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「横雲」のやまとうた


by asitanokumo
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 「老いたる人のひそかなる恋心を詠める」(2023年題詠100)
2023-参加表明(詠弛)
今年はこの企画をゆっくり詠んで楽しもうと、文語口語にとらわれず「詠弛」の名で週3首「火・木・土」の投稿をめざしたい。これは「燃えるものの回収日」でもある。よろしくお願いいたします。
月11首、10ヶ月で110首詠む計画。

《2023年》
2月
(寄り道コース)
2023-101:甲(詠弛)
ゆるゆると歌詠む春や鼈甲の小櫛に白き幾筋梳ける
2023-102:乙(詠弛)
花の宴長き黒髪誇りたる乙女も今は白く透くゆく
2023-103:丙(詠弛)
選別の丙種の味も捨てがたしへうへうとして生きたる証し
2023-104:丁(詠弛)
丁字路に別れし人の影消えて灯し寂しく街は暮れたり
2023-105:戊(詠弛)
あつさりと春は来にけりの句ありて文化甲戊の春偲ぶ
江戸時代の俳人・小林一茶の人生は、不幸の塊だったが、50歳の冬、「これがまあ終の栖か雪五尺」と詠む郷里柏原に帰った。文化11年甲戌(1814)52歳で初めて若い妻を迎えることになる、その歳旦の句が「あつさりと春は来にけり浅黄空」。
2023-106:己(詠弛)
花持てぬ己が身ひとつ歎きゐて逢へずに過ぐるひと日の長し
2023-107:庚(詠弛)
はるけくて眺むるばかり長庚の夕べの春の夢は朧に
2023-108:辛(詠弛)
あけぼのの木の芽起こしの雨に濡れ咲けるは辛き芥子菜の花
2023-109:壬(詠弛)
思い出が遠くになって京壬生菜浅漬け食めば梅まっ盛り
2023-110:癸(詠弛)
癸卯の賀状の返事おぼおぼし兎は猫か豚とも見えて

寄り道コース10首何とか詠みました。十干は他の使い方がないものがあり無理な形にならざるを得ないように思えました。

3月
さめやらぬこひのなごりをおしみつつ
《2023年》
2023-001:引(詠弛)
引き潮の七里ヶ浜の浅き瀬にふたり遊びし影の遥けし
2023-002:寝(詠弛)
春の夜の夢の浮橋行き損ね君の寝顔をそっと見つめる
2023-003:古(詠弛)
雛まつる古本市の稽古本薄いよごれに春の陽射して
2023-004:耳(詠弛)
空耳か君の声聞く春の空うつろひ嘆く老いの僻耳 
2023-005:程度(詠弛)
魂極る老いの身なれば近頃は嫌という程度忘れひどい
2023-006:確(詠弛)
お互いに確め合ったことでさえ今ではすっかり忘れ去られた
2023-007:おにぎり(詠弛)
おにぎりをおむすびという人といた早春の野に陽が匂い立つ
2023-008:較(詠弛)
較べ合う老いの嘆きの極みとて互いの記憶にないランデヴー
2023-009:一時(詠弛)
どれにする? 料理の前の二者択一時には三者択一の贅
2023-010:愚(詠弛)
福茶飲み溢れる愚痴を聞き流す恙なく今生きて平穏
2023-011:イメージ(詠弛)
さりげなくイメージアップを図ろうと短歌を詠んで過ぎた年月
2023-012:娯(詠弛)
明日知れぬ命娯しむ老いの身に今舞ひあがる阿鼻機流の夢

4月
2023-013:講(詠弛)
春眠に誘われている講習所はるかに君の声が聞こえる
2023-014:ほんのり(詠弛)
ほんのりと桜吹雪の中にいた四月五日は記念日だった
2023-015:戸(詠弛)
古井戸の残る庭にも桜散るここでは泣いていいんですって
2023-016:険(詠弛)
仲隔つ天下の険のくれなづみ山辺にひそと片栗の花
2023-017:俳句(詠弛)
年毎に句会で作る俳句集凡句並ぶもそれなりの味
2023-018:就(詠弛)
老い就くや余命の延びてうららかの春のひとひに八十(やそぢ)祝へり
2023-019:賀(詠弛)
足裏の砂の冷たさ春の海浦廻 (うらみ)に寄せる志賀のさざ波
2023-020:みじめ(詠弛)
宴会のしめのラーメン辛みじめ涙で歌う旅立ちの歌
2023-021:雫(詠弛)
雨やみて香る若葉の雫落つ鳥になりたきおぼろ夕暮
2023-022:重(詠弛)
実らぬも黄の鮮ぐや思ひ出はしなやかに咲け八重の山吹
2023-023:毎日(詠弛)
逢いたくも約束のない日めくりを甲斐のないまま毎日めくる

5月
2023-024:禿(詠弛)
筆箱に禿び筆一本残りたり旧り行く身にも降る青葉雨
2023-025:混(詠弛)
春秋の思い拾えば悲喜混じる二人の歴史はや五十年
2023-026:子ども(詠弛)
菖蒲湯に浸かって過ごす子どもの日老いたる身にもやすらぎのあり
2023-027:著(詠弛)
樹の下に密かに咲ける著莪の花ひそかながらの思ひ重ぬる
2023-028:役所(詠弛)
汚れ役所謂主人を引き立てる名脇役として生きた君かな
2023-029:絶(詠弛)
苦しくも共に生きたきその道の思ひ絶たれし夏の思ひ出
2023-030:グラム(詠弛)
時々のインスタグラムに記される穏やかに経(ふ)る君の明け暮れ
2023-031:貿(詠弛)
世の変化陵谷遷貿(りょうこくせんぼう)激しかり一人静かに珈琲淹れる
2023-032:抜(詠弛)
骨抜きにされて腑抜けて腰が抜け鼻毛抜かれた間抜け面かな
2023-033:ひらひら(詠弛)
夏蝶がひらひら一羽二羽三羽今日の予定は決めかねている
2023-034:倣(詠弛)
彼の人に倣ひて詠めどわが思ひ通はぬままに雨ふりやまず

6月
2023-035:測(詠弛)
推し測る気持ちの丈は不確かでもつれもつれて鴨足草(ゆきのした)咲く
2023-036:削除(詠弛)
誕生日祝えないまま甘々の削除できない記憶が辛い
2023-037:荻(詠弛)
風立てる河原に萌ゆる荻若葉瞼閉づれば面影若し
2023-038:ゲーテ(詠弛)
真相は辿りきれずにゲーティングされて私の願いは消えた
2023-039:吊(詠弛)
思ひ出は逆吊りの花褪せし色してゆらゆらと風に吹かるる
2023-040:紺(詠弛)
朝顔に紺の滲める蕾在り紺の絞の浴衣なつかし
2023-041:覗(詠弛)
不確かな君の心を覗ふも闇深くして窺い知れず
2023-042:爽やか(詠弛)
高原の風爽やかに逝きたまふ人偲ばるや吹き渡りたる
2023-043:掻(詠弛)
湧き出づる思ひの丈を湯の花の如くに搔きて集めたりしも
2023-044:批(詠弛)
頬批(う)てる掌(て)の冷たさやしずまれる逢魔が時の花散る記憶
2023-045:筏(詠弛)
思い出は花筏の実哀しみを葉の上の乗せ色変えていく

7月
2023-046:憐れ(詠弛)
生類を憐れむの令の真の意図改め問へる弱者救済
2023-047:塀(詠弛)
塀沿ひに片陰拾ひ行く道の奥に現る庚申の塔
2023-048:伺(詠弛)
かの人は如何にと機嫌伺ふも七夕の絲虚しく揺れて
2023-049:水仙(詠弛)
清らかな音を聞かせて湧く清水仙石原の花園に流る
2023-050:範(詠弛)
若きとき模範となれる人たれと諭されし日はなほ懐かしき
2023-051:履(詠弛)
誤りの多い履歴を消したれど人生の垢虚しく残る
2023-052:全体(詠弛)
精神は至極健全体力は虚弱になれど明日を夢見る
2023-053:党(詠弛)
甘党という悪党を愛したり己は酒を手放せなくも
2023-054:いよいよ(詠弛)
雲白くいよいよ夏も盛りなり熟れしトマトをてのひらに盛る
2023-055:釘(詠弛)
秘密よと釘刺されたが酔い任せその後のことはあずかり知らず
2023-056:謙(詠弛)
わが友に謙虚に生きる人ありて恙なく過ぐ有難きかな

8月
2023-057:ライン(詠弛)
夏闌けて今朝はなほ濃きアイライン暑さにめげぬ心意気かな
2023-058:箇(詠弛)
風鈴の音も澄めるやいつくしく緑色濃き五箇山の夏
2023-059:診(詠弛)
取り澄まし脈とり終えた代診の女先生笑顔をこぼす
2023-060:醤油(詠弛)
醤油つけ香りよく焼く玉蜀黍キャンプ場には子らの歓声
2023-061:庇(詠弛)
夕立を避けて庇に駆け込めば店の奥にはお酒のコーナー
2023-062:魔(詠弛)
よしきりの啼き止み里は逢ふ魔時呼び合ふ声のひそけく響く
2023-063:こぶし(詠弛)
夏空に見上ぐこぶしはほんのりと実を色づかせ時を待ちけり
2023-064:閣(詠弛)
喧騒を逃れ登れる楼閣に涼風受けて街眺めゐる
2023-065:状(詠弛)
艶状をいくら書いても返事なく募る想いはただ秋の空
2023-066:二階(詠弛)
二階から下着のままに手を振れる若きひとゐし坂の花街
2023-067:乞(詠弛)
白露を硯に移し書きし歌乞巧奠の残り香ほのか

9月
2023-068:捕(詠弛)
火の山の麓の村に哀しきや透ける蜻蛉の翅を捕らふる
2023-069:トンネル(詠弛)
廃線のトンネル残る山の道夏の終わりの旅の哀しさ
2023-070:請(詠弛)
被災弛の色とりどりの仮普請空の高さは恨めしいほど
2023-071:感謝(詠弛)
忌憚なく感謝の言葉告げられず別れたままに時は去り行く
2023-072:惰(詠弛)
腰さすり惰夫めく歩む秋の夜の風のそよぎに死の話して
2023-073:からくり(詠弛)
からくりの止まるや夏の店仕舞ひ水の流れの響き虚しく
2023-074:腫(詠弛)
腫れ物にそっと触ってみるようにあなたの肩に手をやった夏
2023-075:案内(詠弛)
案内の指さす方は山深し親しき里をはるか見おろす
2023-076:灰(詠弛)
火の山の灰降る里の秋深む浸かる露天の湯に紅葉散る
2023-077:畳(詠弛)
秋冷の銀杏転がる石畳骨董市の準備終はれり
2023-078:スマート(詠弛)
遠つ人待つ秋の夜やはかなくもスマートフォンに届かぬ声音

10月
2023-079:僅(詠弛)
老いの身に僅かの望み恃みつつながらふ秋の実の付かずして
2023-080:載(詠弛)
千載に残す名なくもなが胸になほ残れるをたのむ夕暮
2023-081:手ごたえ(詠弛)
手ごたえの無きまま暮れる秋の空思ひの丈の色の深きも
2023-082:侮(詠弛)
去り際の侮蔑の言葉聞き流し涙隠せる秋遥かなり
2023-083:浄(詠弛)
触れ合はず浄き心を抱きつつ月より遥か遠きを嘆く
2023-084:授業(詠弛)
授業なき教室の闇引寄せて輝く明日を夢に見し秋
2023-085:潤(詠弛)
潤む目で見る月影に遥かなる想ひはいよよ霞みゆくかな
2023-086:派手(詠弛)
若き日の派手なショールを巻く君の肩に揚羽はせはしなく舞ふ
2023-087:汰(詠弛)
忍ぶれど音沙汰無しの秋の暮空血の色に染まり美し
2023-088:メンバー(詠弛)
秋深みさびしき夜をむせびつつ心で歌ふリメンバーミー
2023-089:癒(詠弛)
癒ゆる日を願ひて歩む秋の原すすきかるかやまた吾亦紅

11月
2023-090:諮(詠弛)
何事も家族に諮る方針も疼く心はままならぬまま
2023-091:ささやか(詠弛)
ささやかの想ひも今は枯れ果てて木瓜の実萎れ冬を待ちゐる
2023-092:房(詠弛)
山里の一人居の夜や暖房の効き確かなりビール冷たし
2023-093:預(詠弛)
預かりしものを返せず時途絶ゆ風の音のみ聴く冬の夕
2023-094:希望(詠弛)
老いしこそかつてありたる希望てふたゆたふ影を恃みにもせめ
2023-095:滴(詠弛)
一滴の涙に光る冬の海晩暉没して罪びととなる
2023-096:雌(詠弛)
夏ごとに摘みし山椒の雌の木の枯れて山荘ひとり寂しむ
2023-097:天気(詠弛)
結構な天気つゞきの冬の日を無為に過ごせりこれもまた良し
2023-098:辱(詠弛)
この世にて晴らせぬままか辱め受けし夜のことふと蘇る
2023-099:備(詠弛)
ささやかな備忘録にも記されぬこと重なりて年は更け行く
2023-100:掛(詠弛)
老いらくのひそかに掛ける想ひ文綴りし束の屑籠に満つ

2023-完走報告(詠弛)
老いらくのひそかな恋を詠み捨てて虚しく越えし八十路の峠
あつさりとまた来る春を恃みつつ呟く如き完走報告

今年の題詠100 は「老いたる人のひそかなる恋心を詠める」をテーマに季節に合わせて詠もうと試みたのですがうまく持続できませんでした。



# by asitanokumo | 2023-11-25 10:41 | 題詠まとめ
2022&2003-参加表明(横雲&八慧)
また春が来ました。ここに参加できることを嬉しく感じています。
「題を詠み込んだ歌を1首ずつ、番号順に投稿する」のがここのルールですが、 今年はこれを2003年と2020年の両方のお題を詠み込 んだ歌にしてアップしようと思っています。それぞれの題で同一の歌を再度アップするのも煩雑なので、ルールの上でいいのか悪いのか判りませんが、22年と03年の同一番号のお題を示して一首表記の型で詠ませて戴こうと思います。宜しくお願いします。これでは2年のお題で100首ですので、普通の2年分200首にするため、横雲と八慧の相聞にして200首を試みてみます。
さて、物語が紡げるでしょうか。

2022-001:来 &2003-001:月(横雲)
来る春を祝ひて月に祈りたり健やかにして逢ふ日の待てる(横雲) 
2022-001:来 &2003-001:月(八慧)
廻り来る二十年(はたとせ)祝う月の宵梅がほのかに色づいている(八慧)
2022-002:扱 &2003-002:輪(横雲)
縮緬の紅の扱帯(しごき)の目にしるく酔ひを深むる花は大輪(横雲)
2022-002:扱 &2003-002:輪(八慧)
扱いに慣れた手つきが憎らしい帯解く宵に梅は三輪(八慧)
2022-003:巡 &2003-003:さよなら(八慧)
さよならを言わないままの人だから巡り合う日は笑顔でいたい(八慧) 
2022-003:巡 &2003-003:さよなら(横雲)
二人して巡りし古都の愛しさよなら漬はみし旧時(とき)の懐かし(横雲)
2022-004:積 &2003-004:木曜(横雲)
この春の聖木曜日の再会を夢見稲積む布団のぬくし(横雲)
2022-004:積 &2003-004:木曜(八慧)
木曜に会いたい願い積み重ね今年こそはの初夢の夢(八慧)
2022-005:時期 &2003-005:音(横雲)
この春も歌詠む時期の廻り来ぬ遥かに山の音や聞かまし(横雲)
2022-005:時期 &2003-005:音(八慧)
音信の途絶えたままで時期過ぎて春来るたびの花にやきもち(八慧)
2022-006:瞳 &2003-006:脱ぐ(八慧)
春コート脱いでにっこり振り返る潤んだ瞳に映る影なく(八慧)
2022-006:瞳 &2003-006:脱ぐ(横雲)
脱ぎ捨つる人をうらみの恋衣潤む瞳や何映したる(横雲)
2022-007:数 &2003-007:ふと(八慧)
花陰にうふふと笑う時思い蕾の数を恃みとはする(八慧)
2022-007:数 &2003-007:ふと(横雲)
数へつつふと恃みたり咲ける日の見はてぬ夢に涙かきやる(横雲)
2022-008:ひたすら &2003-008:足りる(八慧)
ひたすらに遊び足りない思い出を数えてつづけて寂しさの極(八慧)
2022-008:ひたすら &2003-008:足りる(横雲)
寂しさの足らざる夜はひたすらに影を求めて生きて来たれり(横雲)
2022-009:炊 &2003-009:休み(八慧)
炊き立てのご飯を前に思案する休みの朝は老後のようで(八慧)
2022-009:炊 &2003-009:休み(横雲)
店先に休みの札の貼られたり一炊の夢見しも虚しや(横雲)
2022-010:景色 &2003-010:浮く(横雲)
寄せる波引く波ごとに浮く鳥のたゆたふ心景色に溶くる(横雲) 
2022-010:景色 &2003-010:浮く(八慧)
桜貝拾う浜辺の夕景色浮いて沈んであなたは遠い(八慧)
2022-011:他 &2003-011:イオン(横雲)
きつかけはマイナスイオンに包まれて他生の縁を悟りたる夢(横雲)
2022-011:他 &2003-011:イオン(八慧)
きっかけに語ったことは他愛無いライオンキングのナラになる夢(八慧)
2022-012:軒 &2003-012:突破(横雲)
軒下の白き障子を突破る力萎えしも老いの枝に春(横雲)
2022-012:軒 &2003-012:突破(八慧)
青春は難関突破のお守りも効かず軒並失敗の山(八慧)
2022-013:いっそ &2003-013:愛(横雲)
愛(は)しきやし妹 (いも) を相見ず春嵐いつそ狂うて空にや舞はむ(横雲)
2022-013:いっそ &2003-013:愛(八慧)
山峡に愛を片寄せ春が吹くいっそ潰そか空缶カラカラ(八慧)
2022-014:近 &2003-014:段ボ-ル(八慧)
はなむけの日が近づいてあれこれと溜まった悔いを段ボール詰め(八慧)
2022-014:近 &2003-014:段ボ-ル(横雲)
山近き村の外れの道の駅段ボールには春野菜満つ(横雲)
2022-015:贈 &2003-015:葉(八慧)
贈りたい物を手にしてためらえば若草の葉に涙が光る(八慧)
2022-015:贈 &2003-015:葉(横雲)
やはらかき草の葉踏みて確かむは春の贈れるまことの光(横雲)
2022-016:若者 &2003-016:紅
梅日和京紅させば若者の恋に似ていて危険な香り(八慧)
2022-016:若者 &2003-016:紅
梅日和若者めきし髪結ひて無地の紬に紅型の帯(横雲)
2022-017:代 &2003-017:雲(横雲)
団塊の世代の孫の切り捨てる浮浪雲なり黙して生くる(横雲)
2022-017:代 &2003-017:雲(八慧)
雲と泥一世一代大勝負やっぱり泥は泥のまんまで(八慧)
2022-018:足 &2003-018:泣く
泣くときは泣くべし老いの足萎えて浮橋途絶ゆ春の夜の夢(横雲)
2022-018:足 &2003-018:泣く
憎らしく泣いて眠った春の夜の足る事を知るつまらない夢(八慧)
2022-019:諾 &2003-019:蒟蒻(横雲)
軽口の無理難題を諾なひて味噌蒟蒻の熱きを食めり(横雲)
2022-019:諾 &2003-019:蒟蒻(八慧)
我がままな願いを聞いて諾諾と作る糸蒟蒻入肉じゃが(八慧)
2022-020:段階 &2003-020:害(横雲)
段階を追はず急ぎて害へる心の傷に尾を引く哀歌(横雲)
2022-020:段階 &2003-020:害(八慧)
春の夜に三段階段踏み外し害う腰を撫でるエレジー(八慧)
2022-021:居 &2003-021:窓(八慧)
居鎮まり二人眺めた窓の月一人虚しい今日の春の香(八慧)
2022-021:居 &2003-021:窓(横雲)
隠居所の窓に居待の月出でて来る人なきも誘ふ花の香(横雲)
2022-022:挑 &2003-022:素(横雲)
挑発を知らぬふりしてやり過ごす鏡の奥の素顔憎らし(横雲)
2022-022:挑 &2003-022:素(八慧)
口惜しいと挑む眼差しやり過ごし素知らぬふりで笑って見せる(八慧)
2022-023:ロマン &2003-023:詩(横雲)
詩に託し語る男のロマンたれ春一番に揺るるブランコ(横雲)
2022-023:ロマン &2003-023:詩(八慧)
年を経てロマンスグレーの落ち着いた詩人になれと願ったけれど(八慧)
2022-024:彫 &2003-024:きらきら(横雲)
彫ふかき波きらきらと春の海かもめゆらりと飛びて声上ぐ(横雲)
2022-024:彫 &2003-024:きらきら(八慧)
春の風きらきらと吹き面影を偲んで飾る木彫の雛(ひいな)(八慧)
2022-025:乳 &2003-025:匿う(横雲)
授乳する君を匿ふ影ありて衣紋に春の風の香誘ふ(横雲)
2022-025:乳 &2003-025:匿う(八慧)
膝に置く四つ乳の胴を指で打ち胸に匿う魔を慰める(八慧)
2022-026:紹介 &2003-026:妻(八慧)
新妻と紹介された面影が記憶の中に歪んで残る(八慧)
2022-026:紹介 &2003-026:妻(横雲)
偽りの妻と紹介されし人面影もはや遠き思ひ出(横雲)
2022-027:託 &2003-027:忘れる(横雲)
忘れたるものは何処(いづこ)ぞ佇みてうきは我が身と託ち顔せる(横雲)
2022-027:託 &2003-027:忘れる(八慧)
屈託のない顔をしてひつそりと庭隅に咲き忘れられてる(八慧)
2022-028:中央 &2003-028:三回(横雲)
三回に分くる習はし煩はし卓中央に一日分盛る(横雲)
2022-028:中央 &2003-028:三回(八慧)
くるくると三回廻って春纏う中央通りの歩行者天国(八慧)
2022-029:秘 &2003-029:森(八慧)
思い出の春の息吹を秘めた森花を尋ねてひとり来ている(八慧)
2022-029:秘 &2003-029:森(横雲)
開帳の秘仏覗きし春陰の森の匂ひに魂洗はれき(横雲)
2022-030:以 &2003-030:表(八慧)
素っ気ない以下同文の表彰状笑顔でいても戸惑う嬉しさ(八慧)
2022-030:以 &2003-030:表(横雲)
その笑顔裏も表も無き証し握手に込めて以心伝心(横雲)
2022-031:あたふた &2003-031:猫(横雲)
あたふたと時過ぎゆくも老猫の背にある春の光のどけし(横雲)
2022-031:あたふた &2003-031:猫(八慧)
恋猫の声が途絶えてあたふたと立ち去る影にのどかな光(八慧)
2022-032:偏 &2003-032:星(横雲)
虹の字の虫偏もぞと持て余し眺める空に春の星あり(横雲)
2022-032:偏 &2003-032:星
日が生まれ星になるなら虹だって虫偏でいい蛇なのだから(八慧)
2022-033:粗 &2003-033:中ぐらい(横雲)
君が背にそそと粗塩投げかくや春の哀しみ中ぐらゐなる(横雲)
2022-033:粗 &2003-033:中ぐらい(八慧)
半額の粗で作った汁の味中ぐらいなら褒められたうち(八慧)
2022-034:惹 &2003-034:誘惑(横雲)
咲き満てる花に誘惑されし日の心惹かれし面影は今(横雲)
2022-034:惹 &2003-034:誘惑(八慧)
誘惑の匂いに耐えて離れるも惹かれる心今も変わらず(八慧)
2022-035:日常 &2003-035:駅(横雲)
日常の戻らぬままにこの駅に黙すマスクの人集まりぬ(横雲)
2022-035:日常 &2003-035:駅(八慧)
日常の些細なことが懐かしい別れる駅の片手振る影(八慧)
2022-036:醜 &2003-036:遺伝(八慧)
遺伝子に思い残して醜草の花言葉には「君を忘れず」(八慧)
2022-036:醜 &2003-036:遺伝(横雲)
遺伝てふ美醜も心に及ぶべし優しきことの感謝忘れず(横雲)
2022-037:述 &2003-037:とんかつ(横雲)
来し人に急ぎざぶとんかつぎだし思ふ心を述ばふ夕暮れ(横雲)
2022-037:述 &2003-037:とんかつ(八慧)
確かめて打つ音ことんかつおぶし心地よくして述べる後朝(きぬぎぬ)(八慧)
2022-038:襲 &2003-038:明日(横雲)
闇深し明日を恃めぬ侵襲に花守る人は髪白くせり(横雲)
2022-038:襲 &2003-038:明日(八慧)
理不尽に国境超えて襲い来るプーチンの狂明日が見えない(八慧)
2022-039:グループ &2003-039:贅肉(八慧)
たつぷりとついた贅肉削りたい決意新たのワークグループ(八慧)
2022-039:グループ &2003-039:贅肉(横雲)
贅肉のなきグループに誘はるも華奢なる身には嬉しからざり(横雲)
2022-040:探 &2003-040:走る(八慧)
闇の夜に影を探ってひた走る明けない夜はないと信じて(八慧)
2022-040:探 &2003-040:走る(横雲)
老いの手に探り当てたる幻を追ひてぞひたに走り惑へり(横雲)
2022-041:江 &2003-041:場(八慧)
毎日の犬の散歩は常夜灯旧江戸川の舟着場跡(八慧)
2022-041:江 &2003-041:場(横雲)
湊江(みなとえ)に葦の茂れる海苔干場ここにありしと媼語れり(横雲)
2022-042:懸 &2003-042:クセ(八慧)
行く先を懸念しながらユラユラとアクセサリーを揺らす夕暮れ(八慧)
2022-042:懸 &2003-042:クセ(横雲)
岨道を君に逢ふため懸命にアクセル踏める夢を見し朝(横雲)
2022-043:小説 &2003-043:鍋
小説のつづき見ている夢の中そこそこ楽し破れ鍋の蓋(横雲)
2022-043:小説 &2003-043:鍋
鍋焼を囲んだ二人夢の中そのまま書けば妖怪小説(八慧)
2022-044:把 &2003-044:殺す
薪何把積み並べたら一冬が息を殺して過ごせるのだろう(八慧)
2022-044:把 &2003-044:殺す
湧き来たる思ひをひそと噛み殺し固く手に把る別れの電話(横雲)
2022-045:辿 &2003-045:がらんどう(横雲)
がらんどうの心満たさむ時待てり桜舞ひ散る夢路辿りて(横雲)
2022-045:辿 &2003-045:がらんどう(八慧)
その夢の辿り着く果てがらんどう目覚めて山の春の音聞く(八慧)
2022-046:丹 &2003-046:南(八慧)
昔見た獅子に牡丹の背を偲ぶ槐の下の南柯の夢か(八慧)
2022-046:丹 &2003-046:南(横雲)
艶やかに袖翻し洛南の春に舞ひたり緋牡丹お竜(横雲)
2022-047:矢印 &2003-047:沿う(横雲)
矢印に導かれゆく花街道灯りに沿ふて添う影優し(横雲)
2022-047:矢印 &2003-047:沿う(八慧)
矢印が招き導く桜道神垣沿いに手をとりあって(八慧)
2022-048:陶 &2003-048:死(八慧)
彼の如く自己陶酔の果ての死と悟りて我も春に酔ひたし(八慧)
2022-048:陶 &2003-048:死(横雲)
生と死のあはひにありてたまきはる桜の下に受くる薫陶(横雲)
2022-049:綴 &2003-049:嫌い(横雲)
好き嫌ひ思ひのたけを書き綴り絶ちしも未練なほぞ残れる(横雲)
2022-049:綴 &2003-049:嫌い(八慧)
春菊に好き嫌いある卵綴じもてあます香をとじ込める朝(八慧)
2022-050:棒 &2003-050:南瓜(横雲)
呼ばるれば読書中断身を乗せてぶつきら棒に南瓜切りたり(横雲)
2022-050:棒 &2003-050:南瓜(八慧)
棒鱈を千切っただけのサラダには南瓜の花に似る金蓮花(八慧)
2022-051:かもめ &2003-051:敵(横雲)
春の海春の空へと飛ぶかもめ敵味方なく交々に舞ふ(横雲)
2022-051:かもめ &2003-051:敵(八慧)
この人が恋敵かもめくばりが油断できずに飛ぶに飛べない(八慧)
2022-052:茂 &2003-052:冷蔵庫(横雲)
聴きゐれば音や淋しき冷蔵庫夜の茂みに泣く虫に似る(横雲)
2022-052:茂 &2003-052:冷蔵庫(八慧)
草茂る春がことさら淋しいと冷蔵庫が泣いている夜(八慧)
2022-053:映 &2003-053:サナトリウム(横雲)
照映ゆるサナトリウムや風立ちて「いざ生きめやも」の声を聞きたり(横雲)
2022-053:映 &2003-053:サナトリウム(八慧)
語れない心の傷は癒やせるか夕映えに立つサナトリウムに(八慧)
2022-054:雰囲気 &2003-054:麦茶(八慧)
街並みに夜の雰囲気なくなって捨てられている麦茶のボトル(八慧)
2022-054:雰囲気 &2003-054:麦茶(横雲)
春寒に冷えた麦茶の出だされて醸し出される不仲の雰囲気(横雲)
2022-055:閑 &2003-055:置く(横雲)
掌に置くがごとくに花散りて居ぬ人偲ぶ昼の閑けさ(横雲)
2022-055:閑 &2003-055:置く(八慧)
閑けさにふれて散りくる花びらは椅子に掛け置くショールを零れ(八慧)
2022-056:亡 &2003-056:野(八慧)
荒れた野にひとり佇み亡き人をはるか偲んで聞くほととぎす(八慧)
2022-056:亡 &2003-056:野(横雲)
落日の野火の煙は遠かれど濃き山影に偲ぶ亡き魂(横雲)
2022-057:憧 &2003-057:蛇
とどかない星に憧れ蛇皮線を弾く春の夜に石楠花の風(八慧)
2022-057:憧 &2003-057:蛇
憧るる人の影追ふ春の宵蛇の目の傘に雨柔らかし(横雲)
2022-058:毒 &2003-058:たぶん(横雲)
キノコ狩りあまったぶんは毒のある色と見えてか捨てられてをり(横雲)
2022-058:毒 &2003-058:たぶん(八慧)
髪切るはたぶんあなたのつぶやいた言葉の毒にあてられたせい(八慧)
2022-059:出身 &2003-059:夢(八慧)
出身地聞かれて浮かぶ里の景今では夢の中にしかなく(八慧)
2022-059:出身 &2003-059:夢(横雲)
崩れゆく出身校の旧校舎夢の跡など友と辿れり(横雲)
2022-060:濡 &2003-060:奪う(八慧)
海棠の雨に濡れてる花びらに心奪われ人は佇む(八慧)
2022-060:濡 &2003-060:奪う(横雲)
理不尽に命奪はる戦ひの終はらぬ春や頬濡らす雨(横雲)
2022-061:継 &2003-061:祈る(横雲)
春盛り真間の継橋涙石越えて祈れる伏姫桜(横雲)
2022-061:継 &2003-061:祈る(八慧)
老木の枝垂れ桜が咲き満ちて祈る思いは語り継がれる(八慧)
2022-062:シンデレラ &2003-062:渡世(横雲)
憧れしシンデレラ姫物語今では渡世の垢に埋まる(横雲)
2022-062:シンデレラ &2003-062:渡世(八慧)
シンデレラタイムがあった若い時渡世の苦など知らずにいたが(八慧)
2022-063:伸 &2003-063:海女(横雲)
背伸びして髪結ふ若き海女の目に青き空舞ふかもめの白し(横雲)
2022-063:伸 &2003-063:海女(八慧)
引伸ばす写真の隅に海女がいて少年の日の夏の思い出(八慧)
2022-064:罵 &2003-064:ド-ナツ(八慧)
母娘罵り合ったその後で二人黙々ドーナツかじる(八慧)
2022-064:罵 &2003-064:ド-ナツ(横雲)
浴びせらる罵詈雑言を気にもせずドーナツ食める人おおらけき(横雲)
2022-065:枚 &2003-065:光(横雲)
春月の光に溶けてほの香る千枚漬け糸のネバネバ(横雲)
2022-065:枚 &2003-065:光(八慧)
二枚目を気取る男は肩落とし月の光を虚しく浴びる(八慧)
2022-066:平凡 &2003-066:僕(横雲)
平凡に生きて死ぬるが一番と神の僕となりし人説く(横雲)
2022-066:平凡 &2003-066:僕(八慧)
それなりの波乱はあってもつつがなく平平凡凡僕等の時代(八慧)
2022-067:密 &2003-067:化粧(八慧)
三密を避けて三年化粧せずコロナ恐れてひっそり生きる(八慧)
2022-067:密 &2003-067:化粧(横雲)
源氏山抜けて密やか化粧坂花見の後の余韻楽しむ(横雲)
2022-068:帝 &2003-068:似る
ひたすらに寒きに耐えて立ち尽くすオスの皇帝ペンギンに似て(横雲)
2022-068:帝 &2003-068:似る
柴又の帝釈天へ向かう道寅さんに似る男が二人(八慧)
2022-069:大事 &2003-069:コイン(八慧)
鍵失くしコインロッカー開けられず大事の書類出せずに破談(八慧)
2022-069:大事 &2003-069:コイン(横雲)
この度の業務拡大事業にてビットコインも利用可とせり(横雲)
2022-070:儲 &2003-070:玄関(横雲)
偽りて丸儲けせる不正義を玄関先にただし叱れり(横雲)
2022-070:儲 &2003-070:玄関(八慧)
玄関に桜散りきてなんとなく儲けた気して晴れた空見る(八慧)
2022-071:トルコ &2003-071:待つ(横雲)
邪を避くるトルコの青き石胸に待つや遥かの時越え行ける(横雲)
2022-071:トルコ &2003-071:待つ(八慧)
孫待てばトルコ行進曲かけてマックへ走る1時間半(八慧)
2022-072:遣 &2003-072:席(横雲)
昼寄席に空席目立つ春の日や遣る瀬無きまま一人笑へる(横雲)
2022-072:遣 &2003-072:席(八慧)
遣り返す言葉がなくて席を蹴り残念会をひとり立ち去る(八慧)
2022-073:歪 &2003-073:資(八慧)
人生を楽しむ資質備えても老いの歪みになすすべもなく(八慧)
2022-073:歪 &2003-073:資(横雲)
歪まざる思ひ貫き磊落の資質楽しみ我が道をいく(横雲)
2022-074:荷物 &2003-074:キャラメル(八慧)
旅先に忘れた荷物送られて御当地のキャラメル友となる(八慧)
2022-074:荷物 &2003-074:キャラメル(横雲)
キャラメルの包みで作る折鶴をそつと置きたり手荷物の上(横雲)
2022-075:償 &2003-075:痒い(横雲)
むず痒き思ひの果てに花は散りなほ深くせる償ひの傷(横雲)
2022-075:償 &2003-075:痒い(八慧)
呪わしい花粉のピーク目が痒い零す涙は何の償い(八慧)
2022-076:睨 &2003-076:てかてか(八慧)
てかてかのリンゴ片手に睨めっここれは盗んだものではないの(八慧)
2022-076:睨 &2003-076:てかてか(横雲)
禿頭のてかてか光る春の日は睨み合ふほど意気阻喪せり(横雲)
2022-077:与 &2003-077:落書き(八慧)
惜しみなく与えた愛も尽き果てて虚しく恋の落書を消す(八慧)
2022-077:与 &2003-077:落書き(横雲)
落書きに天は二物を与えぬとあれど一物枯れて夢なし(横雲)
2022-078:青春 &2003-078:殺(八慧)
殺伐の世情を厭いぶらり旅老人五人青春切符(八慧)
2022-078:青春 &2003-078:殺(横雲)
青春の影遥かなる殺陣の舞もつれる足に老いの深まり(横雲)
2022-079:尋 &2003-079:眼薬(八慧)
ひつそりと眼薬の木が花つける里を尋ねて若葉に染まる(八慧)
2022-079:尋 &2003-079:眼薬(横雲)
尋ね来し杉の花粉の満つる里眼薬欲しと泣くもうららか(横雲)
2022-080:疎 &2003-080:織る(横雲)
疎に密に織る赤き糸縺るるや音の途切れて耳を澄ませる(横雲)
2022-080:疎 &2003-080:織る(八慧)
新緑がなぜか哀しく揺れていて雨の疎林に物語織る(八慧)
2022-081:比喩 &2003-081:ノック(横雲)
何事の比喩にもあらず啄木鳥のノックに応ゆる桃色の声(横雲)
2022-081:比喩 &2003-081:ノック(八慧)
その夢に確か聞こえた比喩でなく心のドアをノックする音(八慧)
2022-082:涼 &2003-082:ほろぶ(横雲)
わが生の心涼しくほろびゆくその影のごと風の光れり(横雲)
2022-082:涼 &2003-082:ほろぶ(八慧)
ほろぶ身を涼しい顔で語りつつ五月の風のゼリーをつくる(八慧)
2022-083:ドレス &2003-083:予言(八慧)
草原にドレスの裾をなびかせて風の予言に身を許す春(八慧)
2022-083:ドレス &2003-083:予言(横雲)
まがことの予言の重く現し世のエンドレスなる惨禍を恨む(横雲)
2022-084:眺 &2003-084:円(横雲)
春の空円しと眺め見まはして雲の行方を想ひ定めぬ(横雲)
2022-084:眺 &2003-084:円
回廊の円い柱に身を寄せてふたり眺める春の夕月(八慧)
2022-085:浴 &2003-085:銀杏(横雲)
夏近し銀杏若葉の下に立ち訪ひ待ちて木漏日を浴ぶ(横雲)
2022-085:浴 &2003-085:銀杏(八慧)
初夏の陽を浴びて銀杏の並木道きららきらめき若葉が踊る(八慧)
2022-086:鮮明 &2003-086:とらんぽりん(八慧)
とらんぽりん深く沈んで鮮明な影を残して青空へ飛ぶ(八慧)
2022-086:鮮明 &2003-086:とらんぽりん(横雲)
鮮明な夢の目覚めや空高くとらんぽりん飛ぶ雲つかまむと(横雲)
2022-087:堕 &2003-087:朝(八慧)
花に酔う夢にさまよい自堕落の極みに遊ぶ楽しい朝寝(八慧)
2022-087:堕 &2003-087:朝(横雲)
地に堕ちし名をかこちつつ浮橋の涙にくるる後朝(きぬぎぬ)の空(横雲)
2022-088:耽 &2003-088:象(八慧)
読み耽る心のうちは迷い道曖昧模糊の老化現象(八慧)
2022-088:耽 &2003-088:象(横雲)
まとまらぬ有象無象の言の葉に行く末暗く思ひ耽りぬ(横雲)
2022-089:赴 &2003-089:開く(横雲)
この夏は久々うたげ開くてふ心躍りて勇み赴く(横雲)
2022-089:赴 &2003-089:開く(八慧)
赴けば優しい笑顔に迎えられ明るい声に愁眉を開く(八慧)
2022-090:しぶき &2003-090:ぶつかる(横雲)
訳もなくぶつかる心持て余し夏の初めの雨しぶき浴ぶ(横雲)
2022-090:しぶき &2003-090:ぶつかる(八慧)
夏が来て今年は一人大波が岩にぶつかるしぶきを浴びる(八慧)
2022-091:秩 &2003-091:煙(八慧)
SLの煙を潜る鯉のぼり秩父の川は夏の輝き(八慧)
2022-091:秩 &2003-091:煙(横雲)
無秩序なこの世恨むかたなびける浅間の煙夏空に溶く(横雲)
2022-092:冷 &2003-092:人形(横雲)
若葉冷え古りゆくものを睨みゐる武者人形の兜光れり(横雲)
2022-092:冷 &2003-092:人形(八慧)
青い目のフランス人形裾広げ冷たい雨をじっと見詰める(八慧)
2022-093:無駄 &2003-093:恋(横雲)
たのみなく恋に恋して老いゆける褪せて実らぬ無駄花愛(は)しき(横雲) 
2022-093:無駄 &2003-093:恋(八慧)
老いらくの恋を夢見た無駄あがきなぜか気持ちは半分青い(八慧)
2022-094:誓 &2003-094:時(横雲)
月朧ろ立てし誓ひを恃みつつ時の満つるを待ちてながむる(横雲)
2022-094:誓 &2003-094:時(八慧)
その昔誓った言葉は忘れられふたりの時が取り戻せない(八慧)
2022-095:凄 &2003-095:満ちる(八慧)
夏の夜の夢かうつつか時満ちて涙一滴凄艶の声(八慧)
2022-095:凄 &2003-095:満ちる(横雲)
白妙の引いては満ちる潮に似て凄みを増して寄せる年波(横雲)
2022-096:飯 &2003-096:石鹸(横雲)
髭剃りの石鹸の香も爽やかな旅の朝なり菜飯の美味し(横雲)
2022-096:飯 &2003-096:石鹸(八慧)
石鹸玉飛んでキラキラ陽に溶ける夕飯前の旅のひととき(八慧)
2022-097:特別 &2003-097:支(八慧)
特別な理由はなくも老い支度整えている小雨降る昼(八慧)
2022-097:特別 &2003-097:支(横雲)
手遊びの干支占ひに特別の人との出会ひありとはあれど(横雲)
2022-098:酔 &2003-098:傷(横雲)
汝が影は甘き古傷覚めぬ夢一酔千日なほ酔ひの中(横雲)
2022-098:酔 &2003-098:傷(八慧)
酔痴れて眠れば夢に胸奥の恋の傷跡かすかに疼く(八慧)
2022-099:白 &2003-099:かさかさ(八慧)
別れ際これは心の豊かさかさして気取らず嘘を告白(八慧)
2022-099:白 &2003-099:かさかさ(横雲)
樟落葉かさかさ踏むも面白く別るる前の闇路に惑ふ(横雲)
2022-100:翌 &2003-100:短歌(横雲)
明日知れぬ身にはあれども来る春を短歌に綴る翌桧の夢(横雲)
2022-100:翌 &2003-100:短歌(八慧)
百題を詠み終える今翌春も短歌にひたる夢を見ている(八慧)

2022&2003-完走報告(横雲)&(八慧)
横雲と八慧のペアで2年分のお題をもとに詠みあってみるという形で始めましたが、なかなか難しく、物語を織るということができませんでしたが、なんとか二百題二百首は詠み終えました。
ブログ「朝の雲」にまとめます。
# by asitanokumo | 2022-05-20 07:16 | 題詠まとめ
題詠100首《2021年》
2021-参加表明(横雲)
 コロナ禍の中で思いは内に内に籠っていく。気力も衰えていく。
 このままでは今年はこの企画に加われないかと思っていたが、失った時を未練がましくなお「恋」として詠ってみようかと・・「恋」の力を借りて、年度が替わったのを機に詠み始めます。よろしく。文語口語は気にしないことにします。
 題して「影を慕ひて」。

2021-001:求(横雲)
 求めても求めてもなほ八穂蓼のからしや人に逢はぬ日積みて
(「みな月の河原におふる八穂蓼のからしや人に逢はぬ心は 詠み人知らず(古今和歌六帖)」六月の河原に生えているたくさん穂の出た蓼(たで)のからいこと。そのようにからい(つらい)なあ、あの人に逢えない私の心は。)
2021-002:悲(横雲)
 甦る七年前の思い出は悲しい色をうちに秘めてて
2021-003:店(横雲)
 にっこりと木曽の茶店に笑む顔がふと蘇る春の夜の夢
2021-004:普通(横雲)
 難しいことに気付いて立ち竦む普通の人生普通の生活
2021-005:絵(横雲)
 幸せに過ぎてた頃に添い寝した絵本の夢を探す春の夜
2021-006:宛(横雲)
 不用意に宛名不明の呟きが口から洩れて空を見上げる
2021-007:隔(横雲)
 追憶の世界に探す君の影時が隔てる笑顔はおぼろ
2021-008:案(横雲)
 雨の中名前を呼んで思案橋行きつ戻りつ唄うブルース
2021-009:きっかけ(横雲)
 きっかけのお店の名前懐かしい花咲く里に道は続いて
2021-010:回(横雲)
 いつの日か回春の杖振り回し月に乗じて君を訪ねむ
2021-011:外(横雲)
 ときめきの道を外れた山の里朧月夜に連翹は咲く
  (連翹の花言葉は「希望」)
2021-012:洩(横雲)
 失ひし影を求めて一筋の木洩れ陽の道一人還りぬ
2021-013:匹(横雲)
 陽だまりに安らぎ眠る猫二匹僕らの夢はどこをさまよう
2021-014:料理(横雲)
 春の味写真に撮って送られて同じ料理でリモート楽しむ
2021-015:机(横雲)
 城跡の記念の栞大切に机の奥に仕舞われていて
2021-016:拡(横雲)
 宣言を解けば拡大するコロナ繰り返される計画中止
2021-017:ガラス(横雲)
 ガラス越しに過ぎてゆく春眺めてるこの幸せを名付けられずに
2021-018:区(横雲)
 十年(ととせ)経て帰還困難区域には止まった時が静かに眠る
2021-019:未(横雲)
 喜寿過ぎし未生れの老いらくの心とどめて咲く未草
2021-020:忙(横雲)
 忙中に望んだ閑を持て余す耳目衰え夢も萎んで
2021-021:国会(横雲)
 コロナ禍の国会中継流し聞く唯に虚しい昼の無作為
2021-022:族(横雲)
 おしゃべりも気楽にするのは家族だけ君の笑顔はマスクが隠す
2021-023:導(横雲)
 うつつには逢ふよしもなみ朝鳥の音に導かれ夢にだに泣く
2021-024:脚(横雲)
 浅き瀬の橋脚洗ふさざ波の音柔らかく里は春なり
2021-025:昼(横雲)
 るんるんの幸せ描く絵の如く孫と遊べり桜舞ふ昼
2021-026:挙(横雲)
 幼な子と歩める君の姿見ゆ木洩れ陽を浴び挙りて光る
2021-027:宜(横雲)
 コロナ禍に直に会へぬは宜(うべ)なれど夢にもなどか汝(な)は通はざる
2021-028:立(横雲)
 木洩れ日に立夏を待たぬ夏ありて思へば眩し遠き人影
2021-029:姓(横雲)
 姓たがふ夫婦の如く振舞ひて並べ記せる春もありけり
2021-030:ウイルス(横雲)
 ウイルスの型の違いにおろおろと振り回されて春が過ぎさる
2021-031:主(横雲)
 言喧く(ことさえく)もつれもつれた主義主張からまる糸の解く術もなく
2021-032:恒(横雲)
 武蔵野の面影しのぶ恒春園五月の空に風がきらめく
2021-033:多分(横雲)
 葉桜の風に乗るよう揺れる影多分あなたの記憶のかけら
2021-034:信(横雲)
 諦めのいい人だねと風信子夜風に乗って微香が誘う
2021-035:替(横雲)
 決断が手替え品替え伸ばされて悪化深めて夏を迎える
2021-036:裁(横雲)
 無垢といふ色にかがやく指先に神の裁きのときめきを見る
2021-037:送(横雲)
 会えるのはこれが最後と見送れば元気な声が「またね!」と答え
2021-038:反(横雲)
 反故にした約束だけが残されたノートに白いシミが滲んで
2021-039:憶(横雲)
 根拠なく憶測だけで語られる未来像には笑顔があるが
2021-040:コミック(横雲)
 コミックも描(か)けないほどのバカらしい聖火の無残人心荒廃
2021-041:斜(横雲)
 街角の斜向かいから手を振って応える笑顔待ち合わせ前
2021-042:該(横雲)
 当該の事象をここはさて置いて恋の歌など若く明るく
2021-043:慕(横雲)
 八重垣の梔子(くちなし)の香に穂の影を慕へば遠く稲妻むくゆ
2021-044:平均(横雲)
 かろうじて平均点は超えてても×(バッテン)だけが記憶に残る
2021-045:項(横雲)
 汝(な)を如何にせんと嘆ける項羽と虞面影揺れてわれも雛罌粟(コクリコ)
2021-046:描(横雲)
 雛罌粟が高原を染め来る来ないあふれる涙で描く面影
2021-047:旦(横雲)
 まだ青い文旦の実を手に取れば少女の香りかすか漂う
2021-048:出(横雲)
 目出度くもまたも出会える歓びを出湯に浸かり願う夏の夜
2021-049:徒(横雲)
 徒(あだ)し世を恨むでもなく年廻り新茶楽しむ夏は来にける
2021-050:技(横雲)
 山河を越えゆく恋の離れ技見つけられずに奇跡を頼む
2021-051:グリーン(横雲)
 肩寄せて見る紫陽花の色薄くミントグリーン雨に溶けてる
2021-052:燃(横雲)
 荒寥の夢さめてなおわが生はまだ燃え尽きずくすぶっている
2021-053:工(横雲)
 行く道が道路工事に遮られ途切れた思い行方知れず
2021-054:娘(横雲)
 傘寿超え微笑む人に懐かしい娘のころの面影を見る
2021-055:拾(横雲)
 人偲び青葉の中を拾い行き言葉の色のとりどり供ふ
2021-056:速(横雲)
 空席の多い真昼の山越える高速バスは緑に染まる
2021-057:順番(横雲)
 ワクチンの順番待ちはままならぬだからといって死ぬわけでなく
2021-058:箋(横雲)
 古書に挿す一筆箋に記された知らない人の文字を親しむ
2021-059:復(横雲)
 いつか復桜の下で笑み交わす願いを胸に歌い続けて
2021-060:六(横雲)
 たちまちに六月になる日曜日葉を透く空に憂さを忘れる
2021-061:いっぱい(横雲)
 緊急時取舵いっぱい旋回し後のヨーソロー聞きたきと夏
2021-062:禍(横雲)
 再びの疫禍の夏を森に棲む一人で歌う声木霊して
2021-063:正(横雲)
 正解のでない現実如何にせむ会えない日々にただ立ち竦む
2021-064:笹(横雲)
 小笹原露に濡れつつ越え行けるあはでこし夜の道のはるけし
2021-065:否(横雲)
 開催の賛否の民意無視されてゴリ押しされるかコロナ禍五輪
2021-066:ウルトラ(横雲)
 新緑に染まるウルトラクラシック浅間高原ライダーズカフェ
2021-067:炒(横雲)
 人気無き避暑地のカフェに一人来て緑陰で食む和風炒飯
2021-068:去(横雲)
 手を振って少女は森に溶けて去り過ぎてく時が木霊している
2021-069:農(横雲)
 様々の農具が並ぶ古民家の採れたて出来たて山菜料理
2021-070:筋(横雲)
 二た筋の水尾重なりて夕暮るる山影崩す夏の湖
2021-071:女(横雲)
 朴葉寿司手作りしていた女生徒の昔を偲び葉の香楽しむ
2021-072:物語(横雲)
 書き記すその物語終えぬまま時は移ろひわが夢は散る
2021-073:滞(横雲)
 何ゆえに五輪を前に滞るコロナ対策暗愚の政治
2021-074:圧(横雲)
 なにゆえに民に「犠牲」を圧しつけて国は五輪を強行するの
2021-075:忌(横雲)
 避忌剤を浴びて抜けたる藪潜り籠に一山枇杷の実盛れる
2021-076:ごみ箱(横雲)
 わが書きし伝奇小説ごみ箱へ捨てて笑みたり女教師は
2021-077:上(横雲)
 雨上がり
2021-078:菓(横雲)
 逢えぬ日の誕生祝の洋菓子に幾つ立てよう蠟燭色々
2021-079:隠(横雲)
 草深く雨をためたる隠沼にはまりたる身は濡れに濡れたり
2021-080:尚(横雲)
 尚強い心維持して七難も八苦も越えて行く人やよし
2021-081:あさって(横雲)
 梅雨の中あさってからは降らないと予報信じてお出掛け用意
2021-082:太(横雲)
 わが命太く長くと欲張って老残の身の余りがしょぼい
2021-083:欧(横雲)
 南欧の空晴れ渡り黄の壁に影を濃くして君は佇む
2021-084:顔(横雲)
 寄り添って見ればほのかに夕顔が露光らせて幸せ運ぶ
2021-085:蘇(横雲)
 千切りの紫蘇にめかぶの夏小鉢派手な浴衣もお酒のお供
2021-086:簿(横雲)
 終活の連絡名簿に記された名前を一つ消している朝
2021-087:苦手(横雲)
 不都合な苦手意識の克服に素敵だった時思い浮かべる
2021-088:膚(横雲)
 無残にも削られ崩れた山膚になほ夏の雨今も止まざり
2021-089:粋(横雲)
 老の伽(とぎ)粋な男と見栄張って甲斐性なしにただ夢を追う
2021-090:稼(横雲)
 只管に稼ぐことだけ血眼の時代を神は嘆き諫むや
2021-091:看(横雲)
 気が付けば看板の字が読めなくて視力検査と三歩近づく
2021-092:装(横雲)
 よそ行きの秋の装い用意して再会の日の夢を楽しむ
2021-093:ラベル(横雲)
 予約してまたキャンセルを繰り返すトラベルサイトに夢の傷痕
2021-094:規(横雲)
 歌を詠む規範だなんて知らなくてただひたすらに心のままに
2021-095:価(横雲)
 生きざまの真価問われて露呈する見せかけだけの張りぼて人生
2021-096:年(横雲)
 老残の年相応に籠り居て夏の終わりの日照雨(そばえ)を浴びる
2021-097:働(横雲)
 夢散って働かないで生きるのももう厭きましたと老いてなげやり
2021-098:詫(横雲)
 ドタバタの終末感に染められて終わらぬ悲喜劇お詫びのことば
2021-099:昇(横雲)
 望みなく悶えて過ごす闇の夜もやがて昇る陽底にはらめり
2021-100:嬉(横雲)
 あな嬉し今日生きている歓びを歌にする人ここに集へり

2021-完走報告(横雲)
 当初の思いを辿れたのか覚束ないのですがとにもかくにも完走しました。ありがとうございました。
 100首はブログ「朝の雲」にまとめます。


# by asitanokumo | 2021-09-14 16:29 | 題詠まとめ
2010-参加表明(八慧)
2009に引き続き2010の百首にトライします。
これを完走すると、この題詠百首の企画、2003年~2020年の18年分・1800余首を詠み通すことになります。口語に軸足を追いて「八慧」の名で詠みますが、口語文語にとらわれず詠んでみようかと思っています。

2010-001:春(八慧)
高原にさゝやく如く春紫苑咲きて寂しく風に揺らげる
2010-002:暇(八慧)
うとうとと所詮暇な身持て余し昼寝の時間際限のなし
2010-003:公園(八慧)
公園の広場に蝉の声ひとつ我が行末の見えて見ぬふり

2010-004:疑(八慧)
疑いの晴らせないまま押し黙り艶々光る羊羹を切る
2010-005:乗(八慧)
立ち上がる波に波乗り立ち上がりもてあそばれて波間にこける
2010-006:サイン(八慧)
メールから飛びだしてくるVサイン笑顔の君は昔の儘で

2010-007:決(八慧)
決め処定まらぬままながらへばなすことのなき覚悟揺らぎぬ
2010-008:南北(八慧)
南北に連なる山の頂にわが命かと石ひとつ積む

2010-009:菜(八慧)
郭公の声に目覚めし高原の朝日眩しみ菜を刻む夏
2010-010:かけら(八慧)
木漏れ日のかけら騒めく山荘に遠く響ける歓びの歌
2010-011:青(八慧)
月の夜の一人の我をいたづらに寂しがらせて啼く青葉木菟

2010-012:穏(八慧)
音を鳴くも憂きことつきず草深き隠り沼のおもひそかにごれる
2010-013:元気(八慧)
元気かと問へるメールに返事なく半夏の雨の静々と降る

2010-014:接(八慧)
継ぎ接ぎの議論虚しく時過ぎて決まらないこと確かめる夏
2010-015:ガール(八慧)
シャガールの恋人のごと寄り添って明けゆく空を飛びたった夢
2010-016:館(八慧)
静かなる天井高き夏館窓を開けば合歓がけぶれる

2010-017:最近(八慧)
最近は目礼だけですれ違う不要不急の会話を裂けて
2010-018:京(八慧)
蒸し暑い京都の街の片隅にカタカタ回る扇風機の音
2010-019:押(八慧)
この夏の鬼押出は閉鎖され浅間の微動さらに重なる

2010-020:まぐれ(八慧)
ひと仕事終えて汗拭く夕まぐれ太き夏木が妖しくそよぐ
2010-021:狐(八慧)
鎮座する狐を撫でて祈れるは実らぬ思ひ行末のこと

2010-022:カレンダー(八慧)
カレンダーめくれど梅雨の明けやらず柱に凭れ世を見詰めをり
2010-023:魂(八慧)
魂極る命惜しみて手花火の火玉消ゆるを哀しみにけり
2010-024:相撲(八慧)
閉じこもり手持無沙汰の指相撲握ったままで雨の音聞く

2010-025:環(八慧)
恋しくも明けゆく朝や苧環(おだまき)の昔を今になすすべもなく
2010-026:丸(八慧)
笑む君のさらり描ける花丸の渦重りて憂きを飛ばしぬ
2010-027:そわそわ(八慧)
明易の川辺をひとりそわそわと何を待つともなくいそぎ行く

2010-028:陰(八慧)
片陰が尽きて遠くに雲の峰気付けば海の音が聞こえて
2010-029:利用(八慧)
鍵錆びて利用できない出入口絡まる蔦に過ぎ来しの影
2010-030:秤(八慧)
天秤に掛けた二人にさよならを言われてひとり取り残される

2010-031:SF(八慧)
夏空の果てのSFアルタイル君を求めて彷徨ってみる
2010-032:苦(八慧)
ひととせは早過ぎ行きてこの夏の七夕にさへ逢えぬが苦し

2010-033:みかん(八慧)
葉の陰の未だ小さな青みかん老いの秘密は実らないまま
2010-034:孫(八慧)
夏の夜の青い公孫樹の香の下に行く方祈り一人佇む
2010-035:金(八慧)
金色の波となる日を待つ青田夏の嵐になぶられている

2010-036:正義(八慧)
そのことに正義はなきも譲られぬ思ひ残して取り残さるる
2010-037:奥(八慧)
その恋は女の胸の奥の奥知られないまま眠り続ける
2010-038:空耳(八慧)
遠くから呼ばれる声を空耳とおもいて哀しふりかえる街

2010-039:怠(八慧)
夢果てて気怠い朝を倦む夏を厭うや君の音沙汰もなく
2010-040:レンズ(八慧)
かすむ目のレンズ磨くも弱り目の晴るることなく誠の見えず
2010-041:鉛(八慧)
画用紙と色鉛筆を用意してテラスに座る高原の朝 

2010-042:学者(八慧)
ご都合でどうにでもなるご意見が御用学者にもてはやされる
2010-043:剥(八慧)
世に充ちる虚言剥ぎ取り真実を語れば悲惨末法の末

2010-044:ペット(八慧)
夏の野をサロペット履き駆け足で近付く君に雲が眩しい
2010-045:群(八慧)
群蜻蛉仰げば遠き雲の峰君の隣で大の字に寝る
2010-046:じゃんけん(八慧)
じゃんけんに負けてしゃがんで鬼になり隠れた君がまだ探せない

2010-047:蒸(八慧)
夏草の蒸れた匂いに少年の怒る背がある苦しい記憶
2010-048:来世(八慧)
来世また君と逢おうか苦しみの世を共々にまた深くして
2010-049:袋(八慧)
逢いたいと蛍袋にともす灯の思いが揺らぐ夏の高原

2010-050:虹(八慧)
山峡に晴間を見せて梅雨の虹なほ幽かなる名残惜しめり
2010-051:番号
一律に番号付けて管理する方策厭いカードは持たず
2010-052:婆
卒塔婆が風に鳴る日の冷奴集まれる者黙し語らず

2010-053:ぽかん
蹲踞(つくばい)にひとつぽかんと浮かぶ桃夏の日暮れて客の来たらず
2010-054:戯
戯れに恋はすまじと言われても涙のうちにじゃれあっていた

2010-055:アメリカ
夏の朝飲む珈琲はアメリカン柑橘サラダに笑顔を添える
2010-056:枯
その町の栄枯盛衰語りつつシャッター街に西日の強し
2010-057:台所
台所の窓から朝の匂いして呼び覚まされる「おはよう」の声

2010-058:脳
失へる名を求めつつ彷徨へり脳(なづき)濁りて影朧なり
2010-059:病
病葉(わくらば)を拾い重なる厄忌むも美しきもの掌にあり
2010-060:漫画
毎朝の四コマ漫画に世の様を知りて哀しき悔恨重ぬ

2010-061:奴
酒よりも先に出されし冷奴青き山椒の香の沁みにけり
2010-062:ネクタイ
握りしむ黒きネクタイ結ぶ日の汗を拭へる白きハンカチ

2010-063:仏
我が生の未だ終らず燃ゆるもの胸にぞありて咲く仏桑花
2010-064:ふたご
一皿に添えたふたごの卵焼き二人で食べる高原の朝
2010-065:骨
喉もとの小骨の如く思い出が夏の終わりを早くも告げる

2010-066:雛
軽鴨の雛の声する川の淵草陰深く影は見えねど
2010-067:匿名
公開の匿名希望のメッセージ秘めた思いを知ってほしくて
2010-068:怒
歌ごとに喜怒哀楽が記されてうつろい早く月日は廻る

2010-069:島
島影を遠く眺める丘の上茂った草の騒めく匂い
2010-070:白衣
匂い立ち背高く繁る夏草の合間を過ぎる行者の白衣
2010-071:褪
吊り橋を渡って行けば夢褪せて何もない野が広がっていた

2010-072:コップ
暑気払うコップの氷溶けていく木陰に人の影少なくて
2010-073:弁
杜の中七福神の弁天を探し尋ねて滲ませる汗

2010-074:あとがき
あとがきを読んで本文読まぬまま読んだつもりで仕舞う新刊
2010-075:微
雨けぶりひとひ翠微に坐したれば濡れて悶えし思いしみいる
2010-076:スーパー
山深みひとり眺むや逢えぬ夜の夏空明かしスーパームーン

2010-077:対
対局を眺めて過ぎし一日に深きドラマのありきと解かれる
2010-078:指紋
サヨナラの言葉もなしに君去りぬグラスに指紋微か残れる
2010-079:第
思い出は成り行き次第の人生に思いかけずも添えられた花

2010-080:夜
夏の夜の森の匂ひに思ひ出の遥かの天を眺め暮らしつ
2010-081:シェフ
涼やかに真白きシェフの夏帽子笑顔に添えて運ぶデザート
2010-082:弾
手を振って息弾ませて駆け寄った笑顔を今も胸に秘めつつ

2010-083:孤独
夏更けて老いて孤独を知る夜を眠れないまま本読みはてる
2010-084:千
千の星に千の名ありて夏の夜は闇の匂ひに包まれている

2010-085:訛
呟いた訛の意味が解けなくて知らん顔して話し進める
2010-086:水たまり
陽の匂う雨の上がった草原に隠されていた水たまり踏む
2010-087:麗
年一度会うこと得るや麗しき彩りの糸君の織りせば

2010-088:マニキュア
マニキュアの指に愁いを積らせて観世音如頬杖をつく
2010-089:泡
夏はもう夢でしかなく泡風呂に一人寂しく埋まっている
2010-090:恐怖
夏の真夜突然に来る死の恐怖忘れてゐしも近づく予感

2010-091:旅
この夏は旅に出たくもままならぬ嘆きふかめて晴れぬ空見る
2010-092:烈
粲粲の烈日の下に咲くダリア妖しきのまでに燃ゆる緋の色

2010-093:全部
惑星を全部見渡す夜明け前コロナの夏はひとりぼっちだ
2010-094:底
耳底に鳴るは何かの息遣い眠れぬものの胸底に棲む
2010-095:黒
夏帽子黒きリボンは蝶に似て寂寥という日盛りの夢

2010-096:交差
この先の行方は知れず交差する記憶を訊ね夏のふりゆく
2010-097:換
乗換を間違へしゆゑ行き着ける夢の終着静もれる闇

2010-098:腕
会える日を腕まくりして待つ夏が恐る恐るに梅雨を抜け出す
2010-099:イコール
すれ違う君と私がイコールでないこともまた歓びとする
2010-100:福
手作りの雪見大福厚ぼたし求肥に少し君の味して

2010-完走報告(八慧)
2011年 02月 18日に「題詠blog2011」に参加したのが始まりでした。歌を詠み始めて間も無い頃で、「うたのわ」から導かれてのことす。
それ以降毎年参加していました。
2018年4月からは日々のブログ更新がままならないこともあって、未参加の2003年のお題からぼちぼち詠み進めてきていました。
この2010年分を完走したところで、2003年からのこの題詠百首の企画のこれ迄の18年分、全1800余題を詠み通したことになりました。
ありがとうございました。


# by asitanokumo | 2020-08-02 07:52 | 題詠まとめ
2009-参加表明(横雲)
今年のお題が詠み終えたので、続いて「横雲」の名で未詠の【2009年の「題詠100首blog」】の企画に文語詠みでトライします。お題にはカタカナも多いようなので文語でいけるか疑問ですが、王朝風を離れて口語的発想で詠んでみようかと思っています。一日二・三首のペースで行ければと思いますが・・・疫禍に翻弄されるこの頃、どうなりますことやら。

2009-001:笑(横雲)
笑むことの久しく無くも懐かしき人を想ひて心和ます
2009-002:一日(横雲)
この一日暮れてかなしや夏燕生き長らへて何事もなし
2009-003:助(横雲)
助手席に座るや笑まふ横顔の間近にありて若葉まぼしき

2009-004:ひだまり(横雲)
ひだまりに夢見たものの残れるか捉へむとして濃き影の消ゆ
2009-005:調(横雲)
一人来て人いぬ郷の谷川の調べ聞き入る夏の夕暮
2009-006:水玉(横雲)
振り向きてえまひをこぼすスカートは水玉模様初夏の色

2009-007:ランチ(横雲)
笑み光るランチタイムのカフェテラス新樹を漏れる陽を頬に受け
2009-008:飾(横雲)
自粛中出窓に飾る一輪はふたりで摘みし思い出の花
2009-009:ふわふわ(横雲)
ふはふはの気持ちのままに別れしは空木咲く道未練残して

2009-010:街(横雲)
人影の少なき街の公園に村を偲べる青葉茂れり
2009-011:嫉妬(横雲)
魂きはる心変りの会へぬ夜の無音に嫉妬置けぬ追ひ酒

2009-012:達(横雲)
張りぼての伊達な姿に見栄はつて天を仰ぎてさらす生恥
2009-013:カタカナ(横雲)
今年また好みの色に咲く花のカタカナの名の覚えがたかり
2009-014:煮(横雲)
酒冷えて生姜風味の煮冷しと冷麦揃ふ夕餉めでたし

2009-015:型(横雲)
旧型のエアコン室外機の音響く路地裏夏の始まり
2009-016:Uターン(横雲)
Uターンの教え子訪ぬ山深き廃校の庭夏草茂る
2009-017:解(横雲)
奇妙なる自粛解除の報ぜられなほ逢えぬ日々続くかに見ゆ

2009-018:格差(横雲)
コロナ禍に国の地域の学校の情報格差際立ちにけり
2009-019:ノート(横雲)
鉛筆やノートを誰もが持つやふに一人一人にPCやある

2009-020:貧(横雲)
我が影の貧しきを倦み夏の夜の半月雲に隠れぬたまひぬ
2009-021:くちばし(横雲)
右左首振り立てて何の実を啄みたるや椋のくちばし
2009-022:職(横雲)
五月病職退きて久しきに残日録を倦むも哀しき

2009-023:シャツ(横雲)
湯上りのシャツをめくりて飲むビール問ふこと多き世をばさておき
2009-024:天ぷら(横雲)
そら豆の天ぷら摘まむ夕餉なり新たまねぎの甘き香もして
2009-025:氷(横雲)
触れ合はすグラスに氷溶けゆきて別れ惜しめる歌呟けり

2009-026:コンビニ(横雲)
コンビニの駐輪場の横に咲く十薬白しほの星明り
2009-027:既(横雲)
既視感のある街角に佇みて君待つ心湧きてきたりき
2009-028:透明(横雲)
透明な羽たたむやふ汝が影の裸形はひそと闇に生まれつ

2009-029:くしゃくしゃ(横雲)
泣き疲れ眠りに落ちし翌朝はくしやくしやの髪無心に梳る
2009-030:牛(横雲)
草の原老牛の背を初夏の風吹きすぎて浅間けぶれる

2009-031:てっぺん(横雲)
里山のてつぺんの木々伐られけり拓けし先に見ゆる遠富士
2009-032:世界(横雲)
月おぼろ病める世界を憂ひつつ人に離れて影法師踏む
2009-033:冠(横雲)
慶びも悼みも辛し疫禍裏の人を呼ばざる冠婚葬祭

2009-034:序(横雲)
春の夜に笑みて別れてはや十年(ととせ)話の序でに知る君の今
2009-035:ロンドン(横雲)
ロンドンに着きし便りのその後の十年を知らずして過ぎにしよ
2009-036:意図(横雲)
笑み裏に隠るる意図を探りかね別れし春の宵の懐かし

2009-037:藤(横雲)
藤波のゆかりの色をたづねつもたえたる恋のゆくへの見えず
2009-038:→(横雲)
→(やじるし)に導かれたる異空間出逢ひの場所と思ひ定めむ
2009-039:広(横雲)
広き野に忘れ草揺る浅間裾音なき風と子牛遊べり

2009-040:すみれ(横雲)
去年の夏すみれ摘みたる峠道忘られしごと通ふ人なし
2009-041:越(横雲)
夏旅の越ゆる県境いくつ目か人の通はぬ峠さびしき

2009-042:クリック(横雲)
星空を見上げて語る愛の再生&サイクリック宇宙論
2009-043:係(横雲)
係り受けの言葉のやふには呼応せず二人の笑まひ冷たきままに
2009-044:わさび(横雲)
水音のしげきが中の花わさびはるけき思ひさざめけるなり

2009-045:幕(横雲)
あやめ活けし誕生の日の祝宴の幕閉じられて広がる無音
2009-046:常識(横雲)
相容れずなほ別れざる黙しかな常識なしと非難されつも
2009-047:警(横雲)
椋鳥の啄みたるか警醒の遠ざかれるに樹のざわめきぬ

2009-048:逢(横雲)
逢ひたくてふと逢へさうで逢へぬままミミズに出逢ふ夏の日盛り
2009-049:ソムリエ(横雲)
ソムリエの如く蘊蓄傾けしワインの栓に滴る涙

2009-050:災(横雲)
季(とき)過ぎぬ災患の渦衰へずなほ語る日の定まらぬまま
2009-051:言い訳(横雲)
言ひ訳をいはぬふるまひ女伊達にこり笑ひて忽ちに去る
2009-052:縄(横雲)
ゆつくりと大縄跳びの輪が回り入って抜けてもう一回り

2009-053:妊娠(横雲)
はや沙羅の花は咲きたり一人身の友の妊娠知りしあの頃
2009-054:首(横雲)
次々と落ちし御首(みしるし)重なりて相対死に添ふ夏椿
2009-055:式(横雲)
葬式の終れる庭に夏椿落つるをながむかはたれの時

2009-056:アドレス(横雲)
アドレスに間違へあるや届かざるメールを前にいかづちを聞く
2009-057:縁(横雲)
縁先を濡らせる夏の雨過ぎて忘るるころに響く遠雷

2009-058:魔法(横雲)
渾身の魔法は利かず眠られず夢にも人に会へぬは苦し
2009-059:済(横雲)
コロナ禍の右往左往や儘ならぬ済世救民暗愚の無策
2009-060:引退(横雲)
引退後無為徒食の日重ねしもなほ楽しみの僅か残れり

2009-061:ピンク(横雲)
うつすらとピンクが滲む夏の花更紗空木に雨はひそけく
2009-062:坂(横雲)
道玄の坂を下りて別れゆく手を振る人の影おぼろなり
2009-063:ゆらり(横雲)
緑なる蛍火ゆらり揺れて消え又点りつつ闇深めゆく

2009-064:宮(横雲)
緑蔭の宮居を訪ふも人気なく高きところを風の吹くなり
2009-065:選挙(横雲)
剥がるかに選挙ポスターはたはたとはためくばかり夏深まれり

2009-066:角(横雲)
待合す夏の初めの街角の花屋の風に思ひの敢へず
2009-067:フルート(横雲)
街角の風はフルート哀しみの色に染まれる夏の夜の夢
2009-068:秋刀魚(横雲)
哀れなる秋刀魚の歌を口遊み熱く侘しき涙流せり

2009-069:隅(横雲)
咲き誇る隅田の花火一輪を手折りて古き壺に活けたり
2009-070:CD(横雲)
七変化咲く夏の宵懐かしきCD聴ききて君を憶へり
2009-071:痩(横雲)
紫陽花の群れ咲く中に痩せし身を埋めて月の光に染まる

2009-072:瀬戸(横雲)
進退の瀬戸際に立ち竦む夏後ろ姿のなほ遠ざかる
2009-073:マスク(横雲)
蒸し暑きマスク外せず沈黙の列に混じりて街を歩めり

2009-074:肩(横雲)
手を肩に置きしまま行く栗林花の匂ひに包まれてゐる
2009-075:おまけ(横雲)
しまひぎわおまけの話おもしろく語るに落ちて講話終りぬ
2009-076:住(横雲)
花栗の匂ひ漂ふ山住ひ夜の明けゆきてほのかに白し

2009-077:屑(横雲)
梅雨晴の空にあまねき星屑に迷へる心紛らはしける
2009-078:アンコール(横雲)
アルコールと見間違えたるアンコールノロ対策に手を洗ふ日々
2009-079:恥(横雲)
恥らひの色を見せつつ心太啜れる紅に新樹の光

2009-080:午後(横雲)
やむとみせてまた降る雨を持余し午後の長きに紫陽花を剪る
2009-081:早(横雲)
早蕨の萌えいづる野に降る雨の音をしみじみ二人聞きゐし

2009-082:源(横雲)
夏草や腐敗政治の根源を絶つかに鎌を振りおろしたり
2009-083:憂鬱(横雲)
見上げたる空を覆へる憂鬱の厚きを忌むやもゆるものある
2009-084:河(横雲)
夜の更けて鳴ける河鹿の哀しみに今も混じれる遥けき想ひ

2009-085:クリスマス(横雲)
さりげなく君と会ふクリスマスまであと半年とときめいてみる
2009-086:符(横雲)
幾枚も付箋重ねて読む本の如き心の御しがたきかな
2009-087:気分(横雲)
スカートを翻らせてヒロインの気分で歩く高原の夏

2009-088:編(横雲)
三つ編の少女の老いてみる夢は妖しき月とかくれんぼする
2009-089:テスト(横雲)
プロテストの波街を埋め出口の無くて地下壕に逃ぐる人あり

2009-090:長(横雲)
長良川言えない言葉口遊み涙流れて心せせらぐ
2009-091:冬(横雲)
夏空を見上げて冬の大三角語るあなたの瞳輝く
2009-092:夕焼け(横雲)
人恋ふや梅雨の晴れ間の夕焼けになほ懐かしき遠き日のこと

2009-093:鼻(横雲)
マスクよりはみ出す鼻に粒の汗分け入る麻の暖簾さやげり
2009-094:彼方(横雲)
みどり敷く彼方へつづく路ありて山の遥かに思ひかよへり
2009-095:卓(横雲)
朝日さす卓に置かれたもぎたてのトマトの赤に濡れる指先

2009-096:マイナス(横雲)
渓に下りマイナスイオン浴びる夏濁れる心洗ふが如く
2009-097:断(横雲)
断りの返事のメール消せなくて行く先見えず迷ひ入る道
2009-098:電気(横雲)
冬の日の静電気に似て指先に走る衝撃震える想ひ

2009-099:戻(横雲)
スカートを翻らせて戻る路夏野の風になぶられている
2009-100:好(横雲)
抱きしむる夏野に白き花満ちて好き撓(たわ)むとはいはずにあらめ

2009-完走報告(横雲)
歌はむとすること揺れに揺れつつも老いたる恋の百首をはりぬ
# by asitanokumo | 2020-06-26 07:46 | 題詠まとめ