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「横雲」のやまとうた


by asitanokumo
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2010-参加表明(八慧)
2009に引き続き2010の百首にトライします。
これを完走すると、この題詠百首の企画、2003年~2020年の18年分・1800余首を詠み通すことになります。口語に軸足を追いて「八慧」の名で詠みますが、口語文語にとらわれず詠んでみようかと思っています。

2010-001:春(八慧)
高原にさゝやく如く春紫苑咲きて寂しく風に揺らげる
2010-002:暇(八慧)
うとうとと所詮暇な身持て余し昼寝の時間際限のなし
2010-003:公園(八慧)
公園の広場に蝉の声ひとつ我が行末の見えて見ぬふり

2010-004:疑(八慧)
疑いの晴らせないまま押し黙り艶々光る羊羹を切る
2010-005:乗(八慧)
立ち上がる波に波乗り立ち上がりもてあそばれて波間にこける
2010-006:サイン(八慧)
メールから飛びだしてくるVサイン笑顔の君は昔の儘で

2010-007:決(八慧)
決め処定まらぬままながらへばなすことのなき覚悟揺らぎぬ
2010-008:南北(八慧)
南北に連なる山の頂にわが命かと石ひとつ積む

2010-009:菜(八慧)
郭公の声に目覚めし高原の朝日眩しみ菜を刻む夏
2010-010:かけら(八慧)
木漏れ日のかけら騒めく山荘に遠く響ける歓びの歌
2010-011:青(八慧)
月の夜の一人の我をいたづらに寂しがらせて啼く青葉木菟

2010-012:穏(八慧)
音を鳴くも憂きことつきず草深き隠り沼のおもひそかにごれる
2010-013:元気(八慧)
元気かと問へるメールに返事なく半夏の雨の静々と降る

2010-014:接(八慧)
継ぎ接ぎの議論虚しく時過ぎて決まらないこと確かめる夏
2010-015:ガール(八慧)
シャガールの恋人のごと寄り添って明けゆく空を飛びたった夢
2010-016:館(八慧)
静かなる天井高き夏館窓を開けば合歓がけぶれる

2010-017:最近(八慧)
最近は目礼だけですれ違う不要不急の会話を裂けて
2010-018:京(八慧)
蒸し暑い京都の街の片隅にカタカタ回る扇風機の音
2010-019:押(八慧)
この夏の鬼押出は閉鎖され浅間の微動さらに重なる

2010-020:まぐれ(八慧)
ひと仕事終えて汗拭く夕まぐれ太き夏木が妖しくそよぐ
2010-021:狐(八慧)
鎮座する狐を撫でて祈れるは実らぬ思ひ行末のこと

2010-022:カレンダー(八慧)
カレンダーめくれど梅雨の明けやらず柱に凭れ世を見詰めをり
2010-023:魂(八慧)
魂極る命惜しみて手花火の火玉消ゆるを哀しみにけり
2010-024:相撲(八慧)
閉じこもり手持無沙汰の指相撲握ったままで雨の音聞く

2010-025:環(八慧)
恋しくも明けゆく朝や苧環(おだまき)の昔を今になすすべもなく
2010-026:丸(八慧)
笑む君のさらり描ける花丸の渦重りて憂きを飛ばしぬ
2010-027:そわそわ(八慧)
明易の川辺をひとりそわそわと何を待つともなくいそぎ行く

2010-028:陰(八慧)
片陰が尽きて遠くに雲の峰気付けば海の音が聞こえて
2010-029:利用(八慧)
鍵錆びて利用できない出入口絡まる蔦に過ぎ来しの影
2010-030:秤(八慧)
天秤に掛けた二人にさよならを言われてひとり取り残される

2010-031:SF(八慧)
夏空の果てのSFアルタイル君を求めて彷徨ってみる
2010-032:苦(八慧)
ひととせは早過ぎ行きてこの夏の七夕にさへ逢えぬが苦し

2010-033:みかん(八慧)
葉の陰の未だ小さな青みかん老いの秘密は実らないまま
2010-034:孫(八慧)
夏の夜の青い公孫樹の香の下に行く方祈り一人佇む
2010-035:金(八慧)
金色の波となる日を待つ青田夏の嵐になぶられている

2010-036:正義(八慧)
そのことに正義はなきも譲られぬ思ひ残して取り残さるる
2010-037:奥(八慧)
その恋は女の胸の奥の奥知られないまま眠り続ける
2010-038:空耳(八慧)
遠くから呼ばれる声を空耳とおもいて哀しふりかえる街

2010-039:怠(八慧)
夢果てて気怠い朝を倦む夏を厭うや君の音沙汰もなく
2010-040:レンズ(八慧)
かすむ目のレンズ磨くも弱り目の晴るることなく誠の見えず
2010-041:鉛(八慧)
画用紙と色鉛筆を用意してテラスに座る高原の朝 

2010-042:学者(八慧)
ご都合でどうにでもなるご意見が御用学者にもてはやされる
2010-043:剥(八慧)
世に充ちる虚言剥ぎ取り真実を語れば悲惨末法の末

2010-044:ペット(八慧)
夏の野をサロペット履き駆け足で近付く君に雲が眩しい
2010-045:群(八慧)
群蜻蛉仰げば遠き雲の峰君の隣で大の字に寝る
2010-046:じゃんけん(八慧)
じゃんけんに負けてしゃがんで鬼になり隠れた君がまだ探せない

2010-047:蒸(八慧)
夏草の蒸れた匂いに少年の怒る背がある苦しい記憶
2010-048:来世(八慧)
来世また君と逢おうか苦しみの世を共々にまた深くして
2010-049:袋(八慧)
逢いたいと蛍袋にともす灯の思いが揺らぐ夏の高原

2010-050:虹(八慧)
山峡に晴間を見せて梅雨の虹なほ幽かなる名残惜しめり
2010-051:番号
一律に番号付けて管理する方策厭いカードは持たず
2010-052:婆
卒塔婆が風に鳴る日の冷奴集まれる者黙し語らず

2010-053:ぽかん
蹲踞(つくばい)にひとつぽかんと浮かぶ桃夏の日暮れて客の来たらず
2010-054:戯
戯れに恋はすまじと言われても涙のうちにじゃれあっていた

2010-055:アメリカ
夏の朝飲む珈琲はアメリカン柑橘サラダに笑顔を添える
2010-056:枯
その町の栄枯盛衰語りつつシャッター街に西日の強し
2010-057:台所
台所の窓から朝の匂いして呼び覚まされる「おはよう」の声

2010-058:脳
失へる名を求めつつ彷徨へり脳(なづき)濁りて影朧なり
2010-059:病
病葉(わくらば)を拾い重なる厄忌むも美しきもの掌にあり
2010-060:漫画
毎朝の四コマ漫画に世の様を知りて哀しき悔恨重ぬ

2010-061:奴
酒よりも先に出されし冷奴青き山椒の香の沁みにけり
2010-062:ネクタイ
握りしむ黒きネクタイ結ぶ日の汗を拭へる白きハンカチ

2010-063:仏
我が生の未だ終らず燃ゆるもの胸にぞありて咲く仏桑花
2010-064:ふたご
一皿に添えたふたごの卵焼き二人で食べる高原の朝
2010-065:骨
喉もとの小骨の如く思い出が夏の終わりを早くも告げる

2010-066:雛
軽鴨の雛の声する川の淵草陰深く影は見えねど
2010-067:匿名
公開の匿名希望のメッセージ秘めた思いを知ってほしくて
2010-068:怒
歌ごとに喜怒哀楽が記されてうつろい早く月日は廻る

2010-069:島
島影を遠く眺める丘の上茂った草の騒めく匂い
2010-070:白衣
匂い立ち背高く繁る夏草の合間を過ぎる行者の白衣
2010-071:褪
吊り橋を渡って行けば夢褪せて何もない野が広がっていた

2010-072:コップ
暑気払うコップの氷溶けていく木陰に人の影少なくて
2010-073:弁
杜の中七福神の弁天を探し尋ねて滲ませる汗

2010-074:あとがき
あとがきを読んで本文読まぬまま読んだつもりで仕舞う新刊
2010-075:微
雨けぶりひとひ翠微に坐したれば濡れて悶えし思いしみいる
2010-076:スーパー
山深みひとり眺むや逢えぬ夜の夏空明かしスーパームーン

2010-077:対
対局を眺めて過ぎし一日に深きドラマのありきと解かれる
2010-078:指紋
サヨナラの言葉もなしに君去りぬグラスに指紋微か残れる
2010-079:第
思い出は成り行き次第の人生に思いかけずも添えられた花

2010-080:夜
夏の夜の森の匂ひに思ひ出の遥かの天を眺め暮らしつ
2010-081:シェフ
涼やかに真白きシェフの夏帽子笑顔に添えて運ぶデザート
2010-082:弾
手を振って息弾ませて駆け寄った笑顔を今も胸に秘めつつ

2010-083:孤独
夏更けて老いて孤独を知る夜を眠れないまま本読みはてる
2010-084:千
千の星に千の名ありて夏の夜は闇の匂ひに包まれている

2010-085:訛
呟いた訛の意味が解けなくて知らん顔して話し進める
2010-086:水たまり
陽の匂う雨の上がった草原に隠されていた水たまり踏む
2010-087:麗
年一度会うこと得るや麗しき彩りの糸君の織りせば

2010-088:マニキュア
マニキュアの指に愁いを積らせて観世音如頬杖をつく
2010-089:泡
夏はもう夢でしかなく泡風呂に一人寂しく埋まっている
2010-090:恐怖
夏の真夜突然に来る死の恐怖忘れてゐしも近づく予感

2010-091:旅
この夏は旅に出たくもままならぬ嘆きふかめて晴れぬ空見る
2010-092:烈
粲粲の烈日の下に咲くダリア妖しきのまでに燃ゆる緋の色

2010-093:全部
惑星を全部見渡す夜明け前コロナの夏はひとりぼっちだ
2010-094:底
耳底に鳴るは何かの息遣い眠れぬものの胸底に棲む
2010-095:黒
夏帽子黒きリボンは蝶に似て寂寥という日盛りの夢

2010-096:交差
この先の行方は知れず交差する記憶を訊ね夏のふりゆく
2010-097:換
乗換を間違へしゆゑ行き着ける夢の終着静もれる闇

2010-098:腕
会える日を腕まくりして待つ夏が恐る恐るに梅雨を抜け出す
2010-099:イコール
すれ違う君と私がイコールでないこともまた歓びとする
2010-100:福
手作りの雪見大福厚ぼたし求肥に少し君の味して

2010-完走報告(八慧)
2011年 02月 18日に「題詠blog2011」に参加したのが始まりでした。歌を詠み始めて間も無い頃で、「うたのわ」から導かれてのことす。
それ以降毎年参加していました。
2018年4月からは日々のブログ更新がままならないこともあって、未参加の2003年のお題からぼちぼち詠み進めてきていました。
この2010年分を完走したところで、2003年からのこの題詠百首の企画のこれ迄の18年分、全1800余題を詠み通したことになりました。
ありがとうございました。


# by asitanokumo | 2020-08-02 07:52 | 題詠まとめ
2009-参加表明(横雲)
今年のお題が詠み終えたので、続いて「横雲」の名で未詠の【2009年の「題詠100首blog」】の企画に文語詠みでトライします。お題にはカタカナも多いようなので文語でいけるか疑問ですが、王朝風を離れて口語的発想で詠んでみようかと思っています。一日二・三首のペースで行ければと思いますが・・・疫禍に翻弄されるこの頃、どうなりますことやら。

2009-001:笑(横雲)
笑むことの久しく無くも懐かしき人を想ひて心和ます
2009-002:一日(横雲)
この一日暮れてかなしや夏燕生き長らへて何事もなし
2009-003:助(横雲)
助手席に座るや笑まふ横顔の間近にありて若葉まぼしき

2009-004:ひだまり(横雲)
ひだまりに夢見たものの残れるか捉へむとして濃き影の消ゆ
2009-005:調(横雲)
一人来て人いぬ郷の谷川の調べ聞き入る夏の夕暮
2009-006:水玉(横雲)
振り向きてえまひをこぼすスカートは水玉模様初夏の色

2009-007:ランチ(横雲)
笑み光るランチタイムのカフェテラス新樹を漏れる陽を頬に受け
2009-008:飾(横雲)
自粛中出窓に飾る一輪はふたりで摘みし思い出の花
2009-009:ふわふわ(横雲)
ふはふはの気持ちのままに別れしは空木咲く道未練残して

2009-010:街(横雲)
人影の少なき街の公園に村を偲べる青葉茂れり
2009-011:嫉妬(横雲)
魂きはる心変りの会へぬ夜の無音に嫉妬置けぬ追ひ酒

2009-012:達(横雲)
張りぼての伊達な姿に見栄はつて天を仰ぎてさらす生恥
2009-013:カタカナ(横雲)
今年また好みの色に咲く花のカタカナの名の覚えがたかり
2009-014:煮(横雲)
酒冷えて生姜風味の煮冷しと冷麦揃ふ夕餉めでたし

2009-015:型(横雲)
旧型のエアコン室外機の音響く路地裏夏の始まり
2009-016:Uターン(横雲)
Uターンの教え子訪ぬ山深き廃校の庭夏草茂る
2009-017:解(横雲)
奇妙なる自粛解除の報ぜられなほ逢えぬ日々続くかに見ゆ

2009-018:格差(横雲)
コロナ禍に国の地域の学校の情報格差際立ちにけり
2009-019:ノート(横雲)
鉛筆やノートを誰もが持つやふに一人一人にPCやある

2009-020:貧(横雲)
我が影の貧しきを倦み夏の夜の半月雲に隠れぬたまひぬ
2009-021:くちばし(横雲)
右左首振り立てて何の実を啄みたるや椋のくちばし
2009-022:職(横雲)
五月病職退きて久しきに残日録を倦むも哀しき

2009-023:シャツ(横雲)
湯上りのシャツをめくりて飲むビール問ふこと多き世をばさておき
2009-024:天ぷら(横雲)
そら豆の天ぷら摘まむ夕餉なり新たまねぎの甘き香もして
2009-025:氷(横雲)
触れ合はすグラスに氷溶けゆきて別れ惜しめる歌呟けり

2009-026:コンビニ(横雲)
コンビニの駐輪場の横に咲く十薬白しほの星明り
2009-027:既(横雲)
既視感のある街角に佇みて君待つ心湧きてきたりき
2009-028:透明(横雲)
透明な羽たたむやふ汝が影の裸形はひそと闇に生まれつ

2009-029:くしゃくしゃ(横雲)
泣き疲れ眠りに落ちし翌朝はくしやくしやの髪無心に梳る
2009-030:牛(横雲)
草の原老牛の背を初夏の風吹きすぎて浅間けぶれる

2009-031:てっぺん(横雲)
里山のてつぺんの木々伐られけり拓けし先に見ゆる遠富士
2009-032:世界(横雲)
月おぼろ病める世界を憂ひつつ人に離れて影法師踏む
2009-033:冠(横雲)
慶びも悼みも辛し疫禍裏の人を呼ばざる冠婚葬祭

2009-034:序(横雲)
春の夜に笑みて別れてはや十年(ととせ)話の序でに知る君の今
2009-035:ロンドン(横雲)
ロンドンに着きし便りのその後の十年を知らずして過ぎにしよ
2009-036:意図(横雲)
笑み裏に隠るる意図を探りかね別れし春の宵の懐かし

2009-037:藤(横雲)
藤波のゆかりの色をたづねつもたえたる恋のゆくへの見えず
2009-038:→(横雲)
→(やじるし)に導かれたる異空間出逢ひの場所と思ひ定めむ
2009-039:広(横雲)
広き野に忘れ草揺る浅間裾音なき風と子牛遊べり

2009-040:すみれ(横雲)
去年の夏すみれ摘みたる峠道忘られしごと通ふ人なし
2009-041:越(横雲)
夏旅の越ゆる県境いくつ目か人の通はぬ峠さびしき

2009-042:クリック(横雲)
星空を見上げて語る愛の再生&サイクリック宇宙論
2009-043:係(横雲)
係り受けの言葉のやふには呼応せず二人の笑まひ冷たきままに
2009-044:わさび(横雲)
水音のしげきが中の花わさびはるけき思ひさざめけるなり

2009-045:幕(横雲)
あやめ活けし誕生の日の祝宴の幕閉じられて広がる無音
2009-046:常識(横雲)
相容れずなほ別れざる黙しかな常識なしと非難されつも
2009-047:警(横雲)
椋鳥の啄みたるか警醒の遠ざかれるに樹のざわめきぬ

2009-048:逢(横雲)
逢ひたくてふと逢へさうで逢へぬままミミズに出逢ふ夏の日盛り
2009-049:ソムリエ(横雲)
ソムリエの如く蘊蓄傾けしワインの栓に滴る涙

2009-050:災(横雲)
季(とき)過ぎぬ災患の渦衰へずなほ語る日の定まらぬまま
2009-051:言い訳(横雲)
言ひ訳をいはぬふるまひ女伊達にこり笑ひて忽ちに去る
2009-052:縄(横雲)
ゆつくりと大縄跳びの輪が回り入って抜けてもう一回り

2009-053:妊娠(横雲)
はや沙羅の花は咲きたり一人身の友の妊娠知りしあの頃
2009-054:首(横雲)
次々と落ちし御首(みしるし)重なりて相対死に添ふ夏椿
2009-055:式(横雲)
葬式の終れる庭に夏椿落つるをながむかはたれの時

2009-056:アドレス(横雲)
アドレスに間違へあるや届かざるメールを前にいかづちを聞く
2009-057:縁(横雲)
縁先を濡らせる夏の雨過ぎて忘るるころに響く遠雷

2009-058:魔法(横雲)
渾身の魔法は利かず眠られず夢にも人に会へぬは苦し
2009-059:済(横雲)
コロナ禍の右往左往や儘ならぬ済世救民暗愚の無策
2009-060:引退(横雲)
引退後無為徒食の日重ねしもなほ楽しみの僅か残れり

2009-061:ピンク(横雲)
うつすらとピンクが滲む夏の花更紗空木に雨はひそけく
2009-062:坂(横雲)
道玄の坂を下りて別れゆく手を振る人の影おぼろなり
2009-063:ゆらり(横雲)
緑なる蛍火ゆらり揺れて消え又点りつつ闇深めゆく

2009-064:宮(横雲)
緑蔭の宮居を訪ふも人気なく高きところを風の吹くなり
2009-065:選挙(横雲)
剥がるかに選挙ポスターはたはたとはためくばかり夏深まれり

2009-066:角(横雲)
待合す夏の初めの街角の花屋の風に思ひの敢へず
2009-067:フルート(横雲)
街角の風はフルート哀しみの色に染まれる夏の夜の夢
2009-068:秋刀魚(横雲)
哀れなる秋刀魚の歌を口遊み熱く侘しき涙流せり

2009-069:隅(横雲)
咲き誇る隅田の花火一輪を手折りて古き壺に活けたり
2009-070:CD(横雲)
七変化咲く夏の宵懐かしきCD聴ききて君を憶へり
2009-071:痩(横雲)
紫陽花の群れ咲く中に痩せし身を埋めて月の光に染まる

2009-072:瀬戸(横雲)
進退の瀬戸際に立ち竦む夏後ろ姿のなほ遠ざかる
2009-073:マスク(横雲)
蒸し暑きマスク外せず沈黙の列に混じりて街を歩めり

2009-074:肩(横雲)
手を肩に置きしまま行く栗林花の匂ひに包まれてゐる
2009-075:おまけ(横雲)
しまひぎわおまけの話おもしろく語るに落ちて講話終りぬ
2009-076:住(横雲)
花栗の匂ひ漂ふ山住ひ夜の明けゆきてほのかに白し

2009-077:屑(横雲)
梅雨晴の空にあまねき星屑に迷へる心紛らはしける
2009-078:アンコール(横雲)
アルコールと見間違えたるアンコールノロ対策に手を洗ふ日々
2009-079:恥(横雲)
恥らひの色を見せつつ心太啜れる紅に新樹の光

2009-080:午後(横雲)
やむとみせてまた降る雨を持余し午後の長きに紫陽花を剪る
2009-081:早(横雲)
早蕨の萌えいづる野に降る雨の音をしみじみ二人聞きゐし

2009-082:源(横雲)
夏草や腐敗政治の根源を絶つかに鎌を振りおろしたり
2009-083:憂鬱(横雲)
見上げたる空を覆へる憂鬱の厚きを忌むやもゆるものある
2009-084:河(横雲)
夜の更けて鳴ける河鹿の哀しみに今も混じれる遥けき想ひ

2009-085:クリスマス(横雲)
さりげなく君と会ふクリスマスまであと半年とときめいてみる
2009-086:符(横雲)
幾枚も付箋重ねて読む本の如き心の御しがたきかな
2009-087:気分(横雲)
スカートを翻らせてヒロインの気分で歩く高原の夏

2009-088:編(横雲)
三つ編の少女の老いてみる夢は妖しき月とかくれんぼする
2009-089:テスト(横雲)
プロテストの波街を埋め出口の無くて地下壕に逃ぐる人あり

2009-090:長(横雲)
長良川言えない言葉口遊み涙流れて心せせらぐ
2009-091:冬(横雲)
夏空を見上げて冬の大三角語るあなたの瞳輝く
2009-092:夕焼け(横雲)
人恋ふや梅雨の晴れ間の夕焼けになほ懐かしき遠き日のこと

2009-093:鼻(横雲)
マスクよりはみ出す鼻に粒の汗分け入る麻の暖簾さやげり
2009-094:彼方(横雲)
みどり敷く彼方へつづく路ありて山の遥かに思ひかよへり
2009-095:卓(横雲)
朝日さす卓に置かれたもぎたてのトマトの赤に濡れる指先

2009-096:マイナス(横雲)
渓に下りマイナスイオン浴びる夏濁れる心洗ふが如く
2009-097:断(横雲)
断りの返事のメール消せなくて行く先見えず迷ひ入る道
2009-098:電気(横雲)
冬の日の静電気に似て指先に走る衝撃震える想ひ

2009-099:戻(横雲)
スカートを翻らせて戻る路夏野の風になぶられている
2009-100:好(横雲)
抱きしむる夏野に白き花満ちて好き撓(たわ)むとはいはずにあらめ

2009-完走報告(横雲)
歌はむとすること揺れに揺れつつも老いたる恋の百首をはりぬ
# by asitanokumo | 2020-06-26 07:46 | 題詠まとめ

 「呑む涙」(コロナ禍の夏を迎えて)
《2020年》 
2020-参加表明(八慧)
今年も「八慧」の名でトライします。日々設定した季語で俳句と短歌を詠んでいるTwitterやブログにこの企画も組み込んで、一日一首のペースで詠めればと思っています。嘆かわしいことに、気力も想像力も衰えたか100題のお題を見渡しても物語が浮かんでこず、物語を編もうという意欲もわいていませんが、とにかくはと思いながら詠んでみます。
とりあえずのテーマ。
「掌にやさしく包み呑む涙 粉引茶碗に充ちる哀しみ」

2020-001:君(八慧)
霙降る空見上げれば聞こえくるいま逢いたいの君の歌声

2020-002:易(八慧)
解決は易しくないと葉牡丹の入組む襞に悩みを托す

2020-003:割(八慧)
節分の豆を踏み割る音がして鬼が帰って来たと知られる

2020-004:距離(八慧)
絡む糸もう春なのにとけなくて君との遠い距離はそのまま

2020-005:喉(八慧)
春雷を聞き後ろ手にドア閉ざす口に含んだ喉飴がじゃま

2020-006:鋭(八慧)
咲き満ちた梅の一枝すぱっと切るその鋭さに春が目覚める

2020-007:クイズ(八慧)
戯れのクイズに秘める言葉には君を迎える春がいっぱい

2020-008:頑(八慧)
薄氷が溶けても蕾頑なに咲くのを拒むあなたを待って

2020-009:汁(八慧)
かちかちと哀しい音を響かせて男は一人蜆汁吸う

2020-010:なぜ(八慧)
生々となぜられた手の感触が甦る夢覚めて春の夜

2020-011:域(八慧)
あなたとは雨域の違う町に居て青空眺め春の雨聴く

2020-012:雅(八慧)
二人きて灯しに浮かぶ梅園に風雅楽しむ夜がふけていく

2020-013:意地悪(八慧)
好きだからした意地悪と言われても疑い深く君の目を見る

2020-014:客(八慧)
老人もSHIBUYAの客となる佳日チョコレート手に軽い足取り

2020-015:餌(八慧)
餌を撒き集まる鳩に語りかけ一人の昼の公園に春

2020-016:グラス(八慧)
触れ合わすグラスに透ける思い出は池一面に浮かんだ花唇

2020-017:境(八慧)
うつし世の境を越えてかかる虹君住む春の里に導く

2020-018:位(八慧)
幸せは中位でも春は春そっと喜ぶ白オキザリス

2020-019:立派(八慧)
目を奪う太く立派な松の木に春の羽衣そつとかけられ

2020-020:梅(八慧)
真っ白に散り敷いている梅の花あなたの「いいね」に春が深まる

2020-021:冊(八慧)
ときめいてめくる短歌の小冊子君の名見つけとりあえずお茶

2020-022:自慢(八慧)
おつまみは自慢の料理鮒膾差しつ差されつ更けていく宵

2020-023:陥(八慧)
その日から欠陥だけが目について嫌いになった人だと判る

2020-024:益(八慧)
益荒男のうつしごころは老いてなお益々盛んと駒返る草

2020-025:あなた(八慧)
会いたいの気持ち楽しむ細い月ながくあなたに会えない春は

2020-026:岩(八慧)
逢えなくて冷えた心で料峭の岩打つ波を眺め続ける

2020-027:慰(八慧)
水温む池をゆつたり泳ぐ鯉疼く心を慰さめるよう

2020-028:刷(八慧)
誰のとも知れぬ歯刷子置かれてて棚の扉をバッタと閉めた

2020-029:オープン(八慧)
風船はオープン記念のキャンペーン春一番に高く飛ばされ

2020-030:建(八慧)
次々に新しいビル建ち並び夕焼空の形を変える

2020-031:芝居(八慧)
雛の前若いつもりで白酒に頬赤らめて酔ったお芝居

2020-032:委(八慧)
運命の人はいずこか咲く桃にこころ委ねて微笑んでみる

2020-033:虐(八慧)
春が来て虐げられた枯れ草が萌え出すように思い湧きたつ

2020-034:頃(八慧)
いくつかの希望の灯しが消える頃春の闇には妖魔うまれる

2020-035:為(八慧)
いつまでも解けないままの悲しみは誰の所為だとないている天(そら)

2020-036:撮(八慧)
一撮みしたお茶の葉がゆっくりとひらいて香る春ののどけさ

2020-037:あべこべ(八慧)
あべこべの対処で悪化するばかり鋏を使うすべがみえない
 (「馬鹿と鋏は使いよう」とはいえど・・「悪化する安倍のあべこべあきれはてあきらめきれないあしたはどっちだ」) 

2020-038:私(八慧)
一日が終わった後で知ったこと君と私の幸運吉日

2020-039:威(八慧)
なかみなく空威張りして狼藉を働く人が導く不幸

2020-040:スパイ(八慧)
逢えなくて逢えないままのスパイラルこの苦しみはいつまで続く

2020-041:拒(八慧)
来るものを拒まないとは言わないが春の睡魔に殺される昼

2020-042:司(八慧)
司書室の窓辺に置いた一鉢にきいろたんぽぽ次々咲いて

2020-043:個(八慧)
久々の個展の報せに添えられた花のイラストほのかに薫る

2020-044:施(八慧)
闇雲に実施不能の施策立て広がる混乱尽きない怒り

2020-045:攻(八慧)
岩越える春の白波攻め寄せて水仙の香が濃く匂う浜

2020-046:わいわい(八慧)
うしろ髪を引かれたままで言うのなら欲しくはないわいわいの言葉

2020-047:溢(八慧)
歓声が溢れる土俵夢に見てがらんがらんに響く呼び出し

2020-048:殴(八慧)
突然の篠突く雨は横殴りただ晒される埠頭突端

2020-049:兼(八慧)
空透けて兼六園の四手辛夷咲けば遥かな人に逢いたく

2020-050:削(八慧)
思い出の添削されたラブレター一カ所だけに丸印つく

2020-051:夫婦(八慧)
池の辺に寄り添う若い夫婦松手をとりあって並んで見てた

2020-052:冗(八慧)
春の夜の支離滅裂の言い訳に巡回冗長検査のエラー

2020-053:掌(八慧)
君の掌とふれ合った日が甦る花散る里に今日ひとり居て

2020-054:がらくた(八慧)
棄て難いがらくたの山前にして死ぬに死ねずと笑ってすごす

2020-055:譲(八慧)
譲り葉が落ちて別れる日が近く出会いの季節は駆け抜けていく

2020-056:処(八慧)
舞う花に此処までお出でと誘われて何処まで行こう春の山里

2020-057:ソプラノ(八慧)
空高く天使の声かソプラノの囀りを聞く春の野遊び

2020-058:峰(八慧)
散る花に甦るのは峰越えて桜訪ねたふたりの旅路

2020-059:招(八慧)
この春の催し物は皆中止招かれていた花見の宴も

2020-060:凶(八慧)
吉凶を占う今朝の星座表良くも悪しくもあなたは来ない

2020-061:まじめ(八慧)
本意隠しいつもまじめなふりをして誕生の日も嘘つき通す

2020-062:催(八慧)
コロナ禍に人影消えて催しはすべて中止の花冷えの街

2020-063:幽(八慧)
春追って遊ぶ深山幽谷に隠れるように咲いている君

2020-064:父(八慧)
亡き父と歩いた道に風光り影追うように花屑が舞う

2020-065:一部(八慧)
風景の一部を染めた花筏見詰めて二人言葉をなくす

2020-066:硬(八慧)
ひとり旅硬い切符を握りしめ迷った末に涙ぐんだ日

2020-067:デビュー(八慧)
木瓜咲いて離れ離れに遊んでるひとりぼっちの公園デビュー

2020-068:緊(八慧)
飛花落花逢えずに過ぎて恋の神えやみの神に緊(ひし)と抱かれる

2020-069:裸(八慧)
春の夜の裸身の桜はらはらと散り続けては風に巻かれる

2020-070:板(八慧)
逢いたいと逢ってはならぬの板挟み遠く離れて逢えないままに

2020-071:能(八慧)
この春は再起不能に陥って悶えて時を遣り過ごすのみ

2020-072:𠮷(八慧)
𠮷野家が「つちよし」なんて知らなんだ看板の文字あらためて見る

2020-073:採(八慧)
しゃがみ込み蕗を採る背に桜散るくぐもる声の歌が聞こえて

2020-074:せめて(八慧)
置き去られせめて余生は悔なくと願ってみても明日が見えない

2020-075:擦(八慧)
思い出を優しく擦る春の風遥かの思いせつなく染めて

2020-076:充(八慧)
この春は空っぽのまま過ぎていく補充できない虚しさのこして

2020-077:武器(八慧)
魔を祓う仏の武器を振るように一双の蝶空に翔け行く

2020-078:添(八慧)
過ぎていく春を見送る夢にみた君と添う世がいつかはあると

2020-079:内(八慧)
何もかも嘘偽りで塗り固め内なる事実は誰も知らない

2020-080:擁(八慧)
擁きしめた春はするりと抜けていき早くも胡蝶花(しゃが)があらそって舞う

2020-081:札(八慧)
ひそやかな改札口に見送れば雨降る街は色を失う

2020-082:秒(八慧)
秒針の音にまぎれて屋根滑る樟の落葉を聞く春の闇

2020-083:剤(八慧)
二十年飲めば血圧降下剤効いているのかまだ生きている

2020-084:始末(八慧)
生ぬるい中途半端の人生は行ったり来たり始末が付かない

2020-085:臭(八慧)
コロナ禍の気分晴らしにシャボン玉吹けば吐息の臭みも消えて

2020-086:造(八慧)
手造りの料理に添えた青楓さやかな夏の風を呼んでる

2020-087:栽(八慧)
盆栽の若葉に光ざわめいて老いの二人は言葉をなくす

2020-088:しばらく(八慧)
しばらくは実らぬ恋と山吹を一輪挿して籠る闇の夜

2020-089:里(八慧)
かくれんぼしたまま過ぎる春の宵思う心は二千里の外

2020-090:植(八慧)
近道の裏のつつじの植込みにいつもの猫の声が隠れる

2020-091:呪(八慧)
ひきこもる八十八夜のお呪い福茶を飲んで疫禍を祓う

2020-092:タッチ(八慧)
じゃまたとハイタッチした別れ道明日は知れず花水木咲く

2020-093:属(八慧)
帰属する国の悲惨をいたむとき咎を身に受けさんざしが咲く

2020-094:錠(八慧)
閉じこめた錠を解くすべ知らなくて囀る椋を羨んでいる

2020-095:俗(八慧)
山深く俗塵を避け籠る日を夢に見ている夏を迎えて

2020-096:機嫌(八慧)
ご機嫌の尾を跳ね上げて鯉幟若葉の風を孕みのけぞる

2020-097:詐(八慧)
世の中は詐言重ねる人ばかり事実は闇に隠されたまま

2020-098:鈍(八慧)
鈍才の目にも呆れる愚鈍さが際立ってきて夏が始まる

2020-099:任(八慧)
若葉陰任天堂のゲーム機のとぎれとぎれの音が聞こえて

2020-100:詠(八慧)
ひそやかに想いのたけを歌に詠み甘辛苦く筍を煮る

(寄り道コース)
2020-101:一輪(八慧)
髪にさすコクリコ一輪揺らし行く五月の風は晶子の歓喜

2020-102:両輪(八慧)
実万両輪飾りに挿し年越すも五月の風は苦しみの色

2020-103:三輪(八慧)
甦り再三輪廻を繰り返す永久(とわ)の誓いを次に託して

2020-104:四輪(八慧)
良い国を総べる正義の四輪王どこにいるかと満月に問う

2020-105:五輪(八慧)
来年は祝って重五輪っぱ飯いっばい食べると遠くの便り

2020-106:七輪(八慧)
降り立つは花人街道二三七輪行バック開くも楽し

2020-107:九輪(八慧)
山裾にひっそりと咲く九輪草果てた苦倫の思いを残す

2020-108:大輪(八慧)
言い訳の何が正大輪にも葛にも掛からない嘘で固めて

2020-109:大車輪(八慧)
策無きに獅子奮迅の大車輪指揮が悪けりゃただ空回る

2020-110:吊り輪(八慧)
夏の夜の吊り輪灯のほの明かり読経の声に微かに揺れる

2020-完走報告(八慧)
寄り道コースのお題の「輪」が虚しくなったコロナ禍。なんとか詠み進めたが、テーマを絞るという事はできずに終わった。
全体はブログ「朝の雲 」 に「呑む涙」としてまとめる。




# by asitanokumo | 2020-05-20 05:50 | 題詠まとめ

身に沁みる秋


「身に沁みる秋」題詠《2008年》


2008-参加表明(八慧)
2007年のお題が詠み終えたので、続いて「八慧」の名で【2008年の「題詠100首blog」】の企画にトライします。一日一首のペースで詠めればと思っているがどうなるやら。

2008-001:おはよう(八慧)
下露を散らす秋風吹いてきてやがて乱れる萩のおはよう

2008-002:次(八慧)
高原をけぶらせている白驟雨別れの言葉次送りする

2008-003:理由(八慧)
理由などなくて秋の灯消す宵の触れないままの指が冷たい

2008-004:塩(八慧)
塩の道行く秋の旅空澄んで道祖神にもシオカラトンボ

2008-005:放(八慧)
逢うためのこころ放てば啼く鳥が群れて夕べの空一巡り

2008-006:ドラマ(八慧)
冴えざえとドラマの中に秋北斗その終末は曖昧にして

2008-007:壁(八慧)
月照らす白壁の白滲む街そちらこちらで虫が鳴きだす


2008-008:守(八慧)
燃えつきる西日に染まる天守閣捥いで手にする林檎も赤い

2008-009:会話(八慧)
一瞬の会話に託すせつなさにひとひらひらと銀杏散る夕

2008-010:蝶(八慧)
墓碑を越えどこへ向かうか秋の蝶あなたの影をゆるりとめぐる

2008-011:除(八慧)
厄除けのお守りひとつジャケットのポケットに入れ秋の野を行く

2008-012:ダイヤ(八慧)
黒電話のダイヤルは廻はされぬまま秋の夜が平和に過ぎた

2008-013:優(八慧)
空澄めば優しく咲いて彼岸花遥かな国に思いをはせる

2008-014:泉(八慧)
一叢の色濃い藍の露草が濡れているのは泉への道

2008-015:アジア(八慧)
澄む秋のアジアの果ての鰯雲手を振り君の遠さをさぐる

2008-016:%(八慧)
消費税10%は明日から釣瓶落しに丹がむせび泣く

2008-017:頭(八慧)
今日からの軽減税率店頭のベンチの横で立って食べよう

2008-018:集(八慧)
きらきらと狗尾草(えのころぐさ)が秋の気を集めて風に揺れる野っ原

2008-019:豆腐(八慧)
旅先の掬えば白い新豆腐メランコリックに艶々として

2008-020:鳩(八慧)
犬連れて鳩笛吹いて秋草の原にしゃがんでのぼる日を見る

2008-021:サッカー(八慧)
夢に見た花野の先のサッカー場無人で月に照らされていた

2008-022:低(八慧)
低(た)れかかる雲の暗さにたちすくみひそかな秋の声を聴きいる

2008-023:用紙(八慧)
見渡せば雲一つない秋の空いま画用紙が青く塗られる

2008-024:岸(八慧)
沙魚飛んで岸辺の杭に寄せる波ひとり眺めてひねもす過ごす

2008-025:あられ(八慧)
振る舞いをあられもないと叱りつつ過ぎてく秋が身にしみる宵

2008-026:基(八慧)
意味もなく海は汚され寒々と腐臭を秘めた基地が造られ

2008-027:消毒(八慧)
後の月見るため開くカーテンに消毒の香がかすかに残る

2008-028:供(八慧)
繰り返す子供騙しの言い訳をどうすることもできない国会

2008-029:杖(八慧)
杖を手に眠らずに聴く暴風雨防災グッツ膝に抱えて

2008-030:湯気(八慧)
山盛りにされ湯気あげる衣被つるり裸にしたい思い出

2008-031:忍(八慧)
あばら家の何をしのぶか忍草月の光にたえて忍び音

2008-032:ルージュ(八慧)
ルージュ濃い女の愚痴を聞きながら薄い紅葉を哀しんでいる

2008-033:すいか(八慧)
この出会いすいか甘いか嗅ぐように指先かすめ赤とんぼ飛ぶ

2008-034:岡(八慧)
秋うらら岡に登ればしし垣の崩れた跡に群れる小式部

2008-035:過去(八慧)
さみしくて団栗ひろう指先に過去の痛みが甦る朝

2008-036:船(八慧)
しみじみと貴船菊見る黒髪に雨が冷え冷え白く光った

2008-037:V(八慧)
打ち揃い平和を示すVサイン秋の土用の空に突き出す

2008-038:有(八慧)(八慧)
恋しくて佇んでいる夕間暮れ金木犀の香の有るが儘

2008-039:王子(八慧)
星空を眺め王子を思ってはひとり聴きいるすがれむしの音

2008-040:粘(八慧)
粘りつく恨みの言葉拭っては文無鳥(あやなしどり)と血を吐いて泣く

2008-041:存在(八慧)
その人のなおも確かな存在を問うては秋の夜が更けていく 

2008-042:鱗(八慧)
天帝の逆鱗に触れ荒れる川たける怒りが波濤を砕く

2008-043:宝くじ(八慧)
宝くじ買ってはやばや冬仕度さて死支度には何を捨てよう

2008-044:鈴(八慧)
鈴懸の並木を抜けた公園に草の穂わたが風に光った

2008-045:楽譜(八慧)
熟れ柿が梢にふたつ三つ残る楽譜の音符が零れたように 

2008-046:設(八慧)
紅葉観る設けの席に五つ六つ飾るともなく木の実置かれる

2008-047:ひまわり(八慧)
幼な子が並んで歌うハロウィンのキュートなコスプレひまわり帽子 

2008-048:凧(八慧)
切れそうで夢をつないだ凧糸がもうこれ以上には伸ばせない 

2008-049:礼(八慧)
走りぬく真夏すがしい札幌に晴れて輝く五輪のマーク

2008-050:確率(八慧)
応答の確率低いメールでも秋の夜惜しみ思いを込める

2008-051:熊(八慧)
あちこちに「熊出没」と掲示され紅葉の森をこわごわ進む

2008-052:考(八慧)
明瞭に考え違いを指摘され萎れて帰る夜は苦しく

2008-053:キヨスク(八慧)
キヨスクの弁当を買う旅も待ってる人がいれば楽しい

2008-054:笛(八慧)
寒く澄む秋の空には鳶の笛光になって美しく降る

2008-055:乾燥(八慧)
振り向けば無味乾燥の人生に彩り添えた風景がある

2008-056:悩(八慧)
うれしくも悩み忘れて小春日の林をめぐりひとひを過ごす

2008-057:パジャマ(八慧)
黄の花のパジャマに羽織るバスローブ窓から朝の光がもれて

2008-058:帽(八慧)
別れ際振る冬帽子陽を受けてやがて林の枯葉にまぎれ

2008-059:ごはん(八慧)
最後にはごはんをいれて熱々を啜って終わる宴会の鍋

2008-060:郎(八慧)
山茶花がはらはら散れば雪女郎くる気配して夜風が痛い

2008-061:@(八慧)
見せばやと@(アット)をつけて書くふみに単価記号の短歌は詠めず

2008-062:浅(八慧)
別れにはまだまだ浅い冬の宵握り返した指がからまる

2008-063:スリッパ(八慧)
ぬくぬくの冬のスリッパ木造の隙間風吹く廊下に並ぶ

2008-064:可憐(八慧)
ひっそりと可憐に咲いた寒菊に心のうちを呟いてみる

2008-065:眩(八慧)
追うほどに白く眩しい冬の陽が逢えない人の影を育てる

2008-066:ひとりごと(八慧)
冬バラの花びら摘まみひとりごと思いのほかに指に冷たく

2008-067:葱(八慧)
何事もない顔をしてさくさくと刃音確かめ切る矢切葱

2008-068:踊(八慧)
ひらひらと風がないのに葉が踊り枯蓮の影不安を煽る

2008-069:呼吸(八慧)
身悶える神の呼吸か散る木の葉激した思い吐き出すように

2008-070:籍(八慧)
氷雨降り厚い遺稿の手ごたえは本というより書籍の重さ

2008-071:メール(八慧)
風邪に寝て布団のなかで音ださず開かれもせず震えるメール 

2008-072:緑(八慧)
枯れた野に変わらぬ思い語るかに緑の松が一本残る

2008-073:寄(八慧)
寄りあって寄せ鍋囲む四畳半学生街のアパート二階 

2008-074:銀行(八慧)
落葉踏み簡素になった銀行の暦手にして萎れて帰る

2008-075:量(八慧)
冬の日の僅かに増えた酒の量うつらうつらに寝入ってしまう 

2008-076:ジャンプ(八慧)
滑りきてジャンプする瞬間(とき)その影は飛び立つ鳥のときめきに似る

2008-077:横(八慧)
振幅の大きな波に乗り揺れて横にならんだ浜の水鳥

2008-078:合図(八慧)
振りかざす帽子が合図冬河原老いるを嘆く人の道行き 

2008-079:児(八慧)
境内の句碑を探してかさこそと落葉を踏んで児童館裏

2008-080:Lサイズ(八慧)
冬の川背にしてがばと頬張るはLLサイズの苺大福 

2008-081:嵐(八慧)
吹き上げる冬の嵐に捲られたコートの裾に落葉絡まる

2008-082:研(八慧)
庖丁を研いで鶏肉さばいた日揃う家族と夕餉楽しむ

2008-083:名古屋(八慧)
描かれた椿が淡い名古屋帯解けば塩瀬の音が色めく 

2008-084:球(八慧)
見えるのは使い古しの餅網だ黄斑浮腫の眼球検査

2008-085:うがい(八慧)
洗面の棚に赤々実南天一枝差し置くうがいコップに

2008-086:恵(八慧)
陽の恵み受けて優しい冬木道ケンケンケンパひとり石蹴る

2008-087:天使(八慧)
そもそもは冬の天使が枯枝に赤いショールを忘れていって

2008-088:錯(八慧)
愛されていたと錯覚していると説き伏すように木枯しが吹く 

2008-089:減(八慧)
湯加減のよい露天湯に身を沈め眠る山見る真昼の至福

2008-090:メダル(八慧)
禅寺の日向ぼっこでとつとつととりそこなったメダルの話

2008-091:渇(八慧)
冬ざれの渇いた喉を癒すよう届いた手紙むさぼり読んだ

2008-092:生い立ち(八慧)
生い立ちに嘘が混じっていることをふと洩らされた冬の夜のこと

2008-093:周(八慧)
一周忌終えて遺品のカーディガン羽織れば鏡に若い父いて

椋をテーマに
2008-094:沈黙(八慧)
庵では名こそ呼ばぬが街路樹に来啼く椋鳥やがて沈黙

2008-095:しっぽ(八慧)
山小屋の椋を見上げて屋根の上ほらほらじゃれる子猫のしっぽ

2008-096:複(八慧)
椋の木の下をさまよい実を探る叶わぬ思い複雑なまま

2008-097:訴(八慧)
こんなのは味わえないと訴えてやがて小さい声でおいしい

2008-098:地下(八慧)
地下を抜け別れの駅で握る手は手品師に似て悲喜差し替える

2008-099:勇(八慧)
冬くると悦び勇み旅立った時が今なお懐かしくなる

2008-100:おやすみ(八慧)
小屋暮し星はちらちら山の上聞いた言葉がおやすみなさい

コメント
テーマの定まらないままだったが、なんとか詠み終えました。
今年は、2019年のお題の後、5月より2006年、7月より2007年。9月半ばから2008年を詠み込んできたのて、題詠400首の年になった。
来年の2月に再会・再開できるよう願っています。


2008-完走表明(八慧)
テーマの定まらないままでしたが、なんとか詠み終えました。
百首詠み終えたところで、百首の総題を「身に沁みる秋」といたします。
# by asitanokumo | 2019-12-23 07:24 | 題詠まとめ
題詠2007「迷ひ道」

《2007年》
2007-参加表明(八慧)
2006年のお題が詠み終えたので、続いて「八慧」の名で【2007年の「題詠100首blog」】の企画にトライします。

「遠き影」
2007-001:始(八慧)
老い老いて詠み始めたる恋の歌遠き影追ひ逢ふ日思ひぬ
2007-002:晴(八慧)
梅雨晴れのひと日を遊び過しけり移ろふ思ひ知る由もなく
2007-003:屋根(八慧)
屋根裏の窓に灯しのともる時同じ月見る人や偲ばる

「緑濃し」
2007-004:限(八慧)
限りなき夢追ひゆきて限りある命燃やせる世のいとほしき
2007-005:しあわせ(八慧)
星眺め浸かる出湯にしあはせの老いて悔なき身をつつみける
2007-006:使(八慧)
言の葉は心の使ひ緑濃く繁る梢のさわさわと揺る

「ふりぬるも」
2007-007:スプーン(八慧)
スプーンの掬ふすずしささやさやと澄める想ひの胸にしみいる
2007-008:種(八慧)
百種(ももくさ)の言葉に込めしわが想ひ勿忘草の揺るるにまかす
2007-009:週末(八慧)
週末の端居にながむ山の雨ふりにこそふれ人も涙も

「涙の末」
2007-010:握(八慧)
別れ路の握り返さる手の温み儚き夢を何に契れる
2007-011:すきま(八慧)
せつなさの隙間すきまに忍び入る涙の末を人や知らなむ
2007-012:赤(八慧)
ながらひて悔む昔やふりむけば迷へる空に赤き月出づ

「夏深む」
2007-013:スポーツ(八慧)
スポーツ紙振りかざし呼ぶ青年の横に少女のはにかみのあり
2007-014:温(八慧)
山深き温泉宿に集まりて老若男女夏を楽しむ
2007-015:一緒(八慧)
啼く蝉と一緒になりて騒がしく人の集へる丘越えて行く

「夏闌く」
2007-016:吹(八慧)
吹く風にさやぐ緑のなほ深く入日涼しき高原に立つ
2007-017:玉ねぎ(八慧)
手に余る大玉ねぎの重かれば剥くやいつはりなきを確かむ
2007-018:酸(八慧)
段々に酸漿市に購へる実の色づきて夏の夜闌くる

「月に雨」
2007-019:男(八慧)
許されぬ男の嘘か摘みとりし苺潰され悲しみの色
2007-020:メトロ(八慧)
心ねのメトロノームの乱るごと昔忍ぶの草のなびける
2007-021:競(八慧)
夏の夜の徒競べとや月と雨はかなき夢ををきつつ楽し

「幻影」
2007-022:記号(八慧)
一片の記号となりて立ち尽くす夏の光に若き日の君
2007-023:誰(八慧)
木の蔭の君に似たるは誰ならむ手を振り来たる影若やぎて
2007-024:バランス(八慧)
影二つアンバランスを際立たせ少女と翁森に消えたり

「鎌倉」
2007-025:化(八慧)
逢はむとて通ひしものを化粧坂つらき言葉に今も危ふし
2007-026:地図(八慧)
鎌倉の古地図手にして七曲り茂る青葉の香に包まるる
2007-027:給(八慧)
苦しみを解き給ひしやかまくらの古仏の胸に吉祥の印

「君の居ぬ時」
2007-028:カーテン(八慧)
やわらかい薄いカーテンふくらます夜風がはこぶ火の山の香気(かざ)
2007-029:国(八慧)
亡びゆく国の姿の醜きを夏の光のギラリ照らせり
2007-030:いたずら(八慧)
つれづれといたずらごとを書き並ぶ君居ぬ時の慰めとして

「夏山」
2007-031:雪(八慧)
夏山の雪の残れる渓越えてお花畑と星に逢ふ旅
2007-032:ニュース(八慧)
梅雨明けて山に繰り出す人波を映すニュースに誘はれている
2007-033:太陽(八慧)
霧濃くも林を分けて太陽の登る気配の色濃くなりぬ

「夏座敷」
2007-034:配(八慧)
配られし菓子の冷たき夏座敷思ひ思ひの声や美し
2007-035:昭和(八慧)
遠く遠く昭和の恋の香りして夏座敷には一文字の軸
2007-036:湯(八慧)
山シダを活けて湯宿の夏座敷夕べの風に思ひの崩る

「露の世に」
2007-037:片思い(八慧)
朝顔の一つ咲く日の片思ひ夢もこの世も露とあらそふ
2007-038:穴(八慧)
墓穴掘るおのれを嗤ひ酒酌みてこの世も露と身こそうらみめ
2007-039:理想(八慧)
別れゆく不条理想ひ朝顔の露とあらそふ世をなげきけり

「旅立ちのとき」
2007-040:ボタン(八慧)
誰も来ぬコールボタンを押し続け幾億年か流れ去れるや
2007-041:障(八慧)
雲流れ障子に映る月影に懸け橋わたる魂の翳見る
2007-042:海(八慧)
夕焼けの海辺に夏の匂ひすは夢路辿れる魂のたゆたひ

「夏座敷」
2007-043:ためいき(八慧)
諦めのためいきさへも美しく夜のとばりに影の解けゆく
2007-044:寺(八慧)
襖とり広げし寺の夏座敷大の字に寝て山の音聴く
2007-045:トマト(八慧)
朝取りのとりどり熟れしトマト手に新妻のごと笑みをこぼせり

「迷ひ路」
2007-046:階段(八慧)
古寺の木の階段をつやつやと照らせる月に影の迷へり
2007-047:没(八慧)
うつつなる日本沈没見据えつつ確かめ難き思ひ確かむ
2007-048:毛糸(八慧)
朝の秋君のほつれ毛糸の筋涙の元をたどる迷ひ路

「嘘」
2007-049:約(八慧)
密約のごとく心の奥底に大事ほうじに畳まれる嘘
2007-050:仮面(八慧)
まやかしの仮面の笑ひ振り撒きて行方の見えぬ道に迷へる
2007-051:宙(八慧)
汗拭ひ見あぐや碧き秋の宙かさねし嘘の虚しきを知る

「映画」
2007-052:あこがれ(八慧)
星の夜は叶わぬままにあこがれるメグライアンの「巡り逢えたら」
2007-053:爪(八慧)
戦争の爪痕微か背に残す「映画」に夏の蝶が飛び立つ
2007-054:電車(八慧)
輝けるミライの電車夏の夜に笑ふ子を乗せてまつしぐらなり

「秋の空」
2007-055:労(八慧)
精神の疲労回復企みて痛みこらへる初秋の旅
2007-056:タオル(八慧)
湯上りのほてる身つつむバスタオルなくしたものは拾いえぬまま
2007-057:空気(八慧)
秋の空気球の一つ溶けゆけば澄める思ひを染むる夕焼

「秋の野」
2007-058:鐘(八慧)
露払ひ供華に釣鐘草を摘む愁ひの色の淡きをいたみ
2007-059:ひらがな(八慧)
ひらがなのてふてふが飛ぶ秋の野や色なき露と涙光れる
2007-060:キス(八慧)
野にありて権威を嫌ふアナキスト独りうき世を歎き老いゆく

「影を慕ひて」
2007-061:論(八慧)
若き日々共に論ぜし幸せをいかばかりほど叶えしととふ
2007-062:乾杯(八慧)
偲ぶるは良き日良き時乾杯のグラスに笑みし君が面影
2007-063:浜(八慧)
影慕ひ浜昼顔の咲く道を湖風の香に誘はれて行く

「盆過ぎて」
2007-064:ピアノ(八慧)
君が影かき消すように夏果ててピアノに白き薄埃積む
2007-065:大阪(八慧)
耐えがたき暑さ続きし盆休み大阪弁に染められ帰る
2007-066:切(八慧)
涼しげに茂る秋草古き道訪ぬ鎌倉七切通し

「ふりぬる身」
2007-067:夕立(八慧)
カナカナの声途切らせし夕立の過ぐや葉末に空の光れる
2007-068:杉(八慧)
驟雨過ぐ杉の木立にひとりゐてふりぬる身とぞあはれしらるる
2007-069:卒業(八慧)
卒業のアルバム捲る手の皴を共に嘆ける喜寿の現し身

「身ひとつ」
2007-070:神(八慧)
神奈備の山辺の雨に濡れて行く秋の旅情の深まる夕べ
2007-071:鉄(八慧)
かぎろへる鉄路辿りて身ひとつ荒野を越えてなが影を追ふ
2007-072:リモコン(八慧)
並べたるリモコン五つそれぞれは繋がらぬまま役目知られず

「山に啼く」
2007-073:像(八慧)
幼さを残し佇む裸婦像の未完成なるゆるき曲線
2007-074:英語(八慧)
退職後畑打つ英語教師ゐて日焼けし艶の皴深くせり
2007-075:鳥(八慧)
物思ふ我に聞かすや時鳥人まつ山に恋しくも啼く

「秋風」
2007-076:まぶた(八慧)
そののちはともにけだるきまぶた閉じ夢の続きに秋風聞きし
2007-077:写真(八慧)
笑むひとの写真懐かし秋風の色に誘はる旅にいざ出む
2007-078:経(八慧)
逢はぬままはや幾歳の経たるよと孤悲の恨みにふくや秋風

「秋草」
2007-079:塔(八慧)
秋日受く路傍に古き供養塔嘆きの色を増せる下草
2007-080:富士(八慧)
色づきて揺るる秋草踏み分けて降りさけみれば夕映えの富士
2007-081:露(八慧)
ひとりごとつぶやいている露の秋たのみの末の旅をつづける

「揺れる思い」
2007-082:サイレン(八慧)
訓練のサイレン告ぐる震災忌梢に見上ぐ空や青かる
2007-083:筒(八慧)
筒鳥のこゑに迷ひて書けぬ文深まる霧に思ひ惑ひぬ
2007-084:退屈(八慧)
アトリエの古き揺り椅子ゆらゆらと一人揺れてる退屈な午後

「秋の蝶」
2007-085:きざし(八慧)
変節の疑心きざして秋の夜はちびりちびりの酒に溜息
2007-086:石(八慧)
秋の陽にぬくもる石をいとしみて番ひの蝶の浄土に遊ぶ
2007-087:テープ(八慧)
見送りのテープ漂ふ埠頭には別れ惜しみてなく虫の声

「秋深む」
2007-088:暗(八慧)
暗闇の谷へ落ち行く心地して国の行方を憂ふ秋なり
2007-089:こころ(八慧)
秋深み旅のこころの定まれり身にしむ夜半の風や色なき
2007-090:質問(八慧)
生くことの本質問ふも答えなく迷ひの道に潜む死の影

「桔梗花」
2007-091:命(八慧)
手花火に老いの命の匂ひしてたまゆらに揺れ消ゆるを惜しむ
2007-092:ホテル(八慧)
大花火浜のホテルのベランダに出でて眺むや夏の果て行く
2007-093:祝(八慧)
あきちこう六十路を祝ふ言の葉の色かはりゆき独り悲しき

「絵模様」
2007-094:社会(八慧)
老々の高齢社会を生きていく二人に明日の介護の覚悟
2007-095:裏(八慧)
若き日の粋の名残りの羽織裏婀娜な姿の褪せぬ絵の色
2007-096:模様(八慧)
秋草の靡く絵模様ひるがへす若き女の裾の艶めく

「夜の更けて」
2007-097:話(八慧)
あれこれと病の話聞きし夜のはぐらかされてなにか哀しき
2007-098:ベッド(八慧)
月光の零るベッドの裾にゐて失へるもの裏返しけり
2007-099:茶(八慧)
秋の夜の更けてすすれる熱き茶に昔を返す衣手の夢

「終の栖」
2007-100:終(八慧)
これがまあ終の栖と断ずるも迷ひの道のなほ続きける

2007-完走報告(八慧)
百首詠み終えたところで、百首の総題を「迷ひ道」といたします。





# by asitanokumo | 2019-09-13 07:29 | 題詠まとめ