音追ひゆけばけざやかに君の面影路地裏に立つ

2018-023:現(横雲)
失へる現(うつつ)の夢の名残とて契れる夜の欠片(かけら)を拾ふ

2018-024:湖(横雲)
鎮まれる火口湖ながめ燃え立ちし時愛しみて老をかなしむ

2018-025:こちら(横雲)
ワンピース着ごこちらくと寄り添ひて初めての夜は静かに過ぎき

2018-026:棄(横雲)
世を棄てし身に下萌のやさしきに苦しき恋をたのみとはせむ

2018-027:鶴(横雲)
葦田鶴のねになく夜半の一声を春の景色の朧に聞けり

2018-028:帰(横雲)
金縷梅(まんさく)のひとむれ咲ける門に居て帰らぬ日々を悔ゆる夕暮

2018-029:井(横雲)
つれなきに井守の黒焼振り掛けむ燃ゆる思ひは我のみにして

2018-030:JR(横雲)
JRに待ち惚けたるバレンタイン私鉄にありし君の懐かし


 「梅咲きそめて」031---040
2018-031:算(横雲)
追ふほどに算を散らして去る雀深き林に梅咲き満つや

2018-032:庵(横雲)
我庵に訪ふ人の無く日のつもり咲かずはつるや再びの春

2018-033:検(横雲)
ふふみたる誠の心検(あらた)むや梅の蕾のなほ固かりき

2018-034:皿(横雲)
梅描く揃ひの皿に春の色浮かぶる宵や君に逢ひたし

2018-035:演(横雲)
好々爺演ずる宵に梅の香のほのにつつみてなが手を握る

2018-036:あきらめ(横雲)
なが心あきらめたるに再びの春を咲かすと卦にいでしかも

2018-037:参(横雲)
敷妙の君が御許に参りしに梅が枝に香のほころびにけり

2018-038:判断(横雲)
終局の違えぬ判断慶びて笑みを交はしぬ桃色遊戯

2018-039:民(横雲)
あこがれの田舎暮らしと古民家の縁に寄り添ふ桃源の里

2018-040:浦(横雲)
忘れ貝思ひありその浦波の寄せしを拾ふふたりなりけり



 「再びの春」041---050 
2018-041:潔(横雲)
潔く訣れし時をなきものに言はず語らず再びの春

2018-042:辺(横雲)
春の灯の甘き香のする枕辺に言はず語らず滂沱の涙

2018-043:権(横雲)
優しさの権化といへる偽りを知りてや君はせつなさに泣く

2018-044:ゴールド(横雲)
袖交ふる恋のゴールドファーミング痛みをひとひ歓喜に換へよ

2018-045:承(横雲)
ぬば玉の言承(ことう)け良きもふるまひは不承々々と見せし閨なり

2018-046:沖(横雲)
沖待ちの船の灯りを眺めつつ臥処(ふしど)にふたり黙(もだ)して居りぬ

2018-047:審(横雲)
つひに来る審(さば)かるる日のせつなきも悔みをけふは悦びとせむ

2018-048:凡(横雲)
去れる日に凡(おほ)に見しくを悔みやり床を新たに心焦がせる

2018-049:順(横雲)
歯目魔羅と順に迎ふる我なれどけふ新たなる夢ぞ見せなむ

2018-050:痴(横雲)
再びの恋に酔ひ痴る春の宵通ひなれたる夢路辿れり



 「咲きそめし桜の下に」051---060
2018-051:適当(横雲)
桜咲く報せのあれば願ひたる悠悠自適当(あ)てこともなし

2018-052:誠(横雲)
春の夜の覚めたる夢は誠かと確かむるべく旅立ちにけり

2018-053:仙(横雲)
半仙戯漕ぎ出す心悦びて二人手を取り春風に舞ふ

2018-054:辛(横雲)
桜咲き千辛万苦乗り越えてつひに逢ひたる二人なりけり

2018-055:綱(横雲)
栲綱(たくづの)の白き鵜の綱手繰る如手繰り寄せらる我にてあらむ

2018-056:ドーナツ(横雲)
ドーナツの穴の先見る昼下がり笑顔の上に桜咲くなり

2018-057:純(横雲)
名を呼べば純情可憐の乙女めき桜の下に君振り返る

2018-058:門(横雲)
門灯のほのかに照らす桜木を仰ぐや空に月朧なり

2018-059:州(横雲)
宇治川の中州を渡る橋に寄り昔語りの恋をするかな

2018-060:土産(横雲)
言訳に旅の土産を選び買ふ君の肩背に花散りかかる


 「逢瀬ののちに」061---070 
2018-061:懇に(横雲)
懇ろになりて互いにつま抱(いだ)き汝(な)を想へりと泣きし夜の明く

2018-062:々(横雲)
虚々たるやけふを限りの命ぞと果てにし夢の跡のむなしく

2018-063:憲(横雲)
護るべき憲を守らずひたすらに不倫を責むる世のさかしさよ

2018-064:果実(横雲)
この因果実(まこと)し顏に尋ぬるは咎とや君は悟りたりしか

2018-065:狩(横雲)
言の葉の胸を射ちしや狩の夜の我待ちわぶる小琴の調べ

2018-066:役(横雲)
狂ほしく小琴奏でる指愛(かな)しそら鳴りの夜の一人二役

2018-067:みんな(横雲)
初旅の後にしるくや顧みんながかんばせの悦びの色

2018-068:漬(横雲)
なびき藻のくるや苦しきみだれ髪梳(けづ)りて漬(ひた)す悦びし夜を

2018-069:霜(横雲)
憂ひつつ寝もせで明くや春の霜影のしろきを恃みながむる

2018-070:宅(横雲)
棹させば舟は揺らぎぬうらみつつまいてこのよは三界火宅


 「夜桜」071---080
2018-071:封(横雲)
巡り来しふたとせ越しの春なれや溢るる想ひ封ぜざれなく

2018-072:レンタル(横雲)
レンタルの着物で遊ぶ京の夜下駄の音にも華やぎありて

2018-073:羅(横雲)
美しく綺羅をまとへる桜狩り祇園をよぎる月朧なり

2018-074:這(横雲)
いだかれて背を這ひわたる汝(な)が指は魔神の翼はばたかすなり

2018-075:辻(横雲)
辻の灯に同じ夢見るここちして桜花ちる祇園をよぎる

2018-076:犯(横雲)
春うらら耳に桜の散りかかる女犯の僧の懺悔聞く如

2018-077:忠(横雲)
暁を憂しと歌へる忠岑に添ひて悦ぶ朝を語らむ

2018-078:多少(横雲)
手すさびの我楽多少し弄びふたりの春の夜や更け行ける

2018-079:悦(横雲)
君が影眺めてひとり悦に入る人妻となる身のいとほしく

2018-080:漁(横雲)
夜桜の並ぶ灯火(ともし)や妖しくも漁火に似て映り揺らげる


 「花筏」081---090
2018-081:潰(横雲)
ながらへば潰(つい)えた夢の出涸らしを生くるがごとく花屑を踏む

2018-082:にわか(横雲)
鴛鴦(おしどり)の静かにわかつ花筏別るる朝に来し方たどる

2018-083:課(横雲)
愛といふ責をを課されし身の内に待つもはかなき春の夜の夢

2018-084:郡(横雲)
散る桜美しからむ汝が郡添ひて寝(ぬ)ればや惜しまざらまし

2018-085:名詞(横雲)
読みとくは古歌の総仮名詞書春障子には鳥影よぎる

2018-086:穀(横雲)
夢の辺の桜の下にくらしつつ穀潰(ごくつぶ)してふ我は詠へる

2018-087:湾(横雲)
弓なりに湾をよぎれる船の灯の春惜しみつつ島に隠れぬ

2018-088:省(横雲)
膠も無き手間省くかのメールあり別れの言葉なきままにして

2018-089:巌(横雲)
なほ吾に巌を通す一念の熱はありやと心に問へり

2018-090:トップ(横雲)
老いらくの狂恋もはやつきぬらむノンストップの終着近し


 「散る花に」091---100
12018-091:勘(横雲)
見つめつついらふる君の笑む顔を勘違ひして恋の始まる

2018-092:醤(横雲)
氷にも酢醤油かくる人と居て香れる風に過ぎしひと夏

2018-093:健(横雲)
笑む顔の健気(けなげ)にみえて妖しきを知るやしらずや君はにつこり

2018-094:報告(横雲)
散る花に因果応報告げられて風吹き荒るる行方やしれぬ

2018-095:廃(横雲)
人の世ははやり廃りの浮き沈み春待たぬ日の諦めの色

2018-096:協(横雲)
ゆるらかに妥協重ねし果てにある老いを愛しみわが恋終る

2018-097:川(横雲)
匂ひたつ合歓(ねむ)の眠れる湯の宿や川瀬の音に雨のけぶれり

2018-098:執(横雲)
逃れえぬ修羅の妄執いだきつも老い行く先に春は来むとす

2018-099:致(横雲)
ふりゆけば致し方なく別れたりのちのおもひを埋めしままに

2018-100:了(横雲)
詠ひしは制御不能に陥りて強制終了せし恋の曲折


(寄り道コース)
 「忘られし記憶」101---110
2018-101:壱(横雲)
壱の籤曳きてうれしき初詣共に梅見し若き日想ふ

2018-102:弐(横雲)
弐心咎めて去れる君の影散りかかりたる花や哀しき

2018-103:肆(横雲)
懐かしやふたりで読みし思ひ出の詩集みつくる書肆の棚に

2018-104:イレブン(横雲)
いま残る君の詠みたる歌の数イレブンナインの愛の結晶

2018-105:廿(横雲)
みてぐらを廿四孝にならへどもこの咎罪は神も許さじ

2018-106:九十九(横雲)
ふりたちし面影に見ゆ九十九髪(つくもがみ)老いて逢いたき人にぞありける

2018-107:萬(横雲)
春の夜の一人遊びの萬華鏡夢転がりて胸に湧くみの

2018-108:ミリオン(横雲)
ふたり行くサンテミリオン空碧くワインに酔ふて巡礼の径

2018-109:那由他(横雲)
那由他てふ名を持つ人に説かれたる仏の寿命我が罪の数

2018-110:無限大(横雲)
豊穣の見渡す限りの無限大君と語りし若き日の夢

『完』


by asitanokumo | 2018-02-14 17:31 | 題詠まとめ